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モニカ・ハーマン物語~虐げられた伯爵令嬢は、亡き母の秘密と金環眼に導かれて  作者: 紅しょうが


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第39話 お友達との休日

 休日の朝。


 モニカは待ち合わせ場所へ向かっていた。


「モニカさん!」


「リリアさん!」


 待ち合わせ場所に着くと、リリアが笑顔で手を振っている。


「お待たせしました」


「ううん。私も今来たところよ」


 二人は並んで歩き始めた。


「今日はどこから行く?」


「雑貨店に行ってみたいです」


「いいわね!」


 モニカは嬉しそうに頷いた。


 友達と休日に街を歩く。


 それだけのことなのに、胸が弾んでいた。


 雑貨店に入ると、色とりどりの商品が並んでいる。


「わぁ……」


 モニカは目を輝かせながら、棚を見て回った。


「これ、可愛いわね」


「本当ですね」


 二人で商品を手に取っては、顔を見合わせる。


 モニカは小さな髪飾りを手に取った。


「モニカさん、それ似合いそう」


「そうですか?」


「ええ」


 モニカは少し迷った。


 けれど、そっと元の場所へ戻す。


「買わないの?」


「はい」


 そう答えて、また商品を見て回る。


 すると、一枚のハンカチが目に入った。


 落ち着いた色合いで、端には小さな刺繍が入っている。


「……これ」


 モニカが手に取る。


「素敵ね」


「はい」


 しばらく眺めたモニカが、嬉しそうに微笑んだ。


「これ、お父様に買おうかしら」


「お父様に?」


「はい」


 リリアは少し驚いた顔をした。


「きっと喜ぶわね」


「そうだと嬉しいです」


 モニカは大切そうにハンカチを抱えた。


 二人は買い物を済ませ、店を出た。


「次はどこへ行きましょう?」


「お腹、空いてない?」


「少し……」


「じゃあ、食堂に行ってみない?」


「いいですね」


 二人が歩いていると――。


「あら、モニカちゃん!」


 聞き慣れた声がした。


「こんにちは!」


 食堂の女将さんが店先から手を振っている。


「今日はお友達と一緒かい?」


「はい。リリアさんです」


「まあ、可愛いお嬢さんだねぇ」


「初めまして」


 リリアが挨拶する。


 すると女将さんが店の中から包みを持ってきた。


「モニカちゃん、これ持って行きな」


「いいんですか?」


「もちろん。二人で食べな」


「ありがとうございます!」


 モニカは嬉しそうに受け取った。


 リリアは、その様子を呆然と見ていた。


 二人が再び歩き始める。


「モニカさん……」


「はい?」


「今のって……」


「はい?」


「もらったのよね?」


「はい」


「買ったんじゃなくて?」


「はい」


「……」


 リリアは何とも言えない顔をした。


 すると今度は、パン屋の前を通りかかる。


「おっ、モニカちゃん!」


「こんにちは!」


「今日は友達と一緒か!」


「はい!」


 パン屋の主人が店先から顔を出す。


「モニカちゃん、このパン持って行くかい?」


「いいんですか?」


「もちろんだ。まだたくさんあるからな」


「ありがとうございます!」


 モニカは嬉しそうにパンを受け取った。


 リリアは、また固まった。


「……モニカさん」


「はい?」


「また……もらったわよね?」


「はい」


「……」


「どうしました?」


「食堂でももらって、パン屋さんでももらって……」


 リリアが呟く。


 モニカは首を傾げた。


「皆さん、いつも優しいんです」


 モニカは嬉しそうに笑った。


「そう……なのね」


 リリアはまだ驚いている。


 けれど、モニカがあまりにも嬉しそうなので、つられて笑った。


「モニカさんって、街の人たちに愛されているのね」


「……そうでしょうか?」


「ええ。きっとそうよ」


 モニカは少し照れながら笑った。


 ◇◇◇


 楽しい時間は、あっという間に過ぎていった。


「今日は楽しかったですね」


「うん! 私も楽しかったわ」


「また一緒にお買い物したいです」


「もちろんよ」


 二人は待ち合わせた場所で別れ、それぞれの家へ戻っていった。


 モニカが屋敷へ戻ると、ダンテは執務室にいた。


「お帰り、モニカ」


「ただいま戻りました、お父様」


「楽しかったか?」


「はい!」


 モニカは嬉しそうに答えた。


「リリアさんと一緒に、雑貨店へ行ったんです」


「そうか」


「それで……」


 モニカは手に持っていた包みを差し出した。


「これ、お父様に」


「私に?」


 ダンテが包みを開く。


 中から出てきたのは、落ち着いた色合いのハンカチだった。


「……綺麗だな」


「お父様に似合うと思って」


 ダンテはハンカチを見つめ、それからモニカを見る。


「ありがとう」


「はい」


「でも……モニカは自分の物は買わなかったのか?」


「ええ」


 モニカは不思議そうに首を傾げた。


「いるものは、お父様が用意してくれますから」


 ダンテは一瞬、言葉を失った。


 そして、ハンカチを大切そうに握りしめる。


「……そうか」


「はい」


 モニカは嬉しそうに笑った。


「今日は、とても楽しかったです」


「それは良かった」


「また、リリアさんと出掛けてもいいですか?」


「ああ」


 ダンテは微笑んだ。


「もちろんだ」


「ありがとうございます、お父様」


 モニカは笑顔で答えた。


 その笑顔を見ながら、ダンテは思う。


 こうして娘が楽しそうに今日の出来事を話してくれる。


 それだけのことが、今は嬉しかった。

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