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Lord to Gloria  作者: 頭 垂
第三章 連なり合う
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らしさ、とは

グローリアの今の発言に、五人は少なからず息をのんだ。

連合なんていう自由を侵害しそうな発言がグローリアから出たこともその理由の一つではあるし、連合と言うものが西大陸にとっては荒唐無稽すぎると言うのもその原因の一つであった。

先ず以て、西大陸と言うのは集団を嫌うという訳ではないが、好むという訳でもない。

西が好むのは自由ただ一つのみだ。

それぞれの大陸には大陸にすむ人間の好む思考と言うものが存在する。

西ならば“自由”。

東ならば“集団”。

北ならば“信仰”。

南ならば“調和”。

これがそれぞれの大陸にすむ人間が望み求めるものだ。

グローリアたち西の住人は自分の自由を何よりも尊重するし、その自由が脅かされそうになった時には全力で抵抗する。

と言っても、今はそこまで強固に自由にこだわる人間と言うのも多くはなくなった。

何となく縛られるのが嫌だから。

何となく集団って言うのが肌に合わないから。

何となく自由でいたいから。

そんな理由で生きる人間が今の西の大多数を占めるだろう。

だが、ギルドのトップに収まるような人間は心から自由と言うものを愛しているし、個人個人で持っている自由に対する考え方と言うのももちろん違う。

そんなギルド同士での連合など上手くいくはずはないからだ。


「……何言うてるんや、グローリア。そんなん上手くいくはずあらへんやろ」

「そうだな。だから、テメェは提案と言ったんだ」

「どういうことですか?」

「テメェはテメェが考えた中で一番利があると考えたことを言ったまでだ。テメェは、連合を組むことこそが一番テメェの自由が侵害されないと考える。だが、自由であるお前らにこの考えを押し付けるつもりはない。だからこその提案だ」

「理由を聞いてもいーの?」


今の発言はグローリアらしくないと他の五人は考えていた。

グローリアと言う男は本当に自分がしたいと思ったことは、周囲にどれだけ迷惑が及ぶ可能性があろうと問答無用で実行する。ギルド内であろうとギルド外であろうとそうだ。

そんなグローリアが提案と言って、強制しないと言いだした。

らしくもないグローリアの発言に裏を感じるのは当然と言えば当然だった。

五方向から訝しげな視線を向けられても、グローリアは欠片も動じない。


「理由とは? 連合をテメェが勧める理由か? それとも、テメェが押し付けるつもりはないと言った理由か?」

「両方やな。グローリアらしゅうなくてサブイボ立ってもうたわ」

「ふむ……ならば、前者から言おう。さっきも言ったが、連合を組んだほうが自由を侵害されないと思ったからだ」

「その理由が聞きたいのです。それでは答えになっていませんよ」

「そうだな。同盟とは盟を同じくすると書く。これの意味するところは、相手とある程度は同じことに向かって進まなくちゃいかんってことだ。それに対して、連合ってのは連なり合うって書くだろ?」

「それが、どうしたの?」

「連合なんて言うのは同盟と比べると薄っぺらい言葉なんだよ。ただ、一列になってるってだけだからな。盟も立てて無けりゃ、同じでもなんでもない。もっと端的に言っちまうと、同じ方向を向いてるだけの敵同士だ。利のあるときゃ手を繋ぎ、害となれば繋いだ相手の手を握りつぶす。実にシンプルだと思わないか?」


五人はグローリアの言葉の真意をつかみかねている。

ハッキリ言って、何をグローリアが言いたいのかを理解できていない。

連合を組みたいと言っているのに、グローリアは同盟と比べた場合の連合のデメリットばかりを並び立てている。

意味が解らない。

普通こう言った場合は利を提示して相手に頷かせるのが正しいやり方だ。

だというのに、グローリアはそれを行おうとはしない。

滅茶苦茶だ。まるで行動に一貫性がない。

だが、グローリアの行動の一貫性の無さに驚きながらも、五人は次にグローリアが何を言うのかを期待している。

この男ならば、きっと面白いことを言ってくれるだろうと。


「テメェたちに必要なのは盟じゃねぇ、仲間じゃねぇ、味方じゃねぇ。テメェたちに必要なのはたった一つだけだ」

「そのたった一つってのは何や」

「目的」

「目的……ですか?」

「そうだ、目的だ。テメェたち西は自由を標榜する。その自由を害そうとする馬鹿どもがいる。なら、テメェたちは同じ方向を向けるはずだろう。仲間だなんて妄言はほざかねぇよ。テメェたちは何処まで行ったってライバルであり、敵だ。そんな奴らと手をつなげるはずもないだろう。だが、同じ方向を向くことぐらいはできるはずだ」


何故なら、


「テメェたちが望むのは唯一自由だけだからだ。生きていくうえでは、何かに縛られていなくてはならない? 縛られることで真に感じることのできる自由がある? 何者にも縛られないと言うのは逆に不自由だ?」


ハン。


「知ったことじゃねぇよ。テメェたちが求めるのは、唯々自由だけだ。その自由を害そうとするやつらがいるのなら叩き潰す。テメェたちを縛り付けようとするやつがいるのならぶっ殺す。それだけで十分だろうが」


柄にもなく自分が熱くなっていると言うことをグローリア自身感じていた。

だが、この事だけは譲れない。

自由であると言うことだけは譲ることができない。

西に住んでいるからと言うのもあるだろう。今までずっとこの価値観で生活してきたからとも言えるだろう。

それでも、この考えだけは誰に押し付けられた物でもないとグローリアは胸を張って断言することが出来る。この考えだけは誇ることが出来る。

不自由なんてクソッタレなもんは知ったことか。

ルールなんて知ったことか。

集団意識なんて知ったことか。

ただ、らしくあれ。その者らしくあれ。己らしくあれ。

それだけで、良いのだ。

グローリアは、グローリア自身がグローリアらしくいられなくなるのが嫌だ。

だから、この場にいる人間が連合に反対したとしても、ギルドの全員がこの考えを否定したとしてもただ一人でも自分かららしさを奪おうとする何かと戦い抜くだろう。

自分がらしくあるために。

自分の大好きな奴らがらしく生きるために。

その結果、くたばってもグローリアは笑っていられると確信を持って言える。


「テメェはお前らが反対しても、お前らが下りると言っても、たった一人でも北と東に抗い続ける。従わされるぐらいだったら、らしさを奪われるぐらいだったら、死ぬまで抗って戦い抜いて、前のめりにくたばった方が幾分マシだ」


グローリアの熱が伝わったのか、熱意に押されたのかはわからないが、五人とも黙ってしまっている。

さっきまでは熱心に設計図を書いていた鳶すらもペンを置いている。

そんな五人の様子を眺めながら、グローリアは静かに腰を下ろす。

言いたいことも、言うべきことも言った。

これを判断するのは各々だ。これ以上にグローリアが何かを言う必要もないだろう。何かを言う権利もないだろう。

それぞれが考える中、笑い声が聞こえた。

笑い声の出所はスペンサーだった。


「カカカカ! いつもいつもおもろいこと言うやないか、グローリア! 本気で一人でも北と東と戦い抜くいうんか!?」

「もちろんそのつもりだ」

「死ぬことになってもか?」

「自由の無い生などテメェは認めない。自由を奪われて生きるぐらいだったら死んだ方が幾分マシだ」

「カカカ! お前らしいやないか!」

「それに、何故テメェが死ぬと決めつける? テメェ一人で北と東を叩き潰すことが不可能だとでもいうつもりか?」


スペンサーは呵々大笑と大きな笑い声をあげながら、膝をバンバンと叩く。

そして宣言する。


「……く、クカカカカカ! おもろいのぅ、グローリアは。……えぇやろ。ワイらもグローリアの言う、連合ってやつに一枚噛もうやないか!」

「本気か? テメェで言っといてなんだが、勝率は低いと思うぞ?」


グローリアはやけになってこの場の感情だけでスペンサーが決めたのではないかと思い、問い返す。

それもまたスペンサーの自由な選択の結果だろう。

グローリアが問いかけること自体が無礼な行いなのかもしれない。

だが、この連合は最悪気に入らないと言って、西の大手ギルドから叩き潰される可能性すらはらんでいる。

そんな重要なことをこの場で決めてもいいのかと言う考えがグローリアにはあった。

リスクを計算できないほどスペンサーは愚かな人間ではない。

それでも、この豪放磊落な男は勢いで自分の人生を決めてしまうときがある。

そんな友人がグローリアは心配になったのだ。

だが、そんな心配をするグローリアにスペンサーは片眉をあげて答える。


「なんやなんや? あないなカッチョ良いこと言っといてワイを混ぜへん気か? それとも……ワイを馬鹿にしとるんか?」


スペンサーの体から漏れだす殺気は本物。

本当に不愉快だと思っていることがよくわかった。


「……ワイだって西の住人や。当然のように自由が好きや。グローリアと同じように、縛り付けられるのなんざクソ喰らえって感じやな。ま、グローリアの不安もわかるで? ワイがいつも通りに感情論で決めた思てんねやろ?」

「あぁ。感情は毒だ。感情に流されては後悔することになる」

「ド阿呆。感情は起爆剤や。感情って言う油で小さく縮こまりたがる心を燃やすんや。それに……ワイは生まれてこのかた後悔なんざしたことないわ。後悔言うんならな、こんなおもろい馬鹿をみすみす死なせた方が後悔するわ。せやから、ワイも混ぜろや! こないなおもろいこと放っておけるかい!」


そう言い切ったスペンサーはまた楽しそうに大きく声を上げて笑い出す。

その笑い声には確固たる意志が宿っていた。意外と頑固な一面のあるスペンサーの石を曲げることはグローリアにはできないだろう。

だからこそ、グローリアはスペンサーを説得することをあきらめた。

……いや、寧ろスペンサーがこの連合に参加すると言ってグローリアは安心していたのかもしれない。

スペンサーがいればグローリアも途中で折れずに済むだろうから。


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