↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モニカ・ハーマン物語~虐げられた伯爵令嬢は、亡き母の秘密と金環眼に導かれて  作者: 紅しょうが


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/78

第41話 止まっていた成長

 朝。


 モニカは鏡の前で制服の袖を整えていた。


「……あら?」


 ボタンを留めようとして、モニカは首を傾げる。


「また制服がきついわ」


 ついこの間、新しく仕立ててもらったばかりだった。


 それなのに、以前より明らかに窮屈になっている。


「おかしいな……」


 モニカは腕を動かしてみる。


 そして立ち上がった瞬間――。


「……いたっ」


 足に違和感が走った。


 モニカはその場で足をさする。


「なんだろう……」


 少し不思議に思いながらも、朝食の時間になったので部屋を出た。


 ◇◇◇


「お父様」


「どうした?」


 朝食の席で、モニカが口を開く。


「制服が少しきつくて……」


「制服が?」


「はい。それに……」


 モニカは自分の足を見る。


「足も、なんだか痛くて」


 ダンテは一瞬、目を丸くした。


 そしてモニカを上から下まで眺める。


「……モニカ」


「はい?」


「それは……成長痛じゃないか?」


「成長痛?」


 モニカが首を傾げる。


「おそらくな」


 ダンテは少し笑った。


「最近、急に身長が伸びているんじゃないか?」


「そうなんでしょうか?」


「制服がきつくなったのだろう?」


「はい」


「なら、身体が成長している証拠だ」


 モニカは自分の腕を眺めた。


「私……大きくなっているんですね」


「ああ」


 ダンテは微笑んだ。


「少し測ってみよう」


「はい!」


 食事を終えると、ダンテはモニカの身長を測った。


「……やはり、かなり伸びているな」


「本当ですか?」


「前に測った時より、随分と伸びている」


 モニカは嬉しそうに笑った。


「嬉しいです」


「そうか」


 ダンテも笑う。


 その笑顔を見ていると、胸の奥が温かくなった。


 モニカが、健やかに成長している。


 それが何より嬉しい。


 ――だが。


 ダンテの胸には、一つだけ消えない不安があった。


 エリンの日記。


 そこに記されていた、金色の輪。


 金環眼。


 ダンテは、エリンの瞳に現れたそれを何度か見たことがある。


 あの頃は、ただ見惚れていた。


 光を受けると、瞳の中に浮かぶ金色の輪。


 綺麗だと思った。


 まさか、それが皇位継承者の証だなどとは知らなかった。


 もし――。


 モニカに現れなければ、それでいい。


 そう願っている。


 だが、もし現れたら?


 その時、自分はどうすればいい?


 グランディア帝国に知られる前に、モニカを隠すのか。


 その考えが頭をよぎる。


 けれど――。


 ダンテはすぐに首を振った。


 もう、モニカを日の当たらない場所へ追いやるようなことはしたくない。


 十年間。


 自分は父親として、モニカに十分なことをしてやれなかった。


 ようやく笑うようになった。


 友人もできた。


 毎日きちんと食事を取り、今ではこうして身体も成長している。


 そんなモニカから、また何かを奪うことなどできない。


「……モニカを守らなければ」


 小さく呟いた。


「お父様?」


「いや……何でもない」


 ダンテは笑って誤魔化した。


 だが、頭の中にはもう一つ気になる存在があった。


 アダム・フォン・グランディア。


 グランディア帝国の皇太子。


 もしアダムに金環眼が現れたのなら、帝国から何らかの知らせが届くはずだ。


 新聞にも記事が載るだろう。


 だが、今のところ、そのような話は聞いていない。


 ならば――。


 アダムにも、まだ金環眼は現れていないのかもしれない。


 もちろん、まだ十五歳から十六歳という発現の時期の途中だ。


 確かなことは何も分からない。


 それでも、ダンテの胸に不安は残った。


 エリンが残した日記。


 そこに書かれていた、母の秘密。


 そして――。


『モニカを守ってください』


 あの言葉。


 ダンテは、あの日記を閉じた時に決めた。


 もう逃げない。


 もう目を逸らさない。


「エリン……」


 心の中で、亡き妻へ語りかける。


「約束する」


 ダンテは、目の前で嬉しそうに笑っている娘を見つめた。


「今度こそ、私がモニカを守る」


 その決意の奥で――。


 まだ誰にも見えない運命が、静かに動き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。