↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モニカ・ハーマン物語~虐げられた伯爵令嬢は、亡き母の秘密と金環眼に導かれて  作者: 紅しょうが


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/80

第72話 学園祭を楽しもう


「それでは、二年A組の皆さん、お願いします!」


教師の声が響いた。


モニカとリリアは、教室の隅に用意されていた大きな看板を手に取った。


今日の二人の担当は、学園祭に訪れた人たちへの呼び込みだ。


「モニカ、行こう!」


「うん!」


モニカが看板を持ち上げる。


すると、隣にいたダンテが看板を見て、ふと口を開いた。


「モニカ」


「はい?」


「その看板は、できるだけ顔より少し高めに持って歩くといい」


「え?」


モニカが首を傾げる。


ダンテは眼鏡を掛けた娘の顔を見てから、窓の外へ視線を向けた。


「今日は天気がいい。日差しが強いからな。看板が顔に影を作ってくれれば、眼鏡だけよりも瞳を見られる可能性を減らせる」


「あ……」


モニカは看板を少し高く持ち上げてみた。


すると、大きな看板の影がちょうど顔にかかった。


「本当ですね」


「ただし、無理をして高く持つ必要はない。疲れたらリリアと交代しなさい」


「はい、お父様」


モニカは頷いた。


これなら大丈夫。


眼鏡と看板の影。


二重に瞳を隠すことができる。


「じゃあ、行ってきます!」


「いってらっしゃい」


ダンテとシルビーに見送られ、モニカとリリアは廊下へ出た。


「二年A組の出し物です! ぜひお越しくださーい!」


リリアが元気よく声を上げる。


モニカも続こうとした。


けれど、いざ大勢の人の前に出ると、少し緊張してしまう。


「……」


「モニカ!」


「は、はい!」


「大丈夫。私と一緒だから!」


リリアが笑う。


モニカも小さく頷いた。


そして、少しだけ声を張る。


「二年A組の出し物です! ぜひお越しください!」


「そうそう!」


リリアが嬉しそうに笑った。


「ちゃんと言えたじゃん!」


「……ちょっと恥ずかしいわ」


「すぐ慣れるよ!」


二人は並んで廊下を歩いていく。


モニカが持つ大きな看板が、ちょうど顔に影を作っている。


そのおかげで、たくさんの人が行き交う中でも、瞳を気にする必要はなかった。


「二年A組って何をやっているの?」


通りかかった生徒が尋ねる。


「教室で楽しめる出し物ですよ!」


リリアが笑顔で答える。


「ぜひ来てください!」


モニカも頭を下げた。


「お待ちしています」


最初は恥ずかしかった呼び込みも、何度か繰り返すうちに少しずつ楽しくなってきた。


リリアと一緒なら、人前で声を出すことも怖くない。


「モニカ、次はあっち!」


「うん!」


二人は笑いながら、次の場所へ向かった。


◇


しばらく呼び込みを続けたあと、交代の時間になった。


「お疲れさま!」


「疲れたぁ……」


モニカは椅子に座って、小さく息を吐いた。


すると、リリアが目を輝かせる。


「ねえ、モニカ!」


「なに?」


「出店、見に行こう!」


「出店?」


「そう! せっかくの学園祭だよ?」


モニカの顔がぱっと明るくなる。


「……行きたい!」


「決まり!」


二人は校庭へ向かった。


そこにはたくさんの出店が並んでいた。


焼きたてのパン。


香ばしい串焼き。


甘い焼き菓子。


果物を使ったお菓子。


あちらこちらから美味しそうな匂いが漂っている。


「わぁ……」


モニカの目が輝いた。


「どれから食べる?」


「えっと……」


どれも美味しそうで、一つに決められない。


「じゃあ、まずはこれ!」


リリアが指差したのは、焼きたてのパンだった。


「二つください!」


「はいよ!」


焼きたてのパンを受け取る。


「いただきます」


モニカは一口かじった。


「……美味しい!」


思わず笑顔になる。


「でしょう?」


リリアも嬉しそうに笑った。


「次はあっち!」


「えっ、もう?」


「学園祭なんだから、いっぱい食べなきゃ!」


二人は次の出店へ向かった。


串焼きを食べ、甘い焼き菓子も食べる。


さらに果物を使ったお菓子まで見つけた。


「これも美味しい……」


モニカは幸せそうに頬を緩める。


「モニカ、まだ食べられる?」


「はい!」


即答したモニカに、リリアが吹き出した。


「ふふっ。いっぱい食べるね」


「だって……どれも美味しいんだもの」


モニカは少し照れながら笑った。


「じゃあ、次はあれ!」


「うん!」


二人はまた別の出店へ向かった。


少し離れた場所から、その様子をダンテとシルビーが見ていた。


「……あんなに楽しそうに」


シルビーが嬉しそうに呟く。


ダンテもモニカを見つめていた。


「今日は朝からずっと笑っているな」


「はい」


シルビーは微笑んだ。


「お嬢様が、あのように楽しそうにされている姿を見られて……本当に嬉しゅうございます」


ダンテも小さく笑った。


「モニカには、こういう時間が必要だったんだろうな」


「そうですね」


二人の視線の先で、モニカが笑っている。


「リリア、次はあれが食べたい!」


「まだ食べるの?」


「だって美味しそうだもの!」


「もう、モニカったら!」


二人の楽しそうな笑い声が、賑やかな学園祭の中に響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。