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モニカ・ハーマン物語~虐げられた伯爵令嬢は、亡き母の秘密と金環眼に導かれて  作者: 紅しょうが


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第50話 アダムの調査

 翌日。


 アダムは王立学園の図書室にいた。


 机の上には、マクホランド王国の貴族名簿が何冊も積まれている。


「ハーマン伯爵家……」


 指で頁を追っていく。


 やがて、目的の名前を見つけた。


 ハーマン伯爵 ダンテ・ハーマン。


 そして、その妻。


 エリン・ハーマン。


「……エリン」


 アダムは小さく呟いた。


 名前だけなら、珍しいものではない。


 だが、あの金環眼を持つモニカの母親だ。


 何か繋がりがあるはずだ。


 アダムはさらに記録を読み進めた。


 ハーマン家の記録には、こう記されている。


 ――十七年前、ダンテ・ハーマン、エリンと結婚。


 ――十年前、エリン・ハーマン死去。


「……十七年前に結婚して、十年前に亡くなった」


 だが、それだけだった。


 出身地。


 実家。


 家名。


 爵位。


 どれも記されていない。


「……おかしいな」


 アダムは眉を寄せた。


 貴族同士の婚姻なら、普通は相手の家名や出身について記録が残る。


 まして伯爵夫人ともなれば、なおさらだ。


 しかし――。


「エリン・ハーマン……」


 それ以上の情報がない。


 マクホランド王国の貴族名簿を調べても、エリンという女性の記録は見つからなかった。


 まるで――。


 最初から、この国には存在していなかったかのように。


「一体、どこの出身なんだ?」


 アダムは椅子の背もたれに身体を預けた。


 昨日のダンテの反応が頭をよぎる。


 モニカの母親について尋ねたとき、明らかに何かを知っていた。


 だが、話そうとはしなかった。


「……やはり、母親に何かある」


 アダムは再び資料へ目を落とした。


 エリン・ハーマン。


 それだけでは、何も分からない。


 それでも、もう一つ気になることがあった。


「十七年前……」


 その数字を見つめる。


 なぜだろう。


 どこか引っかかる。


 けれど、今のアダムには、その理由が分からなかった。


「もっと古い記録を調べてみるか」


 アダムは立ち上がった。


 まだ、何も繋がっていない。


 エリン・ハーマンと、グランディア帝国。


 金環眼と、行方不明になった皇族。


 そのすべてが一つに繋がっていることを、アダムはまだ知らない。


 ただ――。


 この調査を始めたことで、少しずつ運命の糸を手繰り寄せていることだけは、確かだった。

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