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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第三章 半年後

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生きるために

「奥様……ようやく決断してくださったのですね」


 リシテアは目に涙を浮かべ、胸の前で両手を合わせながら安堵したように微笑んだ。


「やった! これで毎日たくさんニーナさんと一緒にいられるぞ!」


 シルは子どものように飛び跳ね、隠そうともせず喜びを爆発させている。


 二人の姿を見つめながら、私は胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


 私が屋敷を出るという決断が、こんなにも二人を喜ばせるなんて思ってもみなかった。


 それだけ、今まで心配をかけ続けてしまっていたのだろう。


「……ごめんね」


 思わず零れた謝罪に、リシテアは首を横に振る。


「どうして謝るのですか!? 奥様が謝罪なさる必要など、どこにもございません!」


 いつになく強い口調だった。


「奥様はこれまで、公爵家のことを、そして旦那様のことを思って、この屋敷を離れずにいらしたのでしょう? もちろん……旦那様への情を捨てきれなかった、というお気持ちもあったのでしょうけれど」

「ええ……そうね」


 静かに頷く。


 公爵家のため。


 それも嘘ではない。


 けれど、一番大きかったのは──やはり、セルディオ様への想いだった。


 どれほど冷たく突き放されても。裏切られても。


 いつかまた、学生時代のように笑い合える日が来るかもしれない。


 もう一度、あの優しい瞳で私を見つめてくれる日が来るかもしれない。


 そんな淡い希望を、私はどうしても捨てることができなかった。


 ……でも、その希望は今日、音を立てて砕け散った。


 離縁という言葉を口にしたのは、セルディオ様自身。


 だからもう、私は前を向かなければならない。


「いつまでも縋りついていても……鬱陶しいだけだものね」

「奥様……」


 それに、リンカ様がセルディオ様のお子様を身籠っている以上、これから先、セルディオ様が私に目を向けることは、ますますなくなるだろう。


「また来ると仰っていたけれど……どうせなら、その前にこの屋敷を出てしまいましょうか」


 もう一度会って、また心を抉るような言葉を投げつけられたら。


 先ほどよりも、もっと残酷な言葉を浴びせられたら。


 その時こそ、私の心臓は耐えられないかもしれない。


 痛みに押し潰され、本当に動きを止めてしまうかもしれない。


 以前の私なら、それでも構わないと思っていた。


 セルディオ様に拒絶され、その果てに命を落とすのなら、それも私の運命なのだと。


 でも、今は違う。


 私のために涙を流してくれる人がいる。


 私のために怒ってくれる人がいる。


 私に、生きてほしいと願ってくれる人がいる。


 その人たちの想いを知ってしまった今、もう自分の命を軽んじることはできない。


 だから──。


 これ以上、セルディオ様に傷つけられる前に。


 この心が、二度と元に戻らないほど砕け散ってしまう前に。


 私は、この屋敷を出よう。


 生きるために。








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