セルディオの想い 2
「やあ、ニーナ」
「あ、セ、セルディオ様。おはようございます」
僕の頑張りが功を奏し、念願が叶ってニーナとお互いを名前で呼び合うほどに親しくなれたのは──彼女と出会ってから、実に三ヶ月も後のことだった。
ここまで来るのに、僕はかなりの労力を費やした。
廊下でわざと彼女にぶつかってみたり、昼食を取るための場所を探している振りをして彼女の傍に行ってみたり。果ては教科書を忘れた振りまでして、彼女の教室にさりげなく借りに行ったりなどもした。我ながら、涙ぐましい努力だったと思う。
だが僕はそうまでして、彼女に近づきたいと思っていたのだ。
近づけば近づくほど彼女が好きだと思えたし、自分のものにしたいという独占欲も湧いた。
彼女を誰にも見せたくない、身体の弱い彼女を自分の鳥籠の中に囲い、全ての危険因子から守りたい──とまで思うほどに。
しかし当然そんな気持ちはおくびにも出さなかったし、僕は彼女に紳士的に接し続けた。
なぜなら、これといって僕自身が何かをしなくても、彼女に嫉妬したどうでもいい令嬢達が勝手にニーナを孤立させてくれたし、そのせいで彼女は僕しか学園内に味方がいなくなってしまっていたから。
ああ……だけど、僕が仲良くしているせいでニーナに興味を持った不届きな令息達が何人かいて。彼女にバレないよう、そいつらに地獄を見せるのには少しばかり苦労した。なんせ人の口に戸は立てられない。故に何かの拍子にニーナにバレてしまう可能性は十分にあったから。
だが僕はそんな障害を乗り越え、そこから更に三ヶ月経過する頃には、晴れてニーナと相思相愛の恋人同士になっていた。
最初こそ苦労したものの、結局ニーナも幸せな結婚を夢見る普通の女の子だった──ということだ。
彼女と恋人同士になってからは、出来る限り学園内では彼女と二人きりで過ごし、ニーナに怪我を負わせた奴らに関しては、裏でコッソリと報復する日々が始まった。そのためニーナが虐めで怪我をする事はなくなり、気づけば彼女の肌からは全ての傷が消え失せていた。
それでも彼女に友達ができるわけではなく、相も変わらず学園内では孤立し続けていたが、それに関しては僕の思い通りだったから放っておいた。変にニーナに友達など出来ようものなら、僕と彼女が一緒に過ごす時間が少なくなってしまうだろうから。
ニーナは僕だけを見て、僕だけに頼り切っていればいい。他の人間なんていらない。お互いだけいれば僕達は幸せなんだ。
僕はそう信じて疑っていなかったのだが──そんな僕達の結婚は、予想外に困難を極めたのだった。




