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ここは異世界だった

行き交う”色々な人”を見ながら、僕の手を引いてくれるレミさんに連れ回されるがままカーミラという町を歩いていた。


「…」


「どうしました? 気分でも悪いですか?」


「いや…その。あの耳ついてる人って…」


指を指すのはさすがに失礼だと思って、数メートル先で八百屋?の店主と談笑してる女性? にさり気ない視線でレミに聞いてみる。


「…? 普通の猫人族の女性ですよ?」


「ねこびとぞく…じゃあ…あそこの角材背負った鱗の人は…」


「リザードマンです。凄い力持ちですしお強いですよ」


「リザードマン…」


あの日、アルバートさんに助けられて、このレミさんに看病されて目が覚めた日から2日が経っていた。

あの後まる1日寝てたからさすがに体も回復して、普通に動き回れるくらいにはなって、





【そろそろ外を歩いたらどうだ? 商人の下で働くなら町の人とは切っても切れねぇ関係になる。それに、もしかしたらカーミラを見て歩けば記憶が戻るかもしれないからな】






という事で、アルバートさんは多忙な身ということで娘のレミさんに町を案内してもらっていた。

ぶっちゃけもうここまで来ると、僕の記憶が混乱してると言うより…ただ単に現実を受け入れられない僕が自己保身のためにでっち上げた記憶喪失って事はわかってるんだけど…それでも…何がなんでも…


「マワルさん?」


心配そうな顔で覗き込んでくるレミさん。ついなんかこう…心臓が高なってしまった気がした。

そうだ…よな。


今まで身の回りの異常に手一杯で、周りに目がいってなかったのか、目の前の少女…レミさんって凄い可愛いよな。

日本にはほとんど居ないであろう綺麗な赤毛。大きな赤い瞳。

普通に美少女。


ただ絶対に年齢がOUT。やばいやばい。


「あ…いいや。僕の記憶…には人しかなくて…少しびっくりした」


「確かにここまで色んな種族が入り乱れてるのって結構特殊ですからね。他は人間の国、なになに種族の国とかで集まってるのが多いので」


まるでゲームの中…最近はやりの異世界ものだな。


歩道も車道もない石畳の道を馬車が通り、それをかわすように”色々な種族”の人達が行き交っている。

スーパーなんてものは無く、それぞれが行きつけの商店で買い物をして、レジ袋なんか当然のように存在しなくてみんなが買い物袋のようなものや、ツルを編み込んだカゴをぶら下げている。


そしてそんな大勢が通る道に、やたらカチャカチャと言う金属音を放ちながら周りとは明らかに違う空気をまとった集団がやってきた。


観察するように視線を向けると、そこにはいかにもゲームに出てきそうな格好の人達がいた。


皮や金属で作られた鎧や兜。そして初めて目にする本物の剣。

コスプレの類では無いことは見てわかる。


「あの人たちは…?」


「ハンターさんですね。街道に現れた魔物とかを退治してくれる人達です。私の父も商人という仕事柄護衛よく護衛してもらいます」


ハンター…。

あの剣で魔物ってやつをぶった斬るのか。

でかあの剣、結構な長さだな…なんキロあるんだろ


「にしても鎧についてるあの模様は…鍛造製なのかな」


鎧や兜の表面が均等にボコボコしてたから、職人か何かが1品1品ハンマーでぶっ叩いて整形してるのだとしたら…


「そうです! 金属装備は総じて職人の手作りなのでとても高いです…でもどうしてわかったんですか?」


「いや…前の仕事が金属加工だったから…ね」


「じゃあ職人街行きましょう!」


「職人街?」


「はい! 防具とか武器とか、薬品とか狩りや魔法道具を作る人が多いエリアですね。ここら辺はどちらかと言うと住宅街って言うか…生活向きの場所なので」


「じゃあ任せるよ」


興味が無いわけではなかった。見た感じ文明レベルというか、加工技術に関していえば確実に前の世界の方が進んでる。


でもこっちには魔法って言う未知の力があるらしい。どんな加工をしてるのか…ワクワクせずにはいられないよな


職人街と言う所はここから歩いて20分程と言われた。そこそこの距離だなと思いながら後を付いて行きながら、色々観察してみた。


まず馬車。殆どが木で作られていて、特に車軸周りなんか心配になる作りだ。


「レミさん、馬車の車軸ってみんな木でできてるみたいだけど、耐久性とかどうなの?」


「ほぇ? あぁ…良いとは言えないですね。だいたい家だと1ヶ月で交換ですね…でも仕事柄必需品なので致し方ない出費です」


「金属で作らないの?」


「それを考えた人は沢山いたんですけど、まずまっすぐな棒を作ることが出来ないので、今は既存の木製の軸を量産して価格を抑えて消耗品にしてます」


まだそのレベルなのか…。だとしたら旋盤はまだ無くて、全て人の手作業か。

まぁ消耗品にする方がメーカーにとっても利益的に良いからな…


他にも上下水道がないこの町で水を汲み上げるには井戸を使っていて、大きい目の井戸だと巻き上げ装置が木でできてる。

やっぱりその軸も木だ。


腐りずらい腐りにくいあるだろうけど、基本的に水周りにある木材は腐ると考えていい。


現に目に付いた殆どの井戸の木製の部品は腐りかけてた。

いつボキッと行くか見てて不安になる。


「どうしたんですか? さっきから妙にご執心ですけど」


「金属で作れればいいのにってのが沢山あってね」


「確かにそういうものは沢山ありますねぇ。そう言えばさっきマワルさんは金属加工のお仕事してたって言ってましたね! どういう事してたんですか?」


「…そうだな。鉄を削って丸にする仕事をしてたよ」


「削って?」


レミさんはキョトンとした顔で聞いてきた。

そうか。ここはまだ基本的に鍛造加工なんだよな。

切削加工って言う概念がまだ金属までたどり着いてないから、こういう反応になるのか


「りんごの皮剥きみたいに金属を切るんだ。ただ専用の機械が無いと出来ないんだけどね」


「…その専用のキカイ?というのは手に入らないんですか?」


「それは…難しいかな。でもどうしたの? そんな顔して」


「いえ…本当に鉄を簡単に加工できるなら…その…」


「大儲け?」


「えへへ…これでも商人の娘ですからね」


そこにお金の匂いを感じる辺り本当に商人の血筋だよな。

実際問題、この産業レベルの世界に産業革命後の加工技術ってのは…色々な意味で大きすぎるものだ。


そこに大金が関係するのは容易に想像がつく。


「さて、着きましたよ。ここからが職人街です」


「ほぉ…」


明確な境界がある訳じゃないけど…確かにさっきまでの生活感は薄れてる。

耳をすませば金属を打ち付ける音とか普通に聞こえてくる。

空気も少し臭う。煙の匂いだ。


「The工業地帯って感じか」


「ささ、知り合いの鍛冶屋がすぐそこにあって見学させて貰えると思いますから行きましょう!」


鍛冶屋…あれだよな。よく鉄を真っ赤に加熱してハンマーで鍛えるやつ。


その鍛冶屋と言うのもレミさんの言う通り数軒先にあった。

さっき見たハンターさんに似た格好の人が結構出入りしてる。評判がいいのだろうか?


「こんにちわ〜グレムさん居ますか?」


「あらレミちゃんこんにちわ。グレムなら奥で仕事してるわよ。それで今日はどうしたのかしら?」


「はい! 色々あって家で雇うことになった彼に町を案内してて、職人街に興味があるらしくて見学させて貰えませんか?」


店…? に入ると武器を持った屈強な男が数人居た。飾ってある武器を品定めするように見入っていたり、何かを待っているのか待合椅子に座って作業してる人だったり色々だ。


そんな中、店番なのか話しかけてきた女性に僕はとりあえず頭を下げた。


「泉海廻と言います! よろしくお願いします!」


「えぇ、初めまして。私、この店の店主をしてるスフレよ。マワルさんね、レミちゃんに似て元気がいいのね。良いわよ好きに見ていってちょうだいな」


「ありがとうございまーす!」


どうやら店の奥に作業場があるようで、奥に案内されるがまま鍛冶屋を見学することになった。


奥に進めば進むほど鉄を打つ音と、気温が上がって行くのを感じる。

1枚の扉に行き着く。凄い熱気を感じる。

きっとこの先が作業場なのだろう。


案内してくれた女性が扉を開けると案の定景色が真っ赤に染った。


まず目に付いたのが真っ赤に燃える4つの炉だ。鉄を入れて真っ赤になるまで加熱して、柔らかくなったところで取り出してハンマーで叩いて整形していく。

まさにその作業の真っ只中だった。


「あなた〜?」


「あ、奥様! どうされましたか?」


「グレム知らないかしら?」


「親方なら奥で刃付け作業してると思います。呼んできましょうか?」


「大丈夫よ、見学させてあげてるだけだから」


ここの部屋は防火対策なのか砂が敷きつめられてる。その上に金敷が置いてあり、大小様々なハンマーが各炉に備え付けられている。

何より燃料だと思われる炭の量が凄い。炭なのかコークスなのか石炭なのか、パッと見分からないが、かなり本格的な鍛治仕事だと思った。


「こう言うのは初めて?」


「知識としては知ってたんですけど…見るのは初めてです」


「じゃあ私はグレムに話は通しておくから、気の済むまで見てていいわよ」


「はい!」


スフレさんが奥の部屋に居なくなったあと、僕とレミさんは熱気の篭もるこの部屋で見学を続けた。


鉄を高温の炉の中に入れて加熱。真っ赤になった所で取り出して叩く。鉄は熱いうちに打て。のことわざ通りだ。


「凄いですねぇ…私なら30分と持ちませんよ」


「すごい体力だよねぇ」


炉が4つ。打ち手と持ち手でここの作業者は8人だ。

打ち手は文字のごとくハンマーを振る側。持ち手は金敷の上で”やっとこ”と呼ばれる火バサミのようなもので加熱した材料を固定して、打ち手にハンマーを打ち下ろす場所を指示したり、材料の向きを変えて完成に近づける役目を持っている。


餅つきと同じ感じだ。


持ち手が次叩く場所を小槌で軽くて叩いて打ち手に指示。指示された場所に打ち手は振り下ろす。

加熱された金属は硬くは無いため、カチン!と言う金属音では無くドンと言う衝撃音が砂の床を伝って僕達に伝わってくる。


酸化した表面が火花となって飛び散る。


数回流れ作業のように、持ち手が打ち所を支持する【カンっ!】と言う音と、打ち手が振り下ろす【ドン!】と言う音が連続であちこちで鳴り響いてる。

凄いリズミカルだ。


そして鉄が冷えて硬くなってきたら、また炉に入れて再加熱する。

その繰り返して、どんどんと剣やナイフ、槍の矛先が出来上がっていくのだからこれが本当の【職人技】と言うものなんだろう。


「ああやって叩いて伸ばして折返して、また叩いて折返してを繰り返して組織を均一にしていくんだな」


「ほぉ詳しいな若けぇの」


不意に声をかけられてびっくりしたが、声の主はさっきスフレさんが入っていった扉の前に立っていた。

多分あの人がグレムさんに違いないだろうと体を向けた。


「初めまして! 泉海廻と言います!」


ここはいささか騒音が大きい。気持ち大きめに挨拶した。

と言うより、思ったよりガタイがでかいお爺さんが出てきて、気後れしそうになって思わず声を張ってしまったのが正しい。


「お前がアルバートのとこの新入りか?」


「はい!」


「そうかそうか、俺はグレム・バレンだ。この店はそこの商会と長い付き合いでな。他の国とか王都に品を出す時は世話になってんだ。よろしく頼むな」


そうなのか…。委託販売…と言うやつか?

確かにここはそう流通が発達してるとは言い難い。言っちゃ悪いがこう言う小規模な店の商品を外へ売りに出すのは難しいのかもしれない。


だから商売に特化した商会に売ってもらうのか。


「んで、あんちゃん。鉄打の知識があるとみた。どっかで槌振ってたんか?」


「いえいえ、知識として持ってるだけですよ。こうしてまじかに見るのはこれが初めてです」


「そう…か。そうだよな、そんなヒョロっちい体じゃ打てっこねぇな」


「あはは…」


なんだろう。今一瞬グレムさんの雰囲気が変わったような気がした。

気のせいか?


「グレムさん! この前お預かりしたロングソード三本、父が好評だったって言ってましたよ!」


「そうかそうか。そりゃぁありがてぇもんだ」


そう言うと何かに目がついたのか、グレムさんは炉の前でハンマーを振ってる人の元に歩いていった。


「遅いっ! もっとハキハキ叩けんのか!」


「へ、へい!親方っ!」


突然の叱責だ。大柄な体格と年配の還暦というのか…まじでビビるな

今のご時世じゃ色々とまずい雰囲気だけど、まぁこれが師弟関係と言うやつなんだろ。僕の会社も昔はこんな感じだったって上の人は言ってたっけ

さすが親方と呼ばれるグレムさんという感じだな


「すまんな、見苦しいところを見せた。…見学だったな。ここは暑いだろ、奥に行くといい」


「奥は刃付けをしているんでしたっけ?」


「そうだ。ここよりは涼しいだろうよ、嬢ちゃんは限界みたいだからな」


僕よりレミを見ながらグレムさんは呟くと、さらに奥の部屋に歩いていった。


「レミさん大丈夫?」


「あ、暑いだけですよォ…」


汗だくだくのレミさんが顔をほんのり赤くしながらぐたぁっとグレムさんの後を追って行った。


「たしかに暑いよなぁ…」


そもそも炉が4つもあってるってだけで室温が馬鹿みたいに高いのに、炉の中や真っ赤に赤熱した鉄から放たれる輻射熱が直に肌を熱してくる。

グレムさんの弟子たちも殆ど上半身裸に近い格好で汗水垂らして頑張ってるが…まぁ労監が見たら卒倒する光景ではあるよな


よく見たら体のあちこちに火傷のあとがみてとれる。


本当にご苦労さま


世界が違えば安全基準が違うのは当たり前だ。どの程度までが許されて、どこからがアウトなのか。そこら辺の判断は僕にはまだ分からない。


「ありがとうございました」


汗だくの弟子達に一礼して僕もグレムさんの後を追った。





扉を閉めた瞬間、熱気はシャットアウトされたように無くなり一気に涼しくなった気がした。実際はまだ室温は真夏並みにあるのだが、それでも一気に涼しくなったと感じた。


「随分広い工場なんですね」


「まぁそれなりに昔からやっとるから増築に増築を重ねて今じゃこの町で1番でかい鍛冶屋になったからな」


「なるほど…通りでお客さんも多いんですね」


「言うじゃねぇか若ぇの。まぁ俺が生きてるうちはただ”デカいだけの鍛冶屋”とは言われないように精進するさ」


「大丈夫じゃないですか? お弟子さん達も立派じゃないですか」


「アイツらはまだまだだよ。わけぇ癖に体力がねぇ。俺のわけぇ頃は…」


「あはは…」


なんだろう。懐かしいなこの感じ。

うちの社長見たいだ。


「で、ここから先が仕上げ場だ。さっき見とった所で作った大まかな形をここで整えて、刃付け。そしてそこの釜で焼入れっつう事とか色々して、表面を磨いたあと最後に研いで完成だ」


「焼入れですか…あの釜で?」


「おうよ、なんかあったかい?」


「随分と大きい釜ですけど、温度管理とかどうしているのかなと気になりまして…適当な温度では焼き入らないと思いますし」


「随分詳しいじゃねぇか。そうだな、確かに高すぎても溶けちまうし、低すぎても焼きが入らねぇ。1本焼くくらいならさっきの炉を使えば充分ことたりるが、1日10本とか焼くとなるとな」


「10本? そんなに打てるんですか?」


「あぁいやいや、焼入れに関しては他の鍛冶屋のものも一緒に焼いてやってるんだ。一品物をやるとこは各々勝手にやってるだろうが、沢山作らないけねぇとなると焼釜もそれなりのものが必要になる」


「熱処理に関しては独占できてるんですね」


「まぁな。ただ騎士用の剣を受注した時にはウチだけじゃとてもじゃないが手が回らん。だから他の鍛冶屋も必要なんだ。持ちつ持たれず、ここら辺はそうやって成り立っとる」


「なるほど」


このグレムさんのとこの鍛冶屋はただデカいだけではなくて、この一体をまとめあげる親会社…では無いな。

中心的役割がある…という事か。


「それに焼釜は値段が高いだけじゃなくて、才能も必要だしな」


「才能…ですか?」


「なんだ、そこまでは知らないのか。焼釜を制御してるのは魔石だから素質のあるもんしか扱えん」


「と言うと…?」


ませき…よくゲームで出てくる魔石…? あの宝石みたいなやつ

魔法…と関係があるのだろうか?


「おーいイワン! 居るかぁー」


「あーい、今魔石のメンテしてるぞー」


鎌の中から声が聞こえてきた。どうやら今はメンテナンス中らしい。

と言っても魔石のメンテ…気になる


僕達も焼釜のの扉に近づいてひょっと覗いてみる。


「おーぉ」


中には鉄製の棚が並んでいて、これから焼くのであろう荒仕上げされたブレードが10数本吊り下げられていた。

そして、視線を窯の内部に移すと天井から壁面までびっしりとぼんやりと赤く光った石で埋め尽くされていて、微妙に熱気を感じた。


「この赤いのが魔石…ですか?」


「そうだぞ」


釜の中で作業していたイワンさんがムクリと立ち上がると、汗ばんだ額を首にかけていたタオルで拭いとった。


「イワンさん…でしたか?」


「おうよ、俺はイワン・バレン。そこのジジイの孫になるぜ」


まさかのお孫さんか…

そんなイワンさん…いや…君か?

背は俺より低いけど、まだまだ成長途中って感じがして、妙にイキイキしてるというか元気ハツラツというか、若者の元気ってのを感じる


「俺がこの窯を全部管理してっからな! ガァハッハハ!!」


「何をいきがっとるか、鉄も満足に叩けんようなやつが偉そうな口を効くもんでねぇ。さっさと火入れんかい」


「へいへーい」


イワン君は壁から岩のようにゴツゴツと飛び出している魔石という石を伝って、壁を登り始めた。ロッククライミングのようだ。

でも熱くないのかな

結構熱気を感じるけど…


「あの宝石みたいなやつで加熱するんですか?」


「そうだが…魔石を知らんのか?」


「恥ずかしながら…あはは」


呆れたてものも言えないというか、純粋にめちゃくちゃ驚かれて、俺もびっくり

魔石なんか知らんよ…魔法の石?


「グレムさんすみません。マワルさんは色々と記憶が混乱してるもので…自分がどうここにやってきたのかもわかってないんです」


「あぁ…そうなのか。通りで”色々あって”嬢ちゃんと一緒にいるわけだな」


「えぇまぁ…そうですね。アルバートさんに拾ってもらわなかったら、多分道端で干からびてましたよ」


「ガァハハハ! おもしれぇ奴だな! マワルと言ったか? おめぇとは何故だか長ぇ付き合いになる気がする。アルバートには悪いがアイツと違う空気がお前さんにはある。よろしく頼むよ」


「えぇ…あ、はい! よろしくお願い致します!」


何故だか豪快に笑いながら僕の背中を叩いてくる大柄なお爺さん…その力はトントンじゃなくて、普通にドンドンで思わず吹き飛ばされそうになってしまった。











「良かったですね!」


「え? どこら辺が?」


焼き窯を見させてもらったところで、大まかな見学は終わったようで少しだけお話したあとお仕事の邪魔にならないためにもササッとグレムさんの鍛冶屋を後にした。

今は職人街をレミさんと歩きながら色々教えてもらってる。


「グレムさんって色々と気難しい事で有名なんです。父も結構気を使うって毎回呟いてますし」


「職人さんって案外そういう人多いと思うけど…」


「そうなんですよね〜。でもマワルさんはグレムさんに気に入られたようで正直ビックリです! いつか職人街関係のお取引はマワルさんにお願いしてもいいかもしれません!」


「えぇ…さすがに話が跳躍しすぎじゃ…それにアルバートさんにもしばらくは荷卸と荷積みって言われてるし」


「いずれ、ですよ? 」


「いずれ…ねぇ」





「そう言えばイワン君はグレムさんのお孫さんでしょ?」


「そうですよ?」


「息子さんや奥さんって…」


「息子さんはこの職人街で鋳造? と言うのをやってる方のようです。すみません…私はそこまで詳しくなくて…」


「鋳造…か。家族で鍛造と鋳造…。なかなかの技術家族だなぁ〜。今度見てみたいかも」


そうか…グレムさんの鍛冶屋では精錬関係は全くしてなかったよな。

あそこにある材料が息子さんの鋳造でできてたとしたら…なんか良いなぁそう言うの


「それでグレムさんの奥さんって…」


「グレムさんの奥さんはスフレさんですよ? 最初に案内してくれたじゃありませんか?」


「えっ!? あの奥様って呼ばれてた人だよね!?」


「ええ。みんな最初は驚くんですよね〜。グレムさんは結構なお歳ですが、スフレさんって凄い美人さんですから」


えぇ!!!!

年の差婚所じゃなくない!?

スフレさんって普通に娘さんとかそのレベルだよね!


「でも安心してください? スフレさんはエルフと言う種族で、見た目こそとてもお若くて美人さんですが、実年齢は…」


そこまで言うとレミさんは立ち止まり、僕の袖をクイッと引張出てきた。

少し身を屈めて耳元をレミさんに近づける。


(グレムさんの5倍は生きてます)


「なん…だとっ」

















「なぁスフレよ」


「なんだい?」


「あの若いの…なんか妙じゃねぇか?」


人が少なくなった店中で休憩にやってきたグレムがスフレの近くで呟いた。

すぅっとタバコを吸ってゆっくり吐いたスフレが目を細めて言葉を返す。


「そうかい?」


「いや…な。打屋の仕事をしたことが無いくせに、妙に物知りでな」


「…あの子が何だって良いじゃないかい」


「まぁな。確かにあいつと話すのは何故だか気分がいい」


「んならアルバートのとこに言ってみるかい? マワル君を次から寄越すようにってさ」


「ははっ、そりゃおもしれぇ。きっとアルバートの野郎悔しがるぞガハハハ」

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