セルディオの報い
一体、どこへ行ってしまったんだ……。
ニーナを捜し始めて、早くも二か月。
それだけの期間が過ぎた今も、何の手がかりも得られず、僕は心身ともに疲弊しきっていた。
最初は、すぐに見つかると思っていた。
病を抱えた身体で、そう遠くまで行けるはずがない。ましてや女二人だけだ。治安の悪くなる夜に移動するなど、不可能に近いだろう。
昼間に女性二人が移動できる範囲内で、片方は病人──。
そうした条件で探せば、すぐに見つかるはずだった。
しかも、ニーナは急いで屋敷を出たようで、大した荷物も持ち出していない。ならばなおさら遠くへは行けないだろうと、近隣をしらみつぶしに捜したのだが──。
結局、行き先の手がかりすら掴めなかった。
それどころか、目撃証言の一つさえ出てこない。
街を歩くにせよ、馬車に乗るにせよ、人目につかずに移動することなど不可能なはずなのに。
まるで、この世から消えてしまったかのようだった。
「どうしてだ! どうしてニーナが見つからない!? 僕がこれほどまでに必死になって探しているというのに! まさかお前達、手を抜いているんじゃないだろうな?」
使用人達を睨みつければ、彼らは顔を青くして一斉に頭を下げた。
「滅相もございません」
ならば、どうして見つからない。
街中の医院も、宿も、馬車の停留所も、店も……考えられる場所は全て調べさせた。それなのに、ニーナの足取りは欠片も掴めない。
「……ニーナがいなければ駄目なんだ」
掠れた声が、誰に聞かせるでもなく零れ落ちる。
「彼女でなければ……僕は……」
どさり、と音を立ててソファへ身体を沈めた。
ここ最近、まともに眠れていなかった。
ニーナが毎朝作ってくれていた薬湯を飲まなくなってから、身体の重さが日に日に増している。
目覚めても疲労は抜けず、頭は鈍く痛み、仕事にも集中できない。
まさか、あの薬湯一つでここまで変わるなど、考えもしなかった。
ニーナがいた頃は、全てがうまくいっていた。
屋敷へ帰れば温かな食事があり、疲れた時には薬湯が用意されていて、何も言わずとも僕のことを気遣ってくれる人がいた。
……それが当たり前だと思っていた。
「これは……罰なのか……?」
ぽつり、と呟く。
何も知らず、何も見ようとせず、ニーナを傷つけ続けてきた僕への。
──いや、違う。
僕は彼女を虐げていたわけじゃない。
ただ、僕に関心を示さない彼女へ、少し罰を与えようと思っただけだ。
それだけだ。
なのに……どうしてこんなにも胸が苦しい。
どうしてニーナがいないだけで、何もかもが崩れていく。
「……本当に、それだけだったのか……?」
誰もいない執務室で、呟きだけが静かに消えていった。
否定したいのに、できない。
今のこの現実が──自分が犯した過ちへの報いであるようにしか、思えなかった。




