セルディオの決意
ニーナに別れを告げた僕は、自己嫌悪で俯きながら屋敷の廊下を歩いていた。
本当は、あんなことを言うつもりなんてなかった。
ただ、浮気のことを問い詰め、真実を話してもらいたかっただけなのに。
結局、ニーナからは何も聞き出せなかった。
浮気については何度も「違う」と否定していたのだから、本当に浮気などしていないのかもしれない。
だったら、なぜ理由を話してくれないのだろう。
それさえ分かれば、ニーナを許すこともできるかもしれないのに。
あまりにも彼女が口を噤むものだから、腹が立って余計なことを言ってしまった。
「さよなら」なんて。
そんなこと、本気で思っているはずがない。
言った本人が一番分かっている。
僕には、ニーナを離す気など──これっぽっちもないのだから。
けれど、言ってしまった。今頃、ニーナはどうしているだろう。
部屋で一人、泣いているだろうか。それとも、リシテアに慰められているのか。
……まあ、どちらでも構わない。
問題は、その後だ。
僕に嫌われたくない一心で真実を話すというのなら、それでいい。
理由さえ分かれば、僕はいくらでも考え直してやれる。
だが、夫婦関係を修復することを諦め、このまま部屋に閉じこもるつもりなら──その時は、こちらも手段を選ぶつもりはない。
何が何でも、口を割らせる。
ニーナが何を隠しているのか知らないが、夫である僕にさえ話せない理由など、あっていいはずがないのだから──。
「……そうだ。最初から、そうすればよかったんだ」
その瞬間、目の前を覆っていた靄が晴れたような気がした。
ニーナが自分から口を開くのを待とうとしたから、話がややこしくなったのだ。
僕は何を遠慮していた?
何を躊躇っていた?
夫である僕にさえ打ち明けられない秘密など、認める必要はない。
最初から、無理にでも真実を話させればよかったのだ。
そうしていれば、ここまで僕たちの仲が拗れることもなかった。
ニーナを傷つけたくない。嫌われたくない。
そんな甘いことを考えていたから駄目だった。
優しく待っていれば、いつか自分から話してくれると信じていたから、こんなことになった。
もう、待つのはやめだ。
ニーナがどれだけ口を閉ざそうと、逃がすつもりはない。
泣こうが、怯えようが、嫌がろうが関係ない。
ニーナのすべては、夫である僕のものだ。
その心も、身体も、秘密も、何もかも。
僕に隠し事をすることなんて許さない。
誰にも渡さないし、誰の元へも行かせない。
たとえニーナ自身が望んだとしても、手放してやるつもりはなかった。
彼女が隠しているものも、抱え込んでいる苦しみも、全部暴いて、僕の手の中に取り戻してみせる。
──ニーナは、僕の妻なのだから。




