表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第三章 半年後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
98/109

セルディオの報い

 一体、どこへ行ってしまったんだ……。


 ニーナを捜し始めて、早くも二か月。


 それだけの期間が過ぎた今も、何の手がかりも得られず、僕は心身ともに疲弊しきっていた。


 最初は、すぐに見つかると思っていた。


 病を抱えた身体で、そう遠くまで行けるはずがない。ましてや女二人だけだ。治安の悪くなる夜に移動するなど、不可能に近いだろう。


 昼間に女性二人が移動できる範囲内で、片方は病人──。


 そうした条件で探せば、すぐに見つかるはずだった。


 しかも、ニーナは急いで屋敷を出たようで、大した荷物も持ち出していない。ならばなおさら遠くへは行けないだろうと、近隣をしらみつぶしに捜したのだが──。


 結局、行き先の手がかりすら掴めなかった。


 それどころか、目撃証言の一つさえ出てこない。


 街を歩くにせよ、馬車に乗るにせよ、人目につかずに移動することなど不可能なはずなのに。


 まるで、この世から消えてしまったかのようだった。


「どうしてだ! どうしてニーナが見つからない!? 僕がこれほどまでに必死になって探しているというのに! まさかお前達、手を抜いているんじゃないだろうな?」


 使用人達を睨みつければ、彼らは顔を青くして一斉に頭を下げた。


「滅相もございません」


 ならば、どうして見つからない。


 街中の医院も、宿も、馬車の停留所も、店も……考えられる場所は全て調べさせた。それなのに、ニーナの足取りは欠片も掴めない。


「……ニーナがいなければ駄目なんだ」


 掠れた声が、誰に聞かせるでもなく零れ落ちる。


「彼女でなければ……僕は……」


 どさり、と音を立ててソファへ身体を沈めた。


 ここ最近、まともに眠れていなかった。


 ニーナが毎朝作ってくれていた薬湯を飲まなくなってから、身体の重さが日に日に増している。


 目覚めても疲労は抜けず、頭は鈍く痛み、仕事にも集中できない。


 まさか、あの薬湯一つでここまで変わるなど、考えもしなかった。


 ニーナがいた頃は、全てがうまくいっていた。


 屋敷へ帰れば温かな食事があり、疲れた時には薬湯が用意されていて、何も言わずとも僕のことを気遣ってくれる人がいた。


 ……それが当たり前だと思っていた。


「これは……罰なのか……?」


 ぽつり、と呟く。


 何も知らず、何も見ようとせず、ニーナを傷つけ続けてきた僕への。


 ──いや、違う。


 僕は彼女を虐げていたわけじゃない。


 ただ、僕に関心を示さない彼女へ、少し罰を与えようと思っただけだ。


 それだけだ。


 なのに……どうしてこんなにも胸が苦しい。


 どうしてニーナがいないだけで、何もかもが崩れていく。


「……本当に、それだけだったのか……?」


 誰もいない執務室で、呟きだけが静かに消えていった。


 否定したいのに、できない。


 今のこの現実が──自分が犯した過ちへの報いであるようにしか、思えなかった。


 


 


  


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ