第34話 四月世界の魔法
おはようございます。
投稿です。
今回は四月世界の設定を、一部公開編です。
「……?」
視線を感じ、周囲を魔力感知するエリ・ナリ隊長。
「どうかされましたか?」
「視線を感じる、悪意はないようだが、なんだ?この視線は?」
「隊長、アレでは?」
副長が示す方向、それは屋根を指していた。
「あれ?あれだと?」
雑貨屋か?屋根に?
「!?」
そこには、夜の訪問者、白黒ネコがこっちを見ていた。
白黒ネコを見た瞬間、あの日の夜のことが鮮烈に思い出される!
(ドリ……シュウミン……楽しかったな……くそっ!何故の侵攻だ!殺し合いがそんなに好きか!欲望まみれの帝国め!)
夜の記憶、エリ・ナリは涙が零れそうになった。
そして悲しみと同時に、怒りが漲る!
「隊長、あのネコは我らの仲間にでもなりたいのでしょうか?熱い視線ですが?」
「どうかな?」
副長の言葉に少しだけ救われるエリ・ナリ隊長。
エリ・ナリの足は、自然と白黒ネコに向う。
そこには子供が一人、しきりに話し掛けていた。
「ねぇ、クロちゃん、降りておいでよ!よしよししてあげるよ?どこか痛いの?」
……ナーン……
子供の問い掛けに、返事をする白黒ネコ。
(そうだよ、痛いんだよ!腫れているんだよ!右のタマキンが!)
(若、暫くは静かになさいませ)
(なんでだよ!だいたいオレ様は獣人族の血が流れているはずだろう?不死に近い状態で身体は丈夫なはず!それが何で!?魔力だってビンビンだぜ!?)
なぜ回復しない?いつもだったらその場で骨折やら刀傷など瞬時に回復するのに?
なぜメイメイから受けた『蹴り』は治りが遅いのだ?
何か、法則があったような?
若は、思い出そうとするが、なかなか思い出せない。
そう、若は考えるよりも動くタイプ。
あらゆるモノに、ぶつかって覚えていく。まるでロボットの掃除機みたいなヤツなのだ。ぶつかっては学習、ぶつかっては学習。
ただ残念なのは、掃除機クンは一度覚えるとまず忘れない。
一方若は勉強、学習してもコロッと忘れるのだ。
……学習とは?
(……若、それはおそらく魔法意思が働いているかと)
(魔法意思?あ、なんか聞いたことあるかも?世界意思だっけ?)
ゴンザから、溜息交じりの呆れた念が流れてくる。
(この世界に来る前に、勉強しましたが?)
(勉強キライ)
(存じてますとも。この四月世界の魔法は調和を好む傾向があるとか)
(調和?ほど遠いんじゃねーか?)
(初対面の女性の前で、マッパはいけません。パーフェクトではありませんな)
(ぐっ……し、仕方ねーじゃん!オレ防具纏えねーし!魔力で作り出すの難しいんだよ!)
(婦女子に嫌われますぞ、礼節という言葉もあります。若、パーフェクトではありませんなぁ)
(なんだよ、レイセツって?それに三月世界じゃマッパでもよかったじゃん!)
(ここは四月世界です、前の世界とは違います。この『四月世界』は若にちゃんとした振舞いをして欲しいのでは?そのための能力封印かと)
(世界がなんでオレの能力封印するんだよ!そんな力あるなら他の悪いヤツらの力封印しろよっ!)
(それは世界の因果律やら好みやらでしょう、若はこの世界に気に入られたのでしょうな、ははっ)
笑い事ではないと思いながらも、さすがに魔力防具を纏う練習をしなければ、と思う若。
毎回蹴られでもしてら、たまらん!
ふつーの防具はあるのだが、緊急時は役に立たない。
特に若の日常形態は白黒ネコなのだ。
ズッキンズッキン。
(イタイ……水にでも浸かるか?ゴンザぁ薬とかないの?)
(生憎ネコ用は切れておりまして)
(人用でもいいじゃん!同じ生き物だろ!)
(症例がありませぬ)
固いこと言うなよっ!なくてもいいじゃん!と思ったが、その言葉をぐっ、と呑み込む。
(オレが痛い思いすれば調和するのか?しねーだろっ!たかがガキ一人だぜ!?)
(少なくとも若と婦女子の間柄は穏やかになるでしょうな、マッパなど言語道断ですぞ!問題外っ!)
そこまで言うのかよ!
(でもよ、俺以上に四月世界は乱れているだろっ!)
(悪い意味で調和しておりますぞ)
(どんな調和だよ?悪い調和?うーんと……四月世界の住人達が魔法を穢している、ってか?)
(隣国のレッド・ブーツ帝国、かの国は権力者が帝国民全てを支配しております)
(?)
全てを支配?できるわけがねー!
若は考える。
不可能だ!と。
(権力者にとっては理想の調和ですな)
(なんだよそれ!全てを?できるわけねーじゃん!)
(いいですか、若、忘れずに聞いてくださいよ?隣国のレッド・ブーツ帝国は生れた子供に呪符を埋め込むのです)
(なっ!?)
(呪符を埋め込まれた者達は、王侯貴族に逆らえません)
愕然とする若。
(レッド・ブーツ帝国の帝国民は全て、この呪符を埋め込まれております)
(オ、オレの魔力封印するよりも、そっちをどうにかしろよ!ひっでーなんだよそれ!権力者、やりたい放題じゃねーか!)
(はい、それこそ権力者にとってはこれ以上の調和はありませんな。誰一人、逆らわない。死ねと言えば死にますし、戦も労働も経済も思うがままです)
(計画が失敗したらどうすんだよ!)
(失敗しても、逆らうモノすらいません)
(……それは……国民は地獄じゃねーか!)
(彼らは永い年月この暮らしをしているので、それが当たり前なのです)
(ばかなっ!?)
(逆に、支配者の指示がなければ多くの者達は、動けません。自ら動くことができないのです)
(四月世界はそんな国もあるのか……それでいいのか?)
今回はここまでです。
次回をお楽しみに。
次回投稿は明日の朝を予定しております。




