驚愕の事実
それから半年──私の病状は、一進一退を繰り返していた。
セルディオ様には相変わらず冷遇され、今では挨拶をしても返事すらない。まるで私は最初から存在しない人間であるかのように、その視線が私へ向けられることは一度もなかった。
リンカ様はというと──ほとんど一日中セルディオ様と行動を共にし、離れているのは彼が執務をしている時間くらい。
そして、その時間になると決まって私の部屋を訪れ、昨夜はセルディオ様がどれほど優しく抱きしめてくださったかとか、どんな甘い言葉を囁いてくださったかなど、私が聞きたくもない話を嬉々として聞かせてくれた。
どんなに望んでも、今の私では絶対に無理な体験の数々を──。
最初は平静を装っていた私も、そんな日々が何か月も続けば心は少しずつ擦り切れていった。
話を聞くたび、胸は締め付けられるように痛み、息をすることさえ苦しくなる。
それでも私は倒れない。
病は私の身体を蝕み続けているというのに、皮肉なことに命だけは奪ってくれなかった。
いっそこのまま終わらせてくれたら──そう願う夜が何度あっただろう。
けれど現実は残酷だった。
どれほど心が壊れそうになっても、どれほど胸が痛みに悲鳴を上げても、病は私を死なせてはくれない。
ただ苦しみだけを長引かせるように、今日も私は生かされ続けていた。
「ニーナさん、起きてる?」
今日もリンカ様が部屋へやって来た。
もう、扉に鍵を取り付けて立ち入り禁止にしてしまいたい。
そんなことを考えてしまうほど、私の心は疲れ切っていた。
「はい、ご用件はなんでしょうか?」
聞かなくても分かっているのに、私は律儀に尋ねる。
──もう、来ないでほしい。
そんな本音は胸の奥へ押し込めた。
どうせ今日も、昨日セルディオ様とどれほど甘い時間を過ごしたのかを聞かされるだけなのだろう。
毎日毎日、本当によく飽きないものだ。
私は心の中で、小さく冷笑した。
けれど──。
「実はね、ちょっと言いにくいんだけど……」
その日のリンカ様は、どこか様子が違っていた。
いつもなら部屋へ入るなりベッド脇の椅子へ腰を下ろし、待ちきれないように話し始める。
それなのに今日は、立ったまま落ち着かない様子で指先をもじもじと絡ませ、お腹へそっと手を添えている。
まるで、そこに何よりも大切なものが宿っているかのような、慈しむような手つきだった。
その瞬間──胸が大きく脈打つ。
「まさか……」
震える唇から、掠れた声がこぼれ落ちた。
まさか、リンカ様は──。
自分でも聞き取れないほど小さな呟きだった。
けれどリンカ様には届いたらしい。
彼女は驚いたように目を見開くと、すぐに照れくさそうにはにかみ、頬をほんのり赤く染めながら俯いた。




