第32話 一撃!
こんばんは。
投稿です。
じっ、とイッカイを見つめる雷帝。
「なぁイッカイ、そのヒーラーの技、俺に教えてくれないか?俺が使うと相手を焼いてしまうんだ。焼いて傷口を塞ぐみたいになっちまうんだ」
「……それは力が強すぎる現象だ、抑えないと癒やしどころか、相手を焼き殺してしまうぞ」
「ああ、相手が女の子や子供だったりしたら、命は助かるが、火傷の痕がのこっちまう。心苦しいんだ、その技、教えろよ!」
あ、なんか嫌な予感!ぜったいお父さん、バトルを仕掛ける!メイグ姫は焦り気味にそう思った。
「いいぜ、雷帝!」
筋肉が盛り上がり、その大口からデカい犬歯が剥き出る!
「ほ、ホントかっ!?」
「ああ!俺に拳、蹴りでもいい、一撃当てることができたら教えてやる!」
ほらあああああっ!おとーさんっ!だから危ないことは、やーめーてーっ!
メイグ姫の心の叫びを余所に、バトルが始まった!
二人とも、一瞬で消える!
そして落雷!
ドドオオオンッ!
「きゃああああっ!もうぅいやああああっ!」
翼を大きく広げ、主を守るグリフォン!
砂煙が舞い、無数の音があらゆる所から聞こえてくる。
摺り足、蹴り、突き、一瞬だけ見えるがそれだけだ。
あらぬ所で砂煙が舞い、大地が抉れる!
「……わ、わたし、ヤバイかも!」
そっと静かに膝を付くメイグ姫。
グリフォンは翼でメイグ姫を隠してしまう。
その翼の隙間から外を垣間見る。
魔力の目で周囲を見ると、金色の光りと銀色の光りが舞っていた。
(……綺麗なんだけど、あれ、触っただけで即死では?)
そして倒れている三人を見る。
「……敵将の三人、どうしよう?レッド・ブーツ帝国の民は全員呪われている、無闇に近づけないわ……」
そう、喩えそれが死体でも危険なのだ。
(勇者の方は生きているようだけど……)
その時、ぶわっ!とメイグ姫の周囲に竜巻が発生する!
「!?」
吹飛ばされるグリフォン!
「きゃっ!?」
メイグ姫が飛ばされそうになると、瞬時に竜巻は消えた。
「え?な、なに?」
ドオオオオオオオオオオンッ!
落雷の轟音と共に、二人の戦士がメイグ姫の目の前に現れる!
腕を伸ばしきった雷神王。
その懐に入り込み、脇腹に手を添える雷帝。
ひっくり返っているメイグ姫。
三人とも固まったように動かない。
「イッカイ、脇!どうだ!」
「ああ、ここまで凄いとは……見事だ」
「だろうっ?コブシだったらお前はもう死んでいるぜ!」
お、お父さんが!?ま、負けた!?そ、そんな!
信じられないメイグ姫。有り得ないことなのだ!
「イッカイ、お前右足、壊れているな?」
「「!」」
この言葉にメイグ姫は身を強張らせ、雷神王は笑った。
「分かるか?古傷だ」
「その傷、無かったらもっといい勝負できたぜ!」
「そうなのですか?雷帝殿?」
髪に手を添え、起き上がろうとするメイグ姫。
(うう、髪ぐちゃぐちゃだよぉ)
「ああ、まぁ戦い続ければその分、身体は壊れていく、摂理だ(作者注:ゴンザの言葉です!)」
「それは私と兄を庇ったときの傷です」
「へぇ、名誉の負傷か。さ、約束だ!イッカイ、教えてくれよ!」
ここで若は、メイメイとイッカイの関係をまったく気にしていない。
もちろん兄という言葉も聞いてはいるが、頭に残らないのだ!
癒やしの技を教えてもらう!これだけに意識が集中しすぎているためだ。
「……よかろう、久々にワシも楽しめたしな」
言葉とは裏腹に、メチャクチャ悔しそうな雷神王。
「あ、それとメイメイ!おめーにも聞きたいことあったんだ!」
無警戒にメイグ姫に近づく若。
「え?な、なんでしょう?」
パチンッ!
リラックスしたのか魔力による防御が解除される雷帝。
纏っていた雷属性の魔力が拡散する。
「!!!!!!!!!!!!」
そして、メイグ姫の目の前に現れる雷帝の雷帝。
(……え?)
「レッド・ブーツ帝国のヤツラ、逆らえないってどういうことだ?そいつも聞かせてくれよ!」
「……」
固まるメイグ姫。
(……先輩、確かにお父さんのよりは小さいと思います。お兄ちゃんのよりは大きいかな?あ、でもあれは4歳か5歳の時、お父さんやお母さんといっしょに、家族でお風呂に入ったときで……今はどうなっているか知らないし……)
「ん?どうしたメイメイ?」
心配そうに近づく雷帝。と、雷帝の雷帝。
「っんくきゃああああっ!!!!!!!!」
ドゲシッイイイイ!
「へんなモノ近づけないでえええええっ!」
「うごっ!?」
父、雷神王の動きを止めた蹴りが炸裂する!
辛うじて膝とコブシでガードしたが、はたして!?
「ちっ!油断したぜ!四月世界の住人は信用ならねーやっ!」
ふっ、と消える雷帝。
そこには最早気配すらない。
「……ど、どうしよう!?お父さん!変なモノ蹴っちゃった!」
「……まぁ無事に逃げたようだが」
折角噂の雷帝殿と会えたのだが、こういう結末とは。
王としてよい機会を逃したと思い、同じ男としては、あいつ大丈夫か?我が娘の蹴りは凄まじいぞ?ガードしたように見えたが、当たっていた?
心配する雷神王であった。
「で、お父さん、彼、私の弟なの?」
思い切って聞いてみるメイグ姫。
「……おそらく……いや、分からん」
「!」
(おそらく?分からん?どういうこと!?)
「それより、レッド・ブーツ帝国だ、メグ、忙しくなるぞ!」
数日後、半壊した若葉街を見下ろす白黒ネコ。
「あ、クロちゃん!無事だったんだ!」
チビちゃん達が元気に声を上げる。
街は壊れたが、大人達は子供の元気な声に励まされ、復興を誓う。
その風景を静かに見守る白黒ネコとゴンザ。
(そうでもねーよ、腫れてうまく歩けねーんだ……おっかしいなぁ俺、獣人族の血が流れているからすぐに回復するはずなんだけど……)
(若、油断大敵ですぞ……パーフェクトではありませんな)
今回はここまでです。
では、また後日。
次回投稿は来週木曜日を予定しています。




