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赤い目の少年冒険譚 (2025.05)  作者: MAYAKO
第二章 五月世界

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第55話 戦い終って     

おはようございます。

投稿です。


「うううっ……ひっく……コマンダーユウバ!か、勝ちましたぁあああっ!」


 高々と掲げられる魔槍。


 勝敗が決まると、フィールドは徐々に薄れ、消えていった。

 周囲は静まり、昆虫族は冬眠でもしているかのように動かない。


 たった一枚のカードに、負けたのだ。それも、散々笑い者にしていたドワーフに。


 惨憺たる状況。


 大戦でしか使用しないレイドカード、禁じ手まで使い総力戦で挑んだが勝てなかった。

 そして蘇るバトルの記憶。

 あらゆる攻撃をモノともせず、猛威を振るう重騎士。


 それは恐怖。

 何故倒れない?


 泣きながら無双する悪鬼。

 終ること無く繰り返される悪夢の始まり。


 高慢でプライドの高い昆虫族は、負けてなおドワーフが許せなかった。

 異界のゴーレムを、憎悪すると同時に恐怖した。


 その憎悪と恐怖を感じ取った魔女回路。


〔逆恨みか?自分達から仕掛けきたくせにのう、救われぬ一族じゃ〕


 魔女回路はその卓越した観察眼で昆虫族を見る。

 魔力の目で見た昆虫族は、殆どの者達が壊れていた。


 動き出す昆虫族。


 ある者は過呼吸、ある者はフラッシュバックで震えだし、混乱が広がり始めた。


〔ああ、逆恨みの自滅か、自らを高き者と思う者ほど本質は弱く脆い。このままでは、大半の者は立ち直れぬであろうなぁ、まぁ我の知ったことではない……自業自得じゃ〕


 魔女回路はカードバトルの本質を垣間見た。


〔死にはしないが、勝敗でかなり危険な状態になる者もいる、と。バトルは遊びではない……記録記録〕


 フィールドがあった場所に目を移すと、そこにはカード化が解けた、いつものコジリンが立っていた。


〔ん?様子が?〕


 コジリンはその場所から動かない。


「ん?コジねぇどうしたの?」


 勝って、嬉しくないのだろうか?

 異変気づき、走り寄る雷蛇。


 その雷蛇を怯えた目で見るショジ・コジリン。


「……う……」


「ど、どうしたの!?……コジ……ねぇ……?」


 明らかに雷蛇を怖がっている。


「雷くん……おしり叩いた……」


「!」


「い、痛かったの……」


「ご、ごめんよ、でも!」


「でもじゃないっ!お姉ちゃんを叩いた……お姉ちゃんを叩いたらダメなの!」


 雷蛇は、この時のコジリンの眼を忘れない。

 涙に濡れた悲しい目。

 不謹慎だが、その目は息を呑むほど美しかった。


「……ご、ごめんなさい」


「うう……まだジンジンする……痛いよぅ……」


 コジリンは毒矢に撃たれることより、雷蛇の電撃がショックだった。


「おしり、痛い?」


 こくこく、と頷くコジリン。


 カードバトルによるダメージは軽減され、死に至ることはない。

 バトル中に受けたダメージは行動の制限、活力のダウンで表現される。

 これほど痛がることは無いはずなのだが?


 雷蛇は思った。


 これに似た経験があるぞ!獣人族なのに、回復が遅れた時!あの時だ!

 世界の意思とか言っていたかな?

 それとも絆が強い相手は影響力がある?


 雷蛇は躊躇うこと無くコジリンのお尻に手を当てる。


「きゃっ!?」


「じっとして!」


「え?」


「……子ネコ……子ネコを触るように……」


「ち、ちょっと!?雷くん?……あ……!?」


 雷蛇の手は、ヒンヤリして心地よかった。

 その手が、ゆっくりと優しく動き出す。


 ……ふ、婦女子の臀(でん)部に触るとはっ!犯罪ですぞ!パーフェクトではありませんな!……


 どこからか響く声。

 勿論、無視である!


 雷蛇に宿る聖女の力が、解放されていく。


次回サブタイトルは 第56話 怒りの女神 の予定です。

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