↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モニカ・ハーマン物語~虐げられた伯爵令嬢は、亡き母の秘密と金環眼に導かれて  作者: 紅しょうが


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/80

第36話 新しい1日

翌朝。


 モニカは身支度を整えると、いつものように学園へ向かって歩き始めた。


 しばらく歩いていると、聞き慣れた声が飛んでくる。


「モニカちゃん!」


 振り向くと、いつも顔を合わせる店の人が笑顔で手を振っていた。


「おはようございます」


「おはよう、モニカちゃん。聞いたよ!」


「……何をですか?」


「テスト、二位だったんだって?」


 モニカは少し恥ずかしそうに頷いた。


「はい……」


「すごいじゃない!」


「頑張ったんだねぇ」


「モニカちゃん、偉いね!」


 次々に掛けられる温かな言葉に、モニカは嬉しくなった。


「ありがとうございます」


「これからも頑張ってね!」


「はい!」


 モニカは笑顔で手を振った。


 変わらない街の人たちが、モニカは好きだった。


「じゃあ、行ってきます」


「いってらっしゃい、モニカちゃん!」


「気をつけてね!」


「はい!」


 モニカは手を振りながら、学園へ向かった。


 ◇◇◇


 学園へ到着すると、少し違う空気を感じた。


 校門をくぐったところから、周囲の視線が集まってくる。


「……あの方よね?」


「そう。テストで二位だった……」


「本当に?」


 モニカは少し緊張しながら教室へ向かった。


 教室へ入ると、さらに視線が集まる。


「おはようございます」


 モニカが挨拶すると、何人かの生徒が返してくれた。


 その時だった。


「ねえ、モニカさん」


 教室の奥から声が掛かった。


 振り返ると、数人の令嬢がこちらを見ている。


「何でしょう?」


「テスト、二位だったんですってね」


「……はい」


「すごいですわね」


 笑顔ではある。


 けれど、その声には棘があった。


「でも……ちょっと不思議じゃありません?」


 モニカは黙って相手を見る。


「今まで三十位が最高だったのに、いきなり二位でしょう?」


「……」


「まさかとは思いますけれど――」


 令嬢は口元に手を当てた。


「カンニングでもしたのではありません?」


 教室の空気が凍りついた。


 モニカの胸が、どくんと鳴る。


 以前の自分なら、何も言えず俯いていたかもしれない。


 けれど――。


 モニカはゆっくりと顔を上げた。


「……していません」


 静かな声だった。


「え?」


「私は、カンニングなどしていません」


 令嬢は眉を上げる。


「でも、今まで三十位だったのでしょう?」


「はい」


 モニカは頷いた。


「ですから、私自身も驚いています」


「だったら――」


「ですが」


 モニカは静かに言葉を続けた。


「私は、自分で勉強しました」


 教室が静まり返る。


「分からないところは先生に質問しました。家でも勉強しました」


 モニカは胸の前で手を握った。


「だから……二位になれたことは、嬉しいです」


 令嬢は何か言おうとした。


 その時――。


「カンニングとは、随分と失礼な言葉ですね」


 教室の入り口から声がした。


 振り向くと、担当教師が立っていた。


「先生……」


「先日の試験については、答案だけでなく試験中の様子も確認しています」


 教師は教室を見渡した。


「モニカ嬢に不正があったという事実は、一切ありません」


 教室がざわめく。


「今回の順位は、本人の努力によるものです」


「……!」


 モニカの目が見開かれた。


「二位という結果を、本人が誇って何が悪いのですか?」


 令嬢は気まずそうに視線を逸らした。


 モニカは胸の奥が熱くなるのを感じていた。


 ――私は、頑張った。


 そのことだけは、誰に何を言われても変わらない。


「モニカ」


 隣の席の令嬢が、小さな声で話しかけてきた。


「二位、本当にすごいと思うわ」


「ありがとう」


 モニカは笑った。


 少し前なら、こんなふうに笑えなかったかもしれない。


 けれど今は違う。


 街の人たちが喜んでくれた。


 先生も、自分の努力を認めてくれた。


 だから――。


 これからも頑張ろう。


 自分のために。


 そしていつか、胸を張ってお父様にも「頑張った」と言えるように。


 モニカは前を向いた。


 新しい一日が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。