第5話 「初めてのありがとう」
第5話を公開します。
20150525公開
鈴木美羽にいきなりの押し掛け姉ができた数分後だった。
男の人の声が聞えて来た。難しい言葉ばかりなので美羽にはほとんど理解出来なかったが、その声が聞こえて来ると、周りの雰囲気がいきなり変わった。
周囲に居る大人たちが低く抑えた声で言葉を発し始めた。
といっても、幼稚園児の美羽にとっては、半分以上は意味が分からない言葉だった。
だが、美羽から見える範囲の大人たちの顔は先ほどよりも暗くない。
むしろ喜んでいる様な気がした。
「おねえちゃん、どうしたの? だいじょうぶ?」
周りの大人と違って、先ほど【おねえちゃん】になったばかりの女性の顔には痛みを我慢しているかの様な表情が貼り付いていた。
「心配してくれるの? みうちゃんは優しいね。でも、出来たら耳をふさいで欲しいんだけど、無理よね?」
「どうして?」
美羽には【おねえちゃん】の言う事の意味が分からなかった。
だが、何かを恐れている事は分かる。
「もうすぐ、警察の人達が来てくれるけど・・・」
【おねえちゃん】はそこまで言って口ごもった。
「たすけてくれるの?」
美羽の声には嬉しさが半分混じったが、目の前の【おねえちゃん】はその美羽の言葉に首を振った。
「頑張ってくれるけど、無理と思う。だから、美羽ちゃん、もし、いつか警察の人に会う事がお礼を言ってあげて。『あの時は頑張ってくれてありがとう』って」
「??? うん、分かった」
この【おねえちゃん】は母親と違って、美羽に難しい事を平気で頼んで来る。
でも、まだ幼い美羽には上手く表現出来ないが、美羽の事をちゃんと認めてくれているような気がした。
だから、真剣な表情になりつつも少しだけ笑顔が混じってしまった。
その美羽の表情に一瞬だけ笑顔を浮かべた【おねえちゃん】だったが、すぐに真剣な顔に戻ると更に言葉を続けた。
「これから、美羽ちゃんが聞いた事の無いような大きな声や音がするけど、心配しないで。美羽ちゃんとお母さんは私たちが守るから」
『私たち』と言った時に、【おねえちゃん】は後ろを振り返った。
美羽も見たかったが、身体が動かない。
そんな美羽を励ますかのように何人もの声が後ろから聞えた。
「留美の言う通り。守って上げるからね」
「うん、守るから・・・」
「まあ、そう言う事だから安心して」
「みうちゃんだったっけ? 俺たちも頑張るから、君も頑張ってくれ」
「賢太郎、偉そう」
「いや、幼稚園児になんて言葉を掛けりゃあいいか、分からん」
後ろから聞える声は小さかったが、ちゃんと美羽の耳に届いた。
美羽はこの騒動に巻き込まれてから初めての言葉を思わず口にした。
「ありがとう・・・・・・」
如何でしたでしょうか?
幼稚園児の視点で書くのがこんなに難しいなんて・・・・・
もっと大きな視点で書ければ、警察(機動隊)の動きなども描写できるのですが、美羽嬢周辺の描写と会話でしか書けないので、思ったよりも苦戦しています(^^;)
不定期投稿と云うよりもゲリラ投稿の様な気がしているmrtkでした(^^)




