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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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最後の希望

「閨の直前に飲むお薬はこれ。それからこれは──」


 自由に外出できない私に代わり、医院へと行ってきてくれたリシテアの説明により、私は薬の使用方法を覚え込んでいく。


 種類は然程多くない。けれど薬というものは、少しでも種類を間違えたり、タイミングを逸してしまえば、途端に効力を失ってしまうものだから。順番、飲む量、決して間違えることのないように、何度も二人で確認して照らし合わせていく。


「それからこれは、奥様がご所望されたお薬なのですが……」


 そこで不意にリシテアの言葉が止まった。


「どうしたの?」


 聞けば、薬包を掴むリシテアの手が、わずかに震えた。


 まるで、私にそれを渡すことを拒んでいるかのように。


「リシテア?」


 何かあったのかと再度名前を呼べば、彼女はハッとして包みをそっと差し出してきた。


「こちらが“妊娠しやすくなる”薬効を秘めたお薬の包みでございます。ただ……正直こちらは、あまりお飲みになられない方がよろしいかと」

「え、どうして?」


 これこそが、今の私に一番必要なものなのに。


 セルディオ様との絆を取り戻すため、私と彼との架け橋となりうる可能性を秘めた、たった一つのものなのに。


 わけが分からず首を傾げると、リシテアは何度か躊躇うように視線を彷徨わせた後、ゆっくりと口を開いた。


「……そのお薬は、確かに懐妊を助ける効果が期待できるそうです」

「なら──」

「ですが、奥様のお身体への負担も決して小さくないと、医師の先生がおっしゃっていました」


 その言葉に、思わず口を噤む。


「今の奥様は、お薬のおかげでなんとか体調が落ち着いている状態です。そこへ無理に懐妊をということになれば、かえって病気を悪化させてしまう危険性がある、と……」


 その言葉に、思わず薬包へ視線を落とす。


 薄い紙に包まれたそれは、とてもそんな危険なものには見えなかった。


「もちろん、毒というわけではありません。ですが、今の奥様のお身体で常用することを、先生はあまり勧めておられませんでした」

「そう……」


 胸の奥が僅かに沈む。


 けれど、それでも。


 私はそっと薬包を握りしめた。


「それでも私は、飲みたいわ」


「奥様……!」


 リシテアが悲鳴のような声を上げる。


 けれど私は首を横に振った。


「分かっているの。あなたが心配してくれていることも、お医者様が反対なさる理由も」


 それでも諦められない。


 諦めてしまったら、本当に何も残らない気がした。


「私はセルディオ様の妻だもの」


 震えそうになる声を必死に押さえ込む。


「旦那様との子どもが欲しいの」


 それは妻として当然の願いで。


 同時に――離れてしまった彼の心を繋ぎ止めることのできる、最後の希望でもあった。









 

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