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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第三章 半年後

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セルディオの動揺

 また、やってしまった……。


 ニーナの部屋からの帰り道、僕は内心頭を抱えながら廊下を歩いていた。


 本当は、離婚などと口にするつもりはなかった。


 あんな言葉で彼女を傷つけたいわけではなかったのに、気づけば感情に任せて口走ってしまっていた。


 あまりにもニーナが口を閉ざしたままだったから。


 こちらが下手に出て歩み寄ろうとしているというのに、彼女は頑なに何も話そうとせず、差し伸べた手さえ振り払った。


 ようやく本音を見せてくれると思っていた。


 リンカとのことで激しく嫉妬していたと聞いたから、まだ僕を想ってくれているのだと信じて、逸る気持ちを抑えきれず彼女のもとへ向かった。


 なのに──。


 僕を迎えたニーナの表情は、驚くほど静かだった。


 無表情と言っても差し支えないほど、何の感情も読み取れない顔。


 ……なぜ、そんな顔をしている?


 なぜ、嫉妬に狂ったような顔をしていない?


 僕は愛人であるリンカを連れて、お前の部屋まで来たんだぞ。


 怒って当然だろう。


 泣き叫んでも、責め立ててもいいはずだ。


 それなのに、どうしてそんなにも静かなんだ。


 まるで、僕への想いがとうの昔に冷め切ってしまったかのように。


 先ほどのニーナの表情を思い出し、ぞくりと背筋に悪寒が走る。


 まさか……愛想を尽かされたりしていないよな?


 さっきはリンカが一緒にいたから、本心を隠していただけなんだよな?


 そうだ。きっとそうに違いない。


 まるで自分に言い聞かせるように何度も心の中で繰り返し、両腕で自分の身体を抱きしめる。


 その瞬間──。


「セルディオ、寒いの? だったらアタシが温めてあげる」


 そう言ってリンカが僕の腕に抱きつき、ささやかな胸を押しつけてきた。


 途端に、思い出したくもない嫌悪感が胸を駆け巡る。


 脳裏にあの夜の朧げな記憶がよぎり、僕は反射的に彼女を突き飛ばした。


「やめろ。不敬だぞ」


 事故とはいえ、リンカの純潔を奪いさえしなければ、こんなことにはならなかった。


 酒のせいだったのか、それとも薬のせいだったのか。


 あの夜の記憶はほとんど残っていない。


 それでも、ふとした拍子に断片的な光景が脳裏へ浮かび上がることがある。


 そのたびに吐き気が込み上げ、僕は頭を振って必死に記憶を追い払った。


 これ以上、思い出したくない。


 リンカを屋敷へ迎え入れたことで、ニーナに嫉妬を抱かせるという目的だけは果たせていた。


 だが、その代償はあまりにも大きかった。


 ニーナとの信頼は崩れ、自分自身への嫌悪は募る一方。


 ──僕は、一体何を守ろうとして、何を壊してしまったのだろうか。











 

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