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Lord to Gloria  作者: 頭 垂
第三章 連なり合う
37/49

BAKU☆SAN

もうそろそろストックが切れそうになっているので、この章の途中あたりから隔日投稿するようになると思います。

これからもよろしくお願いします。

「……マジかよ」


リテラエがギルドホールでため息をつく。

目の前にあるのは大量の書類。それらには、一枚も欠かすことなくびっしりと文字が書かれていた。

それはリテラエが個人的に集めた情報。

正確に言うのならば、たった一つの情報の真偽を確かめるために収集した情報の山だった。


「……ありえん。だが、実際にありえている、か。この世とは実に不可思議にできているものなのだな」


多角的に大量に集めた情報の全てがリテラエの考えを否定し、情報が真実だと言うことを証明していた。

その情報と言うのは、国家間の大規模同盟成立。

西でもギルド同士が同盟を組むと言うことはある。

だが、今回の話はそんな小さな規模ではない。

最悪、大陸規模の戦争に発展する可能性だって低くはない。……いや、大陸間の戦争を行うために同盟を組んだ可能性も高いのだが。

同盟を組んだのは四つの国家。

北大陸全土にまたがる主教国家『ルリジオン』。

東大陸北側を領土とする龍人種による単一種族国家、『閂』。

東大陸東側を領土とする獣人種による単一種族国家、『血煙』。

東大陸南側を領土とする吸血種による単一種族国家、『常夜』。

その四つの国が同盟を組んだと言うのだ。

四か国を総合した戦力は世界最高だろう。それに、戦線に出せる人員だけでも西と南の全戦力よりも圧倒的に多い。

北が東のどこかの国と同盟を組むぐらいだったら想定内だった。

だが、東の三国が同盟を組んだと言うのは想定外だ。

東の三国は、常に戦争をしているような血の気の多い国家であり、仲は最悪に近いと言う話をよく聞く。

その三つが同盟を組むなんて言うのはリテラエでなくても予測できなかっただろう。

「どうしようもねぇだろ……。南は何とかできるだろうが……西は無理だろうなぁ。戦力が足りなさすぎる。こんなんやってられるかってレベルだな」

西には国家と言うものは存在しない。

あるのは小さな町といろんな場所に点在するギルドと言う組織だけ。

ギルド同士で同盟を組むことはあっても、そこまで大規模なものになることは少ない。

リテラエたち《セレーノ》だって、現状五つのギルドと同盟を組んでいるわけだが、国なんて言うものと渡り合えるほどの規模ではもちろんない。

《セレーノ》も含めた六つのギルドの総人員を合計しても、二百にも達さない。

そんな状況下で西が東と北の同盟となんてやっていけるはずがない。

情報の真偽を確かめる途中で手に入れた情報によると、その同盟を組んだ目的がぼんやりとだが掴むことが出来た。

東の三国はシンプルに領土的野心。東の中で争っていても埒が明かないと言うことにようやく気が付いたのだろう。

北は南の天子『皇』を殺すこと。自分たちの信奉している神こそが唯一にして絶対だと思っている北の奴らにとっては、神の直系なんて言われる、現人神『皇』の存在は邪魔で仕方がないのだろう。

リテラエの予測では、最初に動くのは東の三国の方だ。

余っている一国を潰して領土を広げた後は、西に攻め込んでくることだろう。

西に来るのは、早くて二月後。もっと短くなるかは東の最後の一国がどれだけ善戦してくれるかにかかってくるだろう。

最後の一国である『双翼』が勝てるなんてリテラエは考えていない。

戦力的にも種族能力的にも他の三国にあっさりと磨り潰されて終わることだろう。

無駄に期待しないこと。そして、客観的に現実的に世界を観測すること。

その二つが、情報を整理するうえで必要なことだ。


「ま、西もなんか手を打たないとどうしようもないかもな……。あっさりと磨り潰されちまうぞ」


リテラエは記憶にあるすべてのギルドの大体の戦力と規模を思い出す。

単純に考えて、西や南がその東と北の連合に数で勝てるはずがないのだ。数ではどうやっても勝てないのは昔からわかっていることだ。

その代わりと言っては何だが、西と南は個の戦力では東と北を圧倒している。

それを鑑みて計算すれば、ギリギリ五分。正確に言うと、西:南:東:北で1:4:2:3ってところだ。

一番西の戦力が小さく設定されているのは、西には数がいないと言うことと、それ以上に戦闘特化タイプが少ないと言うことにも起因する。すべてのギルドが戦闘系という訳でもない。生産系ギルドだって、探索系ギルドだってあるからだ。

即座に磨り潰されることこそないだろうが、後半厳しくなりそうだ。

それにしても、相手が二正面作戦をしてこなければ潰されると言うこととイコールだ。

どうしようもない気しかしない。

リテラエが頭を抱えていると、グローリアが奥から出てきた。

珍しいことに、そばに月夜の姿はない。そのことが直接的な理由かどうかはわからないが、グローリアは機嫌が悪そうにしている。


「神妙な面しやがって。もっと明るい顔してろ」

「そっちこそ。いつにもまして不機嫌そうな面だな。何かあったのか?」

「なにもねぇ。暇すぎて体が芯から腐っていきそうってぐらいだ」

「……仕事が来ないからねぇ。厄介ごとの種はいくらでも舞い込んでくるんだがね。依頼が来ないのばっかりはどうしようもない。小規模ギルドだしね」

「面倒事って何だ?」


口を滑らしたとリテラエは慌てて自分の口を押える。

目の前にいるのは面倒事を厄介ごとにし、それを周囲に飛び火させることにたけた天才。

と言っても、今回に関して言えばグローリアに言わないわけにもいかない。

《セレーノ》の進む先を決定するのは究極的なところグローリアだし、それ以外に決定権が及ぶようなことは誰も望んでいない。

ため息を一つついたリテラエはグローリアに今まで考えていたことを話す。

話を全部聞き終えたグローリアはため息を一つつく。


「面倒くせぇな」

「だろ? だけど、何も手を打たないなんて選択はできない。そうなったら西は磨り潰されるだけだからね」

「その情報はどの程度まで広がってんだ?」

「一般にはまだ。だが、広まるのも時間の問題だろうね。大体のギルドには伝わっていると考えていいと思う。今回は裏を取るのも簡単だった。ってことは、それだけ知れ渡ってるってことだろうからね」

「ふむ……」


グローリアは考える。

どう考えてもおかしい。もっと後のはずだ。まだまだそんな面倒くさいことは起こらないはずだ。

だが、現にリテラエの前にある書類に視線を落とすと嘘ではなさそうだ。

本格的に面倒くさいことに……手を離れたらしい。


「リテラエ。一週間で集めろ」

「誰を? 主語がなくちゃわからんよ」

「ウチと同盟組んでる全ギルドのトップをここに集めろ。テメェの名前使っても構わん。どうにかして早急に集めろ」

「……マジで?」

「あぁ。うちだけであーだこーだとほざいていてもどうしようもないだろ。幸い、うちの同盟ギルドはそこまで愚かではないはずだからな」

「……えぇ~。マジで面倒くさいんだけど。と言うか、その五つを同時に集めていいのかい?」

「? 何か問題でもあるのか?」

「……あぁ。お前はそう言う奴だったね。わかったよ」


リテラエは当分また睡眠時間が削られるんだろうなと思っていた。

確か、今うちにあるマジックレターは五……いや六かな? 何とか足りるだろう。

ため息をつくリテラエを放って、グローリアはギルドホールから外に出る。

最悪なことに、太陽が隠れて雲が出始めていた。


「……ん?」


よく見てみると、遠くの空高くに何か高速で動くものがいる。

グローリアの目で確認できないのなら、その飛翔物は相当な高度を飛んでいるのだろう。

それを視認するために、目を細めた瞬間。その飛翔物から何かがパージされた。

そのパージされたものは飛翔物の持っていた勢いのまま、こちらに近づいてくる。声を背後に置き去りにするような圧倒的なスピードで、《セレーノ》のギルドホールに。


「きゃうっ」


声がグローリアの横を通り過ぎたと思った時には、グローリアの斜め後方から大きな破砕音が響いていた。

グローリアが辛うじて目視できる程度のスピードで、音を置き去りにするほどの勢いだ。

そんな勢いで叩き付けられたら、如何に彼女と言えども無傷では済まないだろう。

そして、叩き付けられた壁も。


「ノォォォォォォォォォォーーーーーーー!」


ギルドホールの中からはリテラエの悲鳴が聞こえてくる。

グローリアが振り向いてみると、ギルドホールの入り口横の壁は見るも無残な姿に破砕されていた。

穴から中をのぞいてみると、いくつものテーブルが粉々になってしまっている。

薙ぎ払われた先を見てみると、女が一人ひっくり返っているのが見えた。

酷い惨劇を目の当たりにし、崩れ落ちてさめざめと涙を流すリテラエの横を通って、ひっくり返っている女の横まで行ったグローリアは、彼女に声をかける。


「ダイナミックだな。チスパ」

「ニャハハ……。失敗失敗。着地失敗しちゃったよ」

「あんな勢いで来て無傷だってのにテメェは驚きだよ。お前は化け物か」

「ひっどいなぁ。ウチはただの空を愛する一人の人間だよ」


ひっくり返った状態から体勢を戻そうともしないままに平然とグローリアと会話をしているのは、快活そうな印象を覚えさせる女だった。

女は体勢を戻して、床に座り込みながら胡坐をかく。突き抜けるような空色の髪は高い位置で一つにまとめられていてポニーテールにされている。着ているのは長めの白いシャツに赤のホットパンツ。そのシャツには左手の袖が無い。腰の辺りでシャツが縛られていて、白い腹とへそが見えている。へその左横に二つの翼が交差していると言うタトゥーが彫られている。特徴的な長い笹帆耳がピクピクと揺れていた。

あんな勢いで壁を突き破ったと言うのに、彼女の体には擦り傷の一つもついておらず全くの無傷だ。

彼女の名前はチスパ・アルコン。《セレーノ》と同盟を結んでいる五つのギルドのうちの一つである、《天空あめそら》のトップである空守だ。空を愛し、空と共に生き、空と共に死すことを目的に掲げる彼のギルドのトップであるチスパも度を越した飛翔愛好家だ。

ハッキリと、オブラートに包まずに言ってしまうと空フェチの変態と言うことになる。


「まぁ、お前の化け物ぶりはよくわかった」

「だから、化け物じゃないって」

「それについて論じるのはまたいずれな。……それはともかくとして、この惨状をどうするつもりよ」

「う゛……それは……」


グローリアが背後を指し示すとチスパは言葉を濁らせた。

グローリアの背後にはチスパがもたらした酷い惨状が残されている。

粉々に砕け散ってしまっているいくつものテーブル。削られた床。大口を開けている入り口横の壁。そして、頽れながら涙を流しているリテラエ。

この惨状を自分が起こしてしまったと言うことはしっかりと自覚できているのか、チスパは言葉を濁らせる。

流石にこれは謝罪だけでは済ませられないだろう。

と言うか、リテラエがその程度では済ませないだろう。

グローリアたち《セレーノ》とチスパたち《天空》は対等の同目を結んでいる。

だからこそ、リテラエは修繕費用の負担なりなんなりを要求することだろう。


「弁償してくれんのか?」

「ウチがやったことだから弁償したい気はあるんだけど……」

「けど?」

「うちの財政も火の車だからねぇ……」


チスパが遠い目をする。

《天空》に所属しているメンバーたちは全員が空に関する異能を持っている。

そんな《天空》のメインの仕事は荷物の運搬や人員の輸送である。

需要は少なからずあるジャンルではあるが、大規模のギルドや商人は個人的な輸送手段や移動手段を持っているものだ。

結果として大口の顧客を掴めない《天空》の財政は火の車なのだ。


「なら、何でこんなことしやがった。それ以前に、今は午前だろ? どうやって空飛んできやがった」

「それはねぇ、うちの副団長から輸送してもらったんだよ。ほら、ウチたちだって空を飛ぶときは羽なり翼なりで推進力つけなきゃ飛べないじゃん? だから、翼の無い状態で飛んだらどうなるかな~……って」

「この様だが……何か言いたいことはあるか?」

「反省してます……」


シュンと項垂れる。

だが、項垂れたからと言って壊されたテーブルが修繕されるわけではないし、謝罪したからと言って起こったことがなくなるわけでもない。

それに、背後のリテラエが泣き止んでブツブツと呟き始めている。

流石にこのままでは、またリテラエが発狂してしまうだろう。


「どうするつもりだ? チスパ・アルコン」

「…………どうすればいいのかな?」

「お前で考えろ。テメェから一つアドバイスするとしたら、このままいったらうちの馬鹿が発狂しちまうからさっさとどうにかしたほうが良いってとこだな」

「う゛……リテラエ君そんなに今ヤバいの?」

「常時ヤバいことはヤバいんだがな。さすがに壁ぶち抜かれたのは初だしな。たぶん、脳の処理が追いついてないんだろうよ」

「……できる範囲で片付けるよ」

「それでいい。何もしなくて悩んでるよか幾分マシだ」


チスパは立ち上がると、残骸の片づけを始めた。

グローリアはその程度で勘弁してやろうとも思っているが、これ以上は財政を管理しているリテラエの領分でグローリアの口出しできることでもないだろう。


壁がな



一応、三章ということになっていますが、副題は決まっていないので、そのうちに書き換えることになると思います。

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