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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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残された時間

「侍女の無礼を許してほしければ、今日は()()()()()で閨にこい」


 セルディオ様はそう言って、部屋から出て行った。


 後に残された私に、リシテアが泣き出しそうな顔をする。


「奥様……! 旦那様は本気です。私のことなんて気にしないで、どうかご自分のお身体を優先してください」


 けれど、私は首を横に振った。


 そんなこと、できるわけがない。


 いくらリシテアが私付きの侍女だとはいえ、雇い主はセルディオ様だ。彼の機嫌を損ねた今、どんな処分を下されるのか分からない。


 だから、受け入れるわけにはいかなかった。


「駄目よリシテア。貴女は私の大切な人なの。そんなこと、見過ごせるはずがないでしょう?」

「ですが……! 奥様のお身体は、夫婦の営みに耐えられるような状態では……」


 言葉の途中で、リシテアが唇を噛んだ。


 反対したところで、私の決意が変わらないことを雰囲気から感じ取ったのだろう。


 私の心臓は、普段の生活を送る分にはさほど問題はないと診断を受けている。けれど、激しい運動をしたり、精神的な負担で鼓動が速くなったりすると、一気に病が進行する可能性があると。


 だからこそ、セルディオ様との子供が欲しいと思いつつ、少しでも長く生きることを念頭に、静養を続けてきた。けれどリシテアを守るためなら、その努力を無駄にすることになったとしても構わない。


 私が体調不良であることは、公爵家のお抱え医師様も認めてくれている。でなければ、営みを拒否することを、セルディオ様が認めて下さることはなかった。


 ただ、私が心臓を患っているということに、お抱え医師もセルディオ様も気づかないでいるだけで。


 ──だからこそ、隠し通さなければならない。


「私が最後まで隠し通せば、それで済むことだもの」


 自分に言い聞かせるかのように呟く。


 私の病気が見つかったのは、幸運だった──とシルに言われた。


 本来であれば、心臓の病気はとても見つかりにくく、何度検査を重ねても発覚しないことが多いのだとか。


 それが運良く見つかったのは、単純に私の運が良かっただけではなく、訪ねた医院の医師が元王宮医のトップだったことも関係している。


「もし他の医院に行ってたら、ただお腹を壊しただけって言われて終わりだったかもしれねぇな」


 なんて冗談めかして笑われた。


 実際のところ、それで終わっていた方が幸せだったのかもしれない。こんなにも長い間セルディオ様との閨を拒否し、辛い思いをしなくても済んだのかもしれない。


 だけど──自分の死期を知って、それまでを大切に生きるのと、何も知らずに生き急いでしまうことは違うから。


 病気にかかってしまったことは不運としか言いようがないけれど。それが発覚したことだけは、幸運と言えるかもしれない。


 自分に残された時間を知れたから。


 その限られた時間を、大切な人のために使えるのだから。








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