第45話 金色の輪
放課後。
「モニカさん、少しお茶してから帰らない?」
リリアが声を掛けてきた。
「いいですね」
二人は園庭の一角にあるテーブルへ向かった。
柔らかな午後の日差しが降り注いでいる。
「今日は気持ちいいわね」
「はい」
二人は向かい合って座り、紅茶を飲みながら話をしていた。
「今日の授業、難しかったわね」
「そうですね。でも、先生がおっしゃっていたところは――」
モニカが楽しそうに話す。
リリアも頷きながら聞いていた。
ふと、モニカが顔を上げた。
その瞬間。
西へ傾き始めた太陽の光が、モニカの瞳に差し込んだ。
「……」
リリアの手が止まる。
「……モニカさん?」
「はい?」
「今……」
リリアはモニカの顔をじっと見つめた。
「どうしました?」
「瞳……」
「私の?」
「ええ」
リリアは少し身を乗り出した。
「……金色の輪が見えるわ」
「…………え?」
モニカの表情が固まった。
「金色……の輪?」
「ええ。瞳の中に、綺麗な金色の輪が……」
モニカは慌てて手で自分の瞳を覆った。
心臓が、激しく鳴っている。
――まさか。
エリンの日記に書かれていたもの。
母の瞳に現れていたもの。
金環眼。
「……リリアさん」
「な、何?」
「このこと……」
モニカは声を落とした。
「誰にも言わないでください」
リリアは驚いた。
「どうして?」
「お願いします」
モニカの顔は、今まで見たことがないほど真剣だった。
リリアはしばらくモニカを見つめた。
そして、静かに頷く。
「……分かったわ」
「本当に?」
「ええ。誰にも言わない」
「ありがとうございます……」
モニカは胸を撫で下ろした。
けれど、頭の中は混乱していた。
――本当に、私に現れたの?
母と同じ金環眼が。
その時だった。
「…………」
少し離れた場所に、一人の少年が立っていた。
アダムだった。
帰ろうとしていたところ、園庭にいる二人の姿が目に入ったのだ。
何か話している。
リリアがモニカの顔を覗き込んでいる。
そして、モニカが慌てたように俯いた。
「……何かあったのか?」
アダムは足を止めた。
その時――。
モニカがふと顔を上げる。
西日が、再びその瞳に差し込んだ。
金色の輪が、はっきりと浮かび上がる。
「…………」
アダムの足が止まった。
息をすることさえ忘れる。
その瞳を、知らないはずがない。
皇族に古くから伝わる、特別な瞳。
金環眼。
「……まさか」
アダムは、モニカから目を離せなかった。
なぜ――。
なぜ、モニカ・ハーマン嬢の瞳に。
アダムの胸に、言いようのない衝撃が走った。
そして、その瞳を見つめた瞬間。
以前から感じていた、あの不思議な感覚が再び胸の奥に広がった。
懐かしい。
どこかで知っているような――。
「……どういうことだ?」
アダムは、ただ立ち尽くしていた




