第37話 モニカのランチ
昼休み。
モニカはいつものように、中庭のベンチへ向かった。
今日は、いつもと少し違う。
手には、料理長が用意してくれた特製ランチボックスがある。
ベンチに腰掛け、蓋を開ける。
「わぁ……」
思わず声が漏れた。
焼きたてのパン。
香草で味付けされた鶏肉。
彩りの良い野菜。
小さな焼き菓子まで入っている。
「今日も美味しそう……」
モニカは嬉しそうに笑った。
そして、パンを一口。
「……美味しい」
その時だった。
「……あの」
声がして、モニカが顔を上げる。
一人の令嬢が、少し離れたところに立っていた。
「ウェストンさん?」
「ここ、座ってもいいかしら?」
「もちろんです」
令嬢は嬉しそうに隣へ腰掛けた。
「ありがとう、モニカさん」
それから、モニカのランチボックスを見つめる。
「……すごい!」
「え?」
「そんなに食べられるの?」
モニカは目を丸くした。
「はい」
「それ、一人分よね?」
「そうです」
「すごいわ……」
リリアは驚いた顔でランチボックスを眺めている。
「私、食べることが好きなので」
モニカは少し照れながら答えた。
「ふふっ。そうなのね」
「はい」
「なんだか、モニカさんらしいわ」
そう言って、リリアは笑った。
モニカもつられて笑う。
「ウェストンさんも、お昼ご飯は?」
「持ってきているわ」
リリアが自分の籠を見せる。
「よかったら、一緒に食べませんか?」
「ええ、ぜひ」
二人は並んで昼食を始めた。
「ところで……」
リリアがパンを食べながら口を開く。
「モニカさんって、いつもここでお昼を食べているの?」
「はい。静かなので」
「私もここ、好きかも」
「そうですか?」
「ええ」
リリアは少し迷ったようにしてから、モニカを見る。
「ねえ、モニカさん」
「はい?」
「私のこと……リリアって呼んでくれない?」
「え?」
「ウェストンさんって呼ばれるの、ちょっと寂しいもの」
モニカは目を瞬かせた。
「でも……」
「嫌?」
「いえ!」
モニカは慌てて首を横に振った。
「嬉しいです」
「じゃあ決まりね」
リリアが嬉しそうに笑う。
モニカも、嬉しそうに笑った。
「……リリアさん」
「うん」
「これからも、一緒にお昼を食べてもいいですか?」
「もちろんよ、モニカさん」
二人は顔を見合わせて笑った。
モニカは、もう一つパンを手に取る。
「それにしても……」
リリアがランチボックスを見る。
「本当にたくさん入っているわね」
「はい」
モニカは嬉しそうに頷いた。
「料理長が、毎日作ってくれるんです」
「素敵な料理長さんね」
「はい!」
モニカは元気よく答えると、また美味しそうにパンを頬張った。
「ふふっ」
その様子を見て、リリアが笑う。
中庭に、二人の楽しそうな声が響いていた。




