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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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甘い香り

 バンッ!


 扉が勢いよく開かれた大きな音に、私はびくりと肩を震わせる。


「ニーナ!」


 セルディオ様が私の名を呼びながら、突然部屋へ飛び込んできた。


 眠りの淵から引き戻されるように目を覚ました私は、突然現れたセルディオ様の姿に戸惑う。


 え……どうして?


 彼はリンカ様と一緒だったんじゃ……。


 そう思った瞬間、胸の奥がずきりと痛む。


「あの、セルディオ様。一体どうし──」

「ニーナ、すまなかった!」


 最後まで言い終える前に、強く抱きしめられた。


「……っ」


 まるで壊れ物を扱うかのように。


 それでいて、どこにも逃がさないとでも言うように。


 久しぶりの温もりに、思わず涙が出そうになる。


 私も彼の背中へ腕を伸ばしかけて──。


 その瞬間。


 ふわりと、甘い香りが鼻をかすめた。


 嗅ぎ慣れない香水の香り。


 けれど、それが誰のものなのかはすぐに分かってしまった。


 リンカ様の香りだ。


 伸ばしかけた手が、空中でぴたりと止まる。


「ニーナ?」


 私の手が止まったことに気づいたのか、セルディオ様が訝しげな顔をして、そっと身体を離した。


 そして、眉間に深い皺を寄せる。


「やはり……《《そういうこと》》なのか?」


 意味深な言葉を呟かれ、私は困惑した。


 何のことを言っているのか、まるで分からない。


 けれど今は、それを尋ねる気にはなれなかった。


 鼻先をかすめる甘い香りが、嫌でも昨夜の出来事を思い出させるから。


「あの……セルディオ様。昨夜は、こちらに来てはいただけなかったのですね……」


 震えそうになる声を、なんとか押し殺して尋ねる。


 リンカ様のことには触れない。


 自分からその名前を口にしてしまったら。もしセルディオ様の口から、「昨夜はリンカと過ごした」と告げられてしまったら。


 今度こそ、平静ではいられなくなってしまいそうだったから。


「あ、ああ……。少しリンカとの話し合いが長引いてな……。君はもう眠っているだろうと思ったから、ここには来なかったんだ」


 どこか気まずそうに視線を逸らしながら、セルディオ様はそう言った。


 話をするだけであれば、ここまで相手の香が身体につくこともないでしょうに。


 けれど私は、それを指摘することすらできなかった。


 真実を知るのが怖かったから。


「そうなのですね」


 無理やり口元を持ち上げて、微笑む。


 ここでセルディオ様を責めても、何も変わらない。


 起きてしまったことは、もう元には戻せないのだから。


「それで……リンカ様は、もうお帰りになったのでしょうか?」


 そう尋ねた瞬間、セルディオ様の顔色が明らかに変わった。











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