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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第三章 半年後

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セルディオの勘違い

 夕方の執務室で、僕は領地の両親から届いた手紙をぐしゃりと握り潰した。


「毎度毎度、『後継はまだか』と馬鹿の一つ覚えみたいに言ってきやがって……」


 どんな内容の手紙でも、最後は決まってその一文で締めくくられている。


 早く孫の顔が見たい気持ちは分かるが、こちらは今、それどころではないのだ。


「ニーナとの冷戦状態も、もう半年か……」


 最初は、すぐに泣いて謝ってくると思っていた。


 だが、彼女は僕が思っていた以上に頑固だった。


 わざと二人きりになる機会を作っても、謝罪どころか話しかけてくる気配すらない。


 僕も僕で、自分から「さよなら」などと言ってしまった手前、今さら何事もなかったように話しかけることなどできなかった。


 そんな時、リンカがこんなことを言い出したのだ。


『奥様にもっと嫉妬させれば、セルディオを取られたくなくて慌てて謝ってくるかも』


 なるほど、と妙に納得してしまった僕は、それ以来、今まで以上にリンカを大切にしているように振る舞うことにした。


 おかげでニーナは確かに傷ついたような顔をしている。


 つまり、多少の効果は出ているのだろう。


 だが、思っていたほどではない。


 泣きながら僕に縋りついてきてもおかしくないはずなのに、彼女はただ静かに傷つくだけで、一向に距離を縮めようとはしてこない。


「何か……決定打が足りないのか?」


 腕を組み、真剣に考え込む。


「いっそ、ニーナの前でリンカとキスをするか?」


 ……いや、それは嫌だ。


 そもそも人前でそんな真似をする趣味はないし、ニーナ以外とキスなんてしたくはない。


「じゃあ、わざと閨の話をする?」


 却下だ。


 あまりにも品がない。


「となると……」


 顎に手を当て、さらに思案を巡らせる。


「ニーナの目の前で、リンカを情熱的に抱きしめる……とか?」


 その考えが頭に浮かんだ瞬間──。


「……これだ!」


 まるで暗闇に一筋の光が差し込んだかのように、僕の脳裏へ閃きが走った。


 これだ。


 これしかない。


 このくらいなら僕にとっても許容範囲だし、それを目にしたニーナは、きっと嫉妬で居ても立ってもいられなくなるはずだ。


「……よし」


 そうと決まれば、あとは作戦を練るだけだ。


 実行する場所はどこにするか。


 タイミングは。


 ニーナが必ず目にする状況をどう作るか。


 頭の中で段取りを組み立てながら、僕は机の上の紙を引き寄せ、作戦を書き出そうとペンを取る。


 ──その時だった。


 バンッ!


 執務室の扉が勢いよく開き、リンカが今にも泣き出しそうな顔で飛び込んできたのは。


「セルディオ、聞いて! 奥様が……!」

「なんだ!? ニーナがどうした!」


 考えるよりも先に、椅子を蹴るように立ち上がる。


 心臓が嫌な音を立てて脈打ち、全身を冷たい不安が駆け抜けた。


 ニーナに何かあったのか。


 まさか、倒れたのでは──。


 次々と最悪の想像が頭をよぎる。


 しかし、リンカの口から告げられたのは。


 僕の予想を、根底から覆す言葉だった。


 













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