第6話 「初めての穴降り」
第6話を公開します。
20150602公開
20150602呼称修正
始まりは叫び声とビンッという高い音だった。美羽は思わず身を竦めた。
直ぐに甲高い音が響く。
『え? なんのおと?』
そんな美羽に構わずにしばらくすると、また同じ音がした。
今度は先ほどと違って、甲高い音だけでなく大人の男の人が叫ぶ声が聞こえた。普段聞く事の無い声だった。
少し離れたところで誰かが大声で叫んだ。
ちょっとした間が有った後で、大きな音が聞えて来た。
初めて聞く様な大人の叫び声が何度も何度も聞こえて来る。
美羽の頭はパニックに染まった。
幼稚園児の彼女にとって、聞こえて来る音の一つ一つが“こわい”音だった。
中でもパンッという音が聞こえる度にビクッと体が竦む。
【おねえちゃん】が言っていた通りに耳を塞げるものなら塞ぎたい。
そんな美羽の顔に何かが落ちて来た。
それは美羽の頬に落ちると、スーと頬を伝って止まった。
また落ちて来た。
2度も美羽の顔に落ちて来たものの正体を見ようと目を向けると、美羽の顔の上で【おねえちゃん】が泣いていた。
「おねえちゃん?」
「ごめんね、偉そうな事を言っていたのに・・・」
【おねえちゃん】はそう言うと、一度目を閉じた後、目を開けた。
「でも、もう泣かない。キドウタイの人が頑張っているんだから」
そう言うと【おねえちゃん】は微笑んだ。
しばらくすると、美羽の後ろで男の人の慌てている様な叫び声がした。
「サイルイダンだ! 目を閉じて、息も止めて!」
意味が分からずにポカンとしていると、【おねえちゃん】が声を掛けて来た。
「美羽ちゃん、目をつぶって! 息もいいって言うまでしないで!」
美羽は言われた通りにしたが、悲しいかな、幼稚園児の肺活量では長くはもたなかった。
もっとも、大人の人達も美羽よりは後になったが、同じ目に遭った。
勝手に出て来る涙と鼻水を止める手立ても無いままくしゃみを何度もしていると、さっきまで聞こえていた叫び声がしない事に気付いた。
【おねえちゃん】も気付いたのか、キョロキョロとしていた。
大きな人たちに立たされて歩かされたのはしばらく経ってからだった。
「美羽ちゃん、私は河内唯。ゆいおねえちゃんって呼んでね」
「うん、ゆいおねえちゃん?」
【おねえちゃん】が増えた。
【るみおねえちゃん】のお友達も優しそうな人だった。
「そうそう、ゆいねえちゃんだよ。目は大丈夫? まだしょぼしょぼしてる?」
「うーん、ちょっとしょぼしょぼしてる」
「びっくりしたねぇ? もうゆいねえちゃん、ずーとっ、くしゃみが止まらなかったらどうしようと思っちゃった。くしゃみをしていたら、お話しもできないもんね」
「うん、それはいやだ」
話し相手が増えた事で美羽の心が少し軽くなった。
お母さんは【おねえちゃん】の友達が変な所に行かない様にしてくれていた。
池の底の道を歩いた先に穴が有った。その穴の手前で大きな人が手を縛っていた服をほどいてくれたけど、その大きさな身体と怖い顔に美羽は必死に耐えた。そんな美羽に【おねえちゃん】たちが声を掛けてくれたから、美羽は泣かずに済んだ。
ハシゴは【おにいちゃん】の1人に負ぶって降ろしてもらったが、美羽はこの時、知らなかった。
もう2度と自宅に帰れない事も、お父さんにも、りさちゃんにも、ゆうとくんにも、もう2度と会えない事を、美羽は知らなかった・・・
如何でしたでしょうか?
取敢えず言える事は
美羽ちゃん頑張れ
くらいです(;;)




