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Lord to Gloria  作者: 頭 垂
第二章 機械バカと愚者と
36/49

抱き枕

短いです

グレゴールと会ってしまって、戦闘になったことを除けば、後は特に何もなかった。

道中で最大級に面倒くさいことが起こったせいで、最後の帰り道で鳶の技術知識を狙った馬鹿どもが襲ってきたことなんて語る気も失せるぐらいだ。

ウィースに戻った後に、正式に《セレーノ》と《機甲の花園》は同盟を組むこととなった。

これで《セレーノ》の同盟ギルドは五つになったわけだ。

《セレーノ》と同盟を結びたいと言うギルドは、どこも他所との関わりを持ちたがらない孤独主義のようなギルドが多いのは何故なのだろうか?

良くわからない。

同盟を結び終えた後は、一日《機甲の花園》で戦闘の疲れを取るための休息を行い、次の日にカイルムに向けて出発した。

そして、行きと同じく一週間かけてカイルムに戻ってきた。


「ただいま。リラ」

「おかえり、ロア。今回は予定通りに返ってこれたみたいで安心したぞ。……また前みたいになったら死ぬしかなかっただろうからな」


グローリアがギルドホールに入ると、リテラエが出迎える。

少し合わない間に、少しだけ顔色その他は良くなっているようだ。


「それで、どうだった? 依頼のほうは」

「別に。少し《十二使徒》と喧嘩したぐらいだ。特に変わったことはなかった」

「何だ。その程度……ん? 今、なんて言った?」

「『ちょっと《十二使徒》と喧嘩したぐらいだ。特に変わったことはなかった』」

「《十二使徒》と喧嘩したぁ!? それは十二分に大事だろうが!」

「問題ねぇよ。テメェは死んじゃいねぇし、テメェ以外にも死人は出ちゃいねぇ。けが人はテメェとウルヴァーンだけ。戦果は上々だろう」

「……ウルヴァーンが怪我したのか? それに、お前も」

「おう。両腕を粉々にな。俺のほうは右腕を数か所の骨折、全身に打撲。そんなところだ。特に問題はない。ウルヴァーンの奴は後でイツマのところに行かせんとな」

「ロアのほうも十二分に重症じゃねぇか……」

「そうか? まぁ、テメェは何とでもするさ。ウルヴァーンはさっさとイツマのとこに行っとけ」

「嫌だ! マジで嫌だ! イツマに直されるぐらいだったら、当分このままでいい!」


グローリアがウルヴァーンに話しかけると、ウルヴァーンは本気で拒否する。

何かウルヴァーンはイツマに対してトラウマでも抱えているのだろうか?

だとしても、イツマの治療は受けてもらうが。ウルヴァーンと言う戦力を無駄に休ませて、遊ばせていられるほどに余裕のあるギルドではないのだ。


「……ウルヴァーンの両腕を破壊したのは?」


真剣なトーンで聞いてくる。

リテラエもウルヴァーンの『才能』は知っている。

だからこそ、ウルヴァーンの両腕を破壊した人物について知りたいのだろう。


「今回あった《十二使徒》のグレゴール・マクラミンだよ」

「『轟砕神狂』か……。あれが相手だったら分が悪いか。腕がもげなかっただけでも上々だと考えなくてはな」

「…………次こそは完璧に耐えて見せる。俺は『盾』だからな」


静かにウルヴァーンが闘志を燃やしている。

いつも静かで落ち着いているウルヴァーンが感情を表に出すのは珍しい。

戦闘中は荒々しくなることもあるが、それを日常に引っ張るのはウルヴァーンとしてはとても珍しいことだった。

それほどまでに腕を両方とも壊されたのが気に入らなかったのだろう。

その意識改善をうれしく思ったグローリアはウルヴァーンを応援することにした。


「ガンバレよ。《十二使徒》と同レベルまでなるのは大変だろうがな」

「わかってる。それでも、やるしかない。こんなところで立ち止まってられる程、俺は暇じゃねぇし」

「なら、さっさと両腕は治さなくてはな」

「う…………わかったよ」


反論することができないウルヴァーンは背中から雲を放出しながら、中に入っていく。

本当にイツマの下に行くのが嫌なようだ。

ウルヴァーンがいやがるようなら、グローリアが無理矢理に連れて行くつもりであったが、そうならなくてホッとしている。

楽だし。

と言うか、片腕だけでも使えないと日常に生活が出るからな。

その後も、座って向き合いながら、今回の依頼についての細やかなことをグローリアとリテラエで話し続ける。月夜はグローリアの後ろにたたずんでいるが、もうすでに飽きが来てしまったらしいユニコはご飯食べてくるとだけ言い残して中に消えてしまっていた。

ある程度、話に区切りがついたところで、郭がギルドホールに顔を出した。


「おかえりなさいませ。グローリア様。今回はお早いお帰りのようですね」

「特にイレギュラーも生じなかったからな。強いてイレギュラーを上げるとするのならば、ウルヴァーンの両腕が粉々になったことぐらいだ」

「まぁ。それは大変ですね。今は何処にいるのですか?」

「あぁ、それは……」


グローリアが答えようとしたところで、中から大きな悲鳴が聞こえてきた。


「マジで止めろって! 治療だけで良いから!」

「え? この治療はただじゃないよ?」

「なら、金だったら払える範囲で払うし、俺にできることだったら何でもするから」

「何でも? なら、このまま僕の薬物投与実験と解体実験に付き合ってよ」

「藪蛇だった!」

「大丈夫。死にはしないから。それ以外の面白いことはあるかもしれないけれど」

「そう言う問題じゃねぇ! それに死ななきゃ良いって問題でもねぇ!」


どたばたと走り回るような音が遠ざかったり近づいたり。

聞こえてきた声と音で察しがついたのか、郭は優しく微笑む。


「ウルヴァーン君も大変なようですね」

「しょうがないだろ。うちのギルドで治癒系はイツマしかいないんだから」

「それにしても、イツマ君もウルヴァーン君にはとても懐いていますよね。何故なのでしょうか?」

「さあ? テメェと訓練するたびにボロボロになってるからな。それに、ウルヴァーンは『才能』もあって頑丈だ。体の良いモルモットだとでも思ってんじゃねぇか?」

「クスクス。そうなのでしょうね」


口元を押さえて、淑やかに郭は笑う。

そして、チラリと月夜に視線を向ける。視線を向けられた月夜は言い知れぬ不安感に襲われて背筋を震わせる。


「ところで、グローリア様? 一つお願いしてもよろしいでしょうか?」

「? 何だ?」

「旦那様の愛用している『抱き枕』をおひとつお借りいたしてもよろしいでしょうか?」

「抱き枕? そんなものテメェは持っていたか?」

「一晩だけでよろしいのですが……」

「ま、良いぞ。明日になったら返せよ」

「了解いたしました。……それでは、月夜? 行きましょうか?」


……あぁ、抱き枕と言うのは月夜の事だったのか。

確かにグローリアはいつも月夜と共に眠っているし、たまに無意識下で抱きしめてしまうときもあるので、抱き枕と言えなくもない。

となると、今夜は誰と一緒に寝ようか?


「……郭。何で?」

「あなたは約束を破ったじゃない」

「いや、でも、あれは……突然依頼が入ったからで、私悪くな……」

「言い訳しないの。今夜は私と一緒に寝るの。良い?」

「良いも悪いも、私は旦那様と一緒に……」

「たまにはテメェのいないところでゆっくりするのもいいだろ。テメェのほうはテメェで適当に何とかするさ。ここにいれば、『抱き枕』には困らないしな」

「旦那様!?」


グローリアの言葉に月夜がわかりやすく狼狽する。

自分の身を案じてくれるのは、月夜としてもとてもうれしい。だが、それはもっと別のタイミングでしてくれた方がよかった。

月夜は郭の表情を窺う。


「ん?」


にっこりと微笑んではいるが、目は全く笑っていない。

このままでは一晩月夜が郭のおもちゃにされるのは回避しきれないだろう。

どうにかして言い訳を考えようとする月夜に郭が追い打ちをかける。


「……私のことが嫌いになったの?」

「う゛……そう言うわけじゃないけど」

「良かった! なら、一緒に行きましょうか!」

「あ゛あ゛ーーーーー……」


月夜は郭に引きずられるようにして、中に入っていった。

最後の最後でリテラエにも救いを求める視線をおくってきてはいたが、リテラエにはどうすることもできずに首を横に振る。

月夜の背後から月夜の姉がもっと強い視線をおくってきていたのだ。

リテラエに何かできようはずもない。

ギルドホールに残ったのはリテラエとグローリアの二人だけ。

グローリアは、ぼぅっとしながら中から聞こえる喧噪の音を静かに聞いている。


「……この喧騒が、とてもウチらしいな」

「……全くだ」


その言葉はリテラエも納得するものだった。

だから、リテラエは深く頷いてグローリアに同意した。





ちなみに、その日の『抱き枕』は『機構の花園』で一緒に寝た時に想像以上におさまりがよかったロリアーネだった。

最初は嫌がっていたようだったが、最後はぐっすりと眠れていたようだ。


第二部完?

まだまだ続く……といいなぁ


頑張って書きます

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