第55話 戦い終って
おはようございます。
投稿です。
「うううっ……ひっく……コマンダーユウバ!か、勝ちましたぁあああっ!」
高々と掲げられる魔槍。
勝敗が決まると、フィールドは徐々に薄れ、消えていった。
周囲は静まり、昆虫族は冬眠でもしているかのように動かない。
たった一枚のカードに、負けたのだ。それも、散々笑い者にしていたドワーフに。
惨憺たる状況。
大戦でしか使用しないレイドカード、禁じ手まで使い総力戦で挑んだが勝てなかった。
そして蘇るバトルの記憶。
あらゆる攻撃をモノともせず、猛威を振るう重騎士。
それは恐怖。
何故倒れない?
泣きながら無双する悪鬼。
終ること無く繰り返される悪夢の始まり。
高慢でプライドの高い昆虫族は、負けてなおドワーフが許せなかった。
異界のゴーレムを、憎悪すると同時に恐怖した。
その憎悪と恐怖を感じ取った魔女回路。
〔逆恨みか?自分達から仕掛けきたくせにのう、救われぬ一族じゃ〕
魔女回路はその卓越した観察眼で昆虫族を見る。
魔力の目で見た昆虫族は、殆どの者達が壊れていた。
動き出す昆虫族。
ある者は過呼吸、ある者はフラッシュバックで震えだし、混乱が広がり始めた。
〔ああ、逆恨みの自滅か、自らを高き者と思う者ほど本質は弱く脆い。このままでは、大半の者は立ち直れぬであろうなぁ、まぁ我の知ったことではない……自業自得じゃ〕
魔女回路はカードバトルの本質を垣間見た。
〔死にはしないが、勝敗でかなり危険な状態になる者もいる、と。バトルは遊びではない……記録記録〕
フィールドがあった場所に目を移すと、そこにはカード化が解けた、いつものコジリンが立っていた。
〔ん?様子が?〕
コジリンはその場所から動かない。
「ん?コジねぇどうしたの?」
勝って、嬉しくないのだろうか?
異変気づき、走り寄る雷蛇。
その雷蛇を怯えた目で見るショジ・コジリン。
「……う……」
「ど、どうしたの!?……コジ……ねぇ……?」
明らかに雷蛇を怖がっている。
「雷くん……おしり叩いた……」
「!」
「い、痛かったの……」
「ご、ごめんよ、でも!」
「でもじゃないっ!お姉ちゃんを叩いた……お姉ちゃんを叩いたらダメなの!」
雷蛇は、この時のコジリンの眼を忘れない。
涙に濡れた悲しい目。
不謹慎だが、その目は息を呑むほど美しかった。
「……ご、ごめんなさい」
「うう……まだジンジンする……痛いよぅ……」
コジリンは毒矢に撃たれることより、雷蛇の電撃がショックだった。
「おしり、痛い?」
こくこく、と頷くコジリン。
カードバトルによるダメージは軽減され、死に至ることはない。
バトル中に受けたダメージは行動の制限、活力のダウンで表現される。
これほど痛がることは無いはずなのだが?
雷蛇は思った。
これに似た経験があるぞ!獣人族なのに、回復が遅れた時!あの時だ!
世界の意思とか言っていたかな?
それとも絆が強い相手は影響力がある?
雷蛇は躊躇うこと無くコジリンのお尻に手を当てる。
「きゃっ!?」
「じっとして!」
「え?」
「……子ネコ……子ネコを触るように……」
「ち、ちょっと!?雷くん?……あ……!?」
雷蛇の手は、ヒンヤリして心地よかった。
その手が、ゆっくりと優しく動き出す。
……ふ、婦女子の臀部に触るとはっ!犯罪ですぞ!パーフェクトではありませんな!……
どこからか響く声。
勿論、無視である!
雷蛇に宿る聖女の力が、解放されていく。
次回サブタイトルは 第56話 怒りの女神 の予定です。




