第71話 居酒屋四天王2
こんにちは。
投稿です。
デカイ身体だけでも周囲を圧倒するイッカイ。
その身体に刻まれている無数の傷痕も、イッカイが只者ではないことを物語っていた。
「意見?はい、この若葉街など、フッ、と一息で消えます、それ程の権力をお持ちの方じゃ、イッカイさん、王族には敬意を払って下され」
盗掘、納税の件でも立場が危うい若葉街である。
地下資源の無断採掘は泥棒であり犯罪だ。
今はしていません、とは言ってもそれは今まではしていました、の言い換えでしかない。
ここでゴンザも動いた。
「イッカイさん、あんたには街を助けてもらった恩がある、今も街の復興に力を貸してもらっている、だが流れ者のあんたは知らんかもしれんが、あのお方は国の一翼を支えているお方、敬意を」
そう言って、一瞬ニャオ先生を見るゴンザ。
すすっ、と一の賢者の前に進み出るニャオ・ミント。
その間に入るマシンダガン・トッチ。
ガードとして当然の動きである。
「私は村長ピノの娘ニャオ、一の賢者様、どうかあの者にお慈悲を」
イッカイさん、不遜で討たれる、と思ったのだ。
「あの者、甚だ不遜だが?」
「若葉街に必要な鬼族の方です、気性は荒く乱暴者ですが、心根は優しいお方です」
「心根?優しくは見えぬが?」
「子供や犬達が、後を追い慕い離れません」
(ほう、我が孫は慕われておるのか?しかし鬼族?まぁあの体格に気性、鬼族と見られても仕方あるまい、ふふっ、ここらで納めるか)
「トッチ」
一言だけマシンダガン・トッチに声を掛ける一の賢者。
「イッカイとやら、街の者に感謝しろ!」
内心ヒヤヒヤで声を上げるトッチ。
(ひいいいっ!公務とはいえ後が怖いっす!公務ですからね、公・務・!そげな睨んだらだめっす!)
が、ここでイッカイが動いた。
ニャオ・ミントの前に進み出たのだ。
「希少種エルフ、あんた計算高いなぁ」
「そう見えましたか?」
「ああ、王族である一の賢者サマに意見など、そこのマシンダガンさまに斬られても文句は言えん、希少種だから斬られない、と思ったか?」
「はい」
臆することなくイッカイと対峙するニャオ先生。
「ならば、俺の命を助ける代わりに、その身を差し出せと一の賢者さまが言ったら、どうした?」
「そうします」
「ほう、なぜ流れ者の俺にそこまでする?」
「あなたは一の賢者さまの医療ポットが来るまで、その魔力で多くの街人や子供、犬達に至るまで治療し助けてくれました。それだけでなく侵略者からも……」
そう目の前のマシンダガン・トッチもその一人だったのだ。
「……あなたはこの街に必要な、英雄なのです」
ここで笑い出したのが一の賢者である。
「ふふっ、英雄か、ならばそれに相応しい行動をとらぬとなぁ、イッカイとやら」
「チッ」
……だ、ダメですよイッカイさん!舌打ちなんて!……
「俺は流れ者イッカイ、作法を知らぬ。どうか許されよ一の賢者サマ!そして罪無き街の者に慈悲を!」
バチバチで睨み合うイッカイと一の賢者。
口では謝っているように見えるが、お互い殺気が凄まじい。
が、ここで小さな拍手が湧いた。
ぱちぱち!
「「!?」」
驚くイッカイと一の賢者。
しきりに手を叩いていたには子供達だった。
……イッカイさんカッケー!……
……しゃほうをしなぬ……おにやん、わたしもいっていみたい!……
……ごめんなさいがカッケー、おれもかあちゃんに言ってみたい!……
笑い出す大人達。
そして気が付き始める。
……おい、あの二人、なんか似てね?……
街人1の声である。
……ああ、大きさ、雰囲気、そっくりじゃね?……
街人2の声である。
……一の賢者さまのお顔、初めて見たが、イッカイさんに似てね?……
街人その他大勢の声が上がり始めた。
……最初に映し出された国王様の影、イッカイさんに似てね?……
……おいおい、それこそ不遜だぞ!……
(ここの住人はバカか?あいつは国王、雷神王その人だぞ!)
間者1の声。
(そしてこいつは武術の達人、大地を割る狂拳の持ち主。もう俺が間者だと気がついているはず……それでも見逃すということは、このシステムの情報を本国に持ち帰って広めろってところか?)
四月世界が変わり始める。
今回はここまでです。
次回投稿は明日の朝を予定しています。
毎回ご愛読ありがとうございます。
『赤い眼の少年冒険譚・番外編」
とある井戸端。
「イッカイさん、困ったもんだよ!」
「そうそう!」
「あん?どうかしましたか?」
そこには若葉街のお母さん達が5、6人集まって、水を汲んでいた。
さすがに人妻には手を出さないが、俺、何かしたか?
などと不謹慎なことを一瞬思うイッカイ。
「あんたのあのセリフだよ!」
「?」
「うちの子、ご飯食べてるとき行儀が悪くてねぇ、よくこぼすんだよ!」
「?」
「注意したらさぁ、『俺は作法を知らぬ、許されよ』とか言って逃げるんだよ!」
「はぁ!?」
「うちの子は花瓶割ったとき、『わざとではない、罪なき我に慈悲を!』とか言うじゃない!」
「まさか、俺の口まねをしていると!?」
「そうなんだよ!」
「あんた子供達のヒーローなんだから、ちゃんとしておくれよ?」
「そうそう!うちのダンナもさぁ酒飲んで帰りが遅いとき『どうか許されよ我が妻よ』とか言うじゃない!」
「いや、それは俺に言われても!」
「で、イッカイさん、サダちゃんどう?いい子だよ、サダちゃん!」
「は?」
「この街に住みなよ!ここに根を下ろしなよ!」
いつの間にかいない参謀。
若葉街では、弟子ということになっているが消えている。
(あいつ、逃げたなっ!?)
視線を感じチラ見すると、そこには一の賢者が!
(おい、人気者だなぁ、イッカイさん?)
念話が直撃してくる。
(う、うるせぇ!くそじじぃ!う、羨ましいか?あん?)
(まぁ、ちょっとだけな)
誰もイッカイさんが雷神王とは知らない。
イッカイさんも自分が王であることを忘れがちな、今日この頃である。
*サダちゃんは次回、ちょっとだけ登場します*




