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モニカ・ハーマン物語~虐げられた伯爵令嬢は、亡き母の秘密と金環眼に導かれて  作者: 紅しょうが


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第26話 テスト結果

五日間にわたるテスト期間が終わった。


 そして数日後。


 テスト結果が、学園の掲示板に張り出された。


 生徒たちが掲示板の前に集まり、次々と自分の名前を探している。


 モニカも人混みの後ろから掲示板を見つめていた。


 これまでのモニカの最高順位は、三十位。


 決して悪い成績ではない。


 部屋で勉強することしかなかったモニカにとって、勉強は唯一、自分の時間を埋めてくれるものだった。


 だから、いつもそれなりの成績は取っていた。


 けれど――。


 今回は違う。


 放課後の図書室で、いつも以上に勉強した。


 そして何より、最近は毎日きちんと食事を取っている。


 身体も軽い。


 頭もよく働く。


 モニカは少し緊張しながら、掲示板を下から見ていった。


「……三十位」


 ない。


「二十九位……」


 ない。


「二十八位……」


 ない。


 さらに上へ。


 二十位。


 十九位。


 十五位。


 十位。


 ――ない。


「……あれ?」


 モニカは首を傾げた。


 自分の名前が見つからない。


 もっと上?


 そんなはずはない。


 今までの最高順位だって三十位だった。


 モニカは、少しずつ順位を上へ追っていった。


「五位……ない」


「四位……ない」


「三位……ない」


 胸が、ドクンと鳴った。


「……え?」


 そして、その一つ上。


 そこに書かれていた名前を見た瞬間――。


 モニカは目を見開いた。


 二位 モニカ・ハーマン


「…………え?」


 何度も瞬きをする。


 見間違いではない。


 もう一度、目を凝らす。


 そこには確かに、自分の名前があった。


「私……?」


 モニカは口元に手を当てた。


「嘘……」


 そして、そのすぐ上を見る。


 一位 アダム・フォン・グランディア


「アダム殿下……」


 モニカは呆然と掲示板を見つめた。


 自分が――二位。


 あのアダムの、すぐ下。


「私……二位……?」


 信じられない。


 すると――。


「凄いじゃないか!! モニカ嬢!」


 突然、後ろから声がした。


「えっ?」


 振り返る。


 そこにはアダムが立っていた。


「おめでとう!」


「アダム殿下……」


「まさか私の次がモニカ嬢とはな!」


 アダムは掲示板を見上げ、嬉しそうに笑っている。


「ありがとうございます。アダム殿下」


 モニカは深々と頭を下げた。


「いや、これは凄い。以前の順位から考えれば、大躍進じゃないか」


「……はい」


 モニカは改めて自分の名前を見る。


 嬉しい。


 胸の奥が、ぽかぽかする。


 その時――。


「えっ、ハーマン伯爵令嬢が二位?」


「今までそんな順位だったか?」


「確か最高でも三十位くらいだったよな?」


「何があったんだ?」


 周囲の生徒たちがざわめき始めた。


 モニカは少し戸惑った。


 こんなに大勢の人から、自分のことを見られるのは初めてだった。


 アダムも周囲を見回す。


「モニカ嬢、どうしてこんなに成績が上がったんだ?」


「えっと……」


 モニカは考える。


 勉強はもちろん頑張った。


 放課後の図書室でも、一生懸命勉強した。


 でも――。


「……ご飯をちゃんと食べたから……?」


「…………」


 アダムが固まった。


「ご飯?」


「はい」


 モニカは真剣な顔で頷く。


「最近は、朝ごはんもちゃんと食べています。お昼のお弁当もあります」


「それは……知っているが」


「それに、夕食も毎日ちゃんと食べています」


 モニカは嬉しそうに続けた。


「そうしたら、前より頭がよく働くようになったんです」


 アダムはしばらく何も言えなかった。


 けれど、モニカの言葉を聞いているうちに、その表情が少し変わった。


 以前のモニカは、明らかに痩せていた。


 顔色も悪かった。


 それが今は、少しずつ血色が戻っている。


 表情も明るい。


 そして――二位という成績。


「……なるほど」


 アダムは小さく頷いた。


「きちんと食べることは大切だからな」


「はい!」


 モニカは笑顔で答えた。


 周囲からは、まだざわざわと声が聞こえている。


「ご飯を食べて二位……?」


「いや、それだけじゃないだろ」


「図書室で毎日勉強していたらしいぞ」


 その声を聞いて、モニカは少し照れた。


「……勉強も頑張りました」


「そうだな」


 アダムが笑う。


「図書室で見ていたから、それは知っている」


「ありがとうございます」


 モニカはまた頭を下げた。


 そして、もう一度掲示板を見る。


 そこには確かに、自分の名前がある。


 二位 モニカ・ハーマン


 今までの最高順位は三十位。


 それが、二位。


 自分でもまだ信じられない。


 けれど――。


 嬉しい。


 頑張って良かった。


 モニカは胸の前で、そっと手を握った。


 そして、ふと頭に浮かんだ。


「……お父様」


「ん?」


 アダムがモニカを見る。


「お父様に、報告しなきゃ」


 モニカの顔に、自然と笑みが広がった。


 きっと喜んでくれる。


 きっと褒めてくれる。


 そう思うだけで、胸が温かくなる。


「それなら、早く報告してあげるといい」


「はい!」


 モニカは大きく頷いた。


 今日の帰りが、待ち遠しかった。

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