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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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隠す努力

 柔らかな陽光が庭を照らしている。


 あの日、病の宣告を受けた日も、こんな穏やかな日だった気がした。


「ねえ、リシテア」

「はい」

「私ね、本当は怖いのよ」


 ぽつりと零した言葉に、リシテアが息を呑む。


 こんな弱音を吐くのは久しぶりだった。


「このままセルディオ様の心が離れてしまうことも」


 言葉を切る。


 胸の奥がじくりと痛んだ。


「子どもを授かれないまま終わってしまうことも」


 そして。


「いつか本当に、私が必要ではなくなることも」


 静かな告白だった。


 けれど、ずっと胸の奥に押し込めてきた本音だった。


 次期公爵夫人として、誰にも弱さを見せないように気丈でいようとしてきた。


 それでも時折、自分でも抱えきれないほどの不安が押し寄せてくる。


 だから──。


「せめて、できることは全部やってみたいの」


 そう言って手の中の薬包を見つめる。


「結果がどうなるかは分からない。でも何もしないまま諦めるのだけは、きっと後悔すると思うから」


 たとえそれが、自分の命を縮める結果になったとしても。


 このまま何もしないで日々を生きていくより、少しでも充実した毎日を過ごしたかった。


 最後にもう一度、セルディオ様と心を通い合わせたい。彼との子供を作り、二人で子供について語り合いたい──。


 それが私の切なる願いだったから。


「ですが奥様、それでもし奥様がお倒れにでもなったら……その時は今度こそ、ご病気のことを隠し通せないかもしれませんよ」


 リシテアが、不安そうに眉根を寄せながら口にした。けれど、そんなことは最初から承知の上だった。


 公爵家お抱えの医師とて、やぶではない。今までは運よく発覚を免れていただけで、彼は優秀な医師だ。


 もし屋敷の中で倒れれば、今度こそ病の存在を知られてしまうだろう。


 それでも──私は諦めたくなかった。


「その時はその時よ。今診てもらっている先生に、最大限隠す努力をしてもらって……それでも駄目だった時は、腹を括るしかないわ」

「そこまで……!? なぜそこまでして病を隠さなければならないのです? せめてお抱えの医師様には本当のことを話しても──」

「駄目よ!」


 リシテアの言葉を、勢いよく遮った。


「駄目よ……。公爵家の医師の方は、セルディオ様の味方だもの。いくら私が口止めしたところで、彼にだけは話してしまうわ。私の身体のこととなれば、なおのこと……」


 もしも私の容体が急変して死に至るようなことがあった場合、私の病について知っていたかどうかで医師の今後の扱いが変わる。本当に知らなければ、それはそれで“病を見抜けなかった”という問題にはなるが、そこまで大きな問題にはならない。


 けれど、病を患っているのを知っていて雇い主に黙っていた場合──それは明確な裏切り行為だ。


 公爵家ほどの権力を持つ相手であれば、最悪の場合、医師としての地位や名誉を失うことだってあり得る。


「私のせいで、医師の方の人生を台無しにするようなことにでもなったら……そんなの、あまりにも申し訳ないもの」

「奥様……」


 俯く私にリシテアは、言葉を失ったようにこちらを見つめた。


 














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