衝撃
ドクン、ドクン、ドクン──。
心臓が、大きく脈打つのを感じる。
数ヶ月ぶりとなるセルディオ様との夫婦の営みを前にして、私は緊張のあまり胸が張り裂けそうになっていた。
駄目よ、こんなんじゃ。もっと気持ちを落ち着けなくては……。
ただでさえ緊張やストレスは心臓に悪いと言われているのに、これでは自分から悪化させにいっているようなものだ。
もっとセルディオ様と一緒にいるためにも、少しでも長生きするためにも、もっと自分でコントロールできるようにしなければ──。
そう思い、気合を入れ直していた時だった。
「……奥様、失礼致します」
控えめなノックの音が聞こえ、外からリシテアの声がした。
「どうしたの?」
これから夫婦の寝室で何が起こるか知っているリシテアが、こんな風に訪ねてくるのはおかしい。上着を羽織って扉を開けると、彼女はとても辛そうな表情をしていた。
「リシテア……?」
とりあえず彼女を部屋に招き入れ、近くのソファに腰掛ける。
その上で訪ねてきた理由を聞くと、彼女は衝撃の一言を口にした。
「リンカ様が……突然旦那様を訪ねていらっしゃいました」
「えっ……」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
どうして今なの?
まるで狙いすましていたかのように、私達が久しぶりに身体を合わせるという、この日に。リンカ様が、屋敷へといらっしゃったですって?
ようやく訪れた機会だった。
もう一度セルディオ様と夫婦として向き合えるかもしれない、そう願っていたのに。
胸の奥がひやりと冷える。
嫌な予感がした。
「それで……セルディオ様は?」
恐る恐る尋ねると、リシテアは唇を噛み締めながら答えた。
「現在は応接室でお話しされております」
「そう……」
安堵と不安が入り混じる。
まだ寝室へ来る前だったことにはほっとした。
けれど、リンカ様がわざわざ夜更けに訪ねてきた理由が分からない。
そして何より──。
今まで何度も見てきた光景が、脳裏をよぎってしまった。
セルディオ様が、リンカ様に向ける優しい眼差しが。
私を無視して、リンカ様だけを見つめる様子が。
「…………っ!」
胸が痛い。
まるで心臓を直接握り潰されているかのような激痛に、思わず息を呑む。
ここ数日は比較的落ち着いていたはずなのに。
リンカ様のことを考えただけで、身体はこうして悲鳴を上げてしまう。
「っ……う、ぁ……」
情けない。
私はこんなにも弱い女だっただろうか?
愛する人の心が自分から離れたというだけで、こんなにも……。
「奥様……!」
急激に目の前が暗くなる。
リシテアが慌てて肩を支えてくれたものの、私は体勢を立て直すことができなかった。




