第3話 「初めての巨人」
第3話を公開します。
20150519公開
鈴木珠子と美羽の母娘の苦闘は唐突に終わりを告げた。
人々の暴走がいきなり終わったからだった。
娘の美羽をその暴走から守る為に、自分の身体を防壁にしていた母親はしばらくしてから身体を襲う衝撃が途絶えた事に気付いた。
彼女は恐る恐る視線を後ろに向けた。
あれほど必死に走っていた集団は呆然とした表情を浮かべて、前方を見ていた。
その視線の先に在るものを確認したくないという感情に逆らって、珠子は集団の視線を辿った。
そこには5人の巨人たちが居た。
大人でさえその巨人の胸まで届かない程に背が高く、更に横幅もがっしりとしている。
その巨人は木の板を連ねた鎧を身に纏っていた。
日本の戦国時代のドラマなどで見る鎧とは見た印象も違うが、一つだけ決定的に違う点が有った。
その巨人が着ている鎧には返り血がこびり付いていた。
彼らは通せん坊をするかのように両手を広げた。
造り物では有り得ない程に滑らかな生物的な動きだった。
そして、左手に持った槍は血で濡れていた。
「な・・に・・・ これ? ドラマの撮影?」
走って来た集団の後方で悲鳴が上がった。
珠子が慌てて振り返ると後方にも巨人たちが居て、槍を使って何かを刺していた。
振るわれる度に悲鳴が上がるが、すぐに巨人たちの動きが止まった。
逆らったりすれば簡単に命を取られるという事を見せ付けられたのだ。前後を巨人に挟まれた市民たちは身動きが取れなくなった。
「おかあさん、なにがおこってるの?」
「美羽は見たらダメ! お母さんが何とかするから」
自分を見上げて来る娘の表情は恐怖に蒼ざめていた。目からは涙が零れている。
「いい? お母さんにしっかりと抱き付いているのよ?」
「うん、わかった」
なんとしてでも娘だけでも守り通さなくては・・・と気を強く持ちたがったが、しばらくしてから母娘の方にやって来た巨人を間近に見た瞬間に珠子の精神が折れそうになった。
汗と鉄の匂いが混じったような体臭が鼻を衝く。
顔は明らかに東洋人のモノでは無かった。
肌は白く、鼻は大きい。彫の深さを印象付ける眉から目に掛けての段差はテレビなどで目にする白人以上のものがあった。髪の毛は金髪だった。かと言って、どの人種に当てはまるのかも分からない。
こちらと同じ目線になる為にしゃがんだ巨人の視線の先に有るものに気付いた時に珠子の脈拍は跳ね上がった。その視線は娘を捉えていた。
珠子の恐怖が伝染したのだろう。美羽が更に力を込めてしがみ付きながら声を出して泣き出した。
その巨人は立ち上がると、仲間を呼んだ。
英語では無い。どちらかと言えばフランス語ぽいイントネーションだが、フランス語でも無かった。
最初の巨人が槍を美羽に向けた。その槍先を恐怖に苛まれながらも睨みつけていると、呼ばれて近付いて来た巨人の足元が視界に入った。
恐る恐る目を上げて新たな巨人の目を見た。
違和感が珠子を襲った。
そこに在ったのは、意思を持つ人間を見る人間のものでは無かった。
捕らえた獲物を見る人間のものだった。
珠子の精神は、絶望に対する防御策として、彼女の精神を閉ざす事を選択した・・・
如何でしたでしょうか?
珠子お母さんさん、しっかりしてー(><)
美羽ちゃんがピンチなんだからー(><;)
と言う訳で、何が何だか分からない内に幼稚園児の鈴木美羽嬢は唯一の保護者を失いました。
彼女の運命は?
ついでに、あっさりと現実逃避をしてしまったお母さんの運命は?
更には、巨人の正体や目的とは?
その内に分かる筈・・・ 多分ですが(^^;)




