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第4話 「初めてのお姉ちゃん」

第4話を公開します。



20150521公開

20150523タイトル変更

 鈴木美羽が目を覚まして最初にした事は、母親がどこに居るのかを確かめる事だった。

 母親はすぐ傍に居た。

 だが、彼女が見上げる母親の表情はいつもと違っていた。


「おかあさん? おかあさん・・・ おかあさん、みうのこえがきこえないの?」


 美羽の呼び掛けに母親は反応をしなかった。

 彼女の幼い思考能力は事態を把握し切れなかった。

 自分が呼び掛けても美羽の事を無視するという経験が無かったのだから当然だった。

 もう一度悲しみが襲う前に声が聞こえた。

   

「私は宮野留美というけど、あなたのお名前は何というの?」


 美羽は知らない女性の声がした方に身体を向けようとしたが、途中で動けなくなった。


「あ、無理にこっちに向かなくてもいいわよ。服で身体を縛られているから。それでお名前は?」

「みう・・・」

「みうちゃんか。いい名前ね。可愛いし、似合っているわ」


 そう言ってくれた声は優しい気持ちがこもっていた。


「うん。みうもみうのなまえ、すきだよ」


 久しぶりに美羽の顔に不安、悲しみ、恐怖以外のものが浮かんだ。


「でも、おかあさんがみうのことをわすれたみたいなの・・・」


 美羽の言葉に答えた声は相変わらずに優しさに満ちたものだった。


「みうちゃんはお母さんの事が好きでしょ? お母さんもみうちゃんの事を好きに決まっているわ。だってみうちゃんは可愛いもの。でも、今のお母さんは赤ちゃんにもどっちゃったの。みうちゃん、妹は居る?」

「いない・・・」

「そう。なら、妹が出来たと思って、優しくして上げて。その代りに私がみうちゃんのお姉さんになって上げる」

「おねえさん?」

「うん、お姉さん。だってお母さんは居るもの。お母さんが赤ちゃんじゃ無くなった時に2人もお母さんが居たらおかしいでしょ?」

「おかしい? わらうってこと?」

「えーと、なんと言えばいいかなぁ・・・ うん、お母さんはお母さんだけなのに、もう1人お母さんが居たらお母さんが困っちゃうでしょ? どっちがお母さんか分かんなくなるって言うか・・・」

「へんなの」

「そう、変なの!」

「でも、みう、おねえちゃんがいないから、やっぱりへんなの」


 美羽の後ろで何かが動いた気配がした。

 そして、真上に顔が現れた。

 母親よりも若い。

 だが、美羽から見れば十分に大人に見える女性の顔だった。

 その女性は笑顔を浮かべて言った。


「お母さんが赤ちゃんになったんだもの。お姉ちゃんがいきなり出来ても変じゃないわ」


「ほんとうにへんじゃない?」


 女性は顔を近付けて囁いた。


「みうちゃんさえ良ければ、変じゃないわ」

「わかった。おねえちゃ・・・ん」

「おねえちゃんといもうとで、赤ちゃんのお世話をしようねえ」


 美羽にいきなり姉が出来た瞬間だった。




 彼女の長い人生で一番最悪だった瞬間は、こうして幕を閉じた。

如何でしたでしょうか?


 美羽嬢の不幸は底を打ちました(^^)

 かと言って、一気に浮上する事は無いのですが(^^;)


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