第31話 レッド・ブーツ帝国
こんばんは。
今回はこの時間になりました。
「救助かな?」
鞭のように撓う青年が、ゆっくりと剣を握る。
そして、溜息を一つ。
「ねぇ、本隊に異変があったようだけど?全滅っぽい、どう思う?」
「……残存兵、263名。他は戦闘不能……」
「雷帝か?」
「ははっ12万の兵だぞ!雷帝!恐るべし!」
「……あの者達、おそらくこの世界の者ではない……」
ローブの痩せた男が呟く。
「え?」
「この四月世界の『勇者』であるお前をここまで追い詰めたのだ、あれは異界の者だ」
「でも、僕は雷神王にも負けているよ?」
「……あれは、魔王戦の直後だ、それに聖女が……」
ここで周囲の雰囲気が変わる。
「……それにしても……」
勇者と呼ばれた青年が、樽将軍を垣間見る。
「救助?殺気がダダ漏れだ、弱ったオレ達を消しに来たみたいだなぁ……舐められたモノだ、この程度の数で……どれ、起き上がるか……」
トス!と矢が樽将軍に刺さる。
「……この程度の矢、落とせぬとは……」
ギラギラと眼を輝かせた兵士達が森の中から現れる。
……当たったぞ!……
……この三人、討ち取れば……
……俺ら幹部、いや将軍だって……
……あのお高い勇者、気に入らなかったんだ……
……なぶり殺しにしようぜ……
……殺した上に階級が上がるなんて……
……俺ら、なんて幸運なんだ……
「……欲に目が眩んだか……」
痩せたローブの男が呟く。
「僕についてくるから……」
「俺は、お前のパーティーの壁役だったのだが?」
ふらり、と、よろめく樽将軍。
そしてそのまま尻餅を着く。
「……毒矢か……この程度も解毒できねぇとは、情けなぇな」
「雷帝の攻撃がそれ程凄かったのさ。あいつ、魔王以上だ!」
飛んでくる矢を次々に討ち払う勇者と呼ばれた青年。
どうにか立ち上がり、青年の前に立つ樽将軍。
「お前、一人で炎帝と雷帝に向うつもりだったろう?」
「まぁ、ね……この四月世界を助けてほしくて……」
「オレ達じゃ、どうしようもないしな……ごふっ!」
大量の黒い血を吐き出す樽将軍。
「……毒矢かぁ、勇者の壁役も落ちたモノだ……あばよ、先にいってるぜ……聖女が待っている」
樽将軍は次々に矢を受け、その場に倒れた。
……俺の矢だ!俺の矢が仕留めたんだ!……
……ばか、俺の矢が一番多く当たっている!……
「……まだまだ実験を続けたかったが、ここまでか、ここで死ぬのか……さて死後の世界はどのようなものか……」
ムクリ、とローブの男は起き上がり、その目で次々と襲撃者を焼いていく!
魔眼である!
が、ローブの男にも矢が一つ刺さり、二つ刺さり、次々に刺さっていく。
「……雑兵に討たれるとは、我が魔眼も……」
それがローブの男の最後の言葉だった。
「みんな生れた国が悪かったよね……ここまでかぁ……聖女よ、ごめんよ、何もできなかった……ん?」
パッ!パパッ!と光りが走る!
それは、一瞬の出来事であった。
ドゴオオオオオオンッ!と巨大なイカズチが天から振り下ろされる!
大地がイカズチの威力で吹飛び、土砂が降ってくる!
……!……
襲撃者はその一撃で全て絶命する!
まさに容赦のない一撃だ。
血と肉の焼ける臭い、バラバラと土砂に紛れ、砕け散った何かが周囲にバラ撒かれる。
「よぉ勇者、久しいのう!」
大岩のような、巨大な塊が話し掛けてくる。
「……雷神王!? ……皇帝にして国王……北国の魔神か!」
巻き上がった土煙の中から、スノーホワイト国の国王が現れる!
「壁役と魔法使いは死んだか、ちと遅かったかぁ?まだ間に合うか?」
「速いよ、もう少し遅くてもよかったよ」
「あん?だったらお前が死んじまうじゃねーか?それとも死にたかったのか?」
「……生きている意味がない」
「まぁレッド・ブーツ帝国の国民は全て奴隷だからなぁ、お前、なんで俺の国に生れなかった?」
「……ふふっ……それはそれで、大変そうだけど」
「ふふっ?……おしい、ここで大胆不敵に笑うお前を惜しむ」
ゴフッ!
大量の黒い血を吐き出す青年。
数本の矢が腕に刺さっていた。
ボトリ、と腐敗して落ちる左腕。特に強力な毒が塗布されていたようだ。
「……何をしに来た?雷……神王……無力な僕を、笑いに来たのか?」
カラン、と軽い音を立て、剣が右手から滑り落ちる。
「お前には……お前達のパーティーには貸しがある、その回収にきた」
雷神王は見つめるだけで、何もしない。
「ん……?……ああ、僕達の死体が欲しいのか?すきにするといい、それで王の呪いが解ければ……苦しんで死んでいった者達も少しは浮かばれるさ……」
「そうさせてもらう」
雷神王は指先を青年に向ける。
バチッ!
人差し指から、青白い光りが放たれる!
その強烈な光りが、青年を打つ!
ガクンッ!と身体を曲げ、吹飛ばされる青年。
無造作に大地に転がり、動かなくなった。
「お、お父さんっ!なんてことをっ!酷いっ!」
来ないって、言ったのにっ!この嘘つきっ!と、いう言葉を呑み込むメイグ姫。
グリフォンが急降下してくる!
「ん?メグか?」
言葉は発したが、その目は樽将軍とローブの男を見ていた。
バチン!バチッ!
再び指から飛び出る青白い光り。
それは、二人の将軍を吹飛ばす!
「!?」
「お?どうしたメグ?」
「おと……皇帝陛下!し、死者を打つとは何事です!」
怒りに震え出すメイグ姫。
たとえ敵将でも許されないことだ!
戦士には敬意を!たとえそれが屍でも!あなたが言った言葉ではないか!
「解毒だ」
「え?」
「……人体は液体だ」
「液体?」
「その液体に毒が入ったのだ、それを電気で電気分解し無毒化した」
(作者注:四月世界でのお話しです、そういう設定です!)
「え?」
「ある種の毒は電気分解できる。ワシは一流の電気使い、こういうこともできる。まぁヒーラー不在だから自然とこうなったのだがな。響弓の隊長!よく見ておけ! 」
パチパチ、とメイグ姫の髪の毛が浮き始める!
「きゃっ!?」
それと同時に倒れた二人の将軍が浮き始めた!
目を見張る響弓の隊長。
コツ、カラン、矢が次々に抜け、浮いた二人の足下に矢の山ができる。
「電気は使い方による。街はどうしたぁ?」
「響弓のメンバーがブリザード・ワームを制圧」
「雪原と残りの第六国境警備隊は?」
「炎帝殿がブリザード・ワームを制圧、残第六国境警備隊は無事です」
「ほう、で、雷帝は?」
「雷帝はレッド・ブーツ帝国の兵と対峙を……」
「ここにいるぜ、メイメイ!」
「「!?」」
驚き振り返るメイグ姫と雷神王。
「帝国の奴等は、皆寝てるぞ」
「!」
ちょっと驚いて目を逸らすメイグ姫。
「……ほう、我が後ろを取るとは……お前が雷帝か?」
「ああ、そう呼ばれているけど。あんたは?」
「ワシか?ワシは一介の戦士」
「あんた、強うそうだな?イッカイ」
「え?」
驚くメイグ姫。
(も、もしかして、イッカイって名前だと思っているの!?あ、だから私の方を向かないでよ!目のやり場に困るのっ!)
やっぱり、弟かしら?
このカン違い、とか傍若無人ぶり、なんかお父さんに似ている!
お父さん、お風呂上がりマッパでウロウロするし!
次回投稿は未定ですが、木曜日夜を目指しています。




