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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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セルディオの苛立ち

 嫉妬された訳ではなかった──。


 それを自覚した途端、心の中に鉛のようなものが沈んだ。


 久しぶりに抱きしめたニーナが、僕の身体に腕を回し返してこないことも、じわじわと精神を削っていく。


 あれだけリンカと親しくして見せたのに、彼女はどうしてしまったんだろう。


 以前のニーナなら、僕が他の女性と親しくするだけで不安そうな顔をしていたのに。


 今は違う。怒りもしない。縋りもしない。嫉妬さえしてくれない。

 

 身体を重ねなくなってから、日に日にニーナが離れていくような気がした。


 まるで少しずつ、僕への想いを失っていくみたいに。


 そんなのは嫌だ──!


「……ニーナ」

「……っ!」


 無理やり彼女の唇を塞ぎ、そのままベッドへ身体を横たわらせ、服を乱す。


 いくら体調不良といったって、少しぐらいなら問題ないはずだ。公爵家お抱えの医師も、「無理をさせなければ問題ありません」と言っていた。


 それに僕達は夫婦だ。夫婦が触れ合うことの何が悪いというんだ。


 そう思い、ニーナのドレスの中に手を入れた瞬間だった。


「おやめ下さい!」


 悲鳴のような声が響く。


 同時に、突然後ろから何者かが僕の腰にしがみついてきた。


「やめて下さい! 奥様は……っ!」


 グイグイと力任せに引っ張られ、僕は半ば強引にニーナから引き離される。


 振り返れば、そこには鬼気迫る表情のリシテアがいた。


「リシテア、お前──」

「奥様はお身体を悪くしているのですよ! なのにどうして、そのような真似ができるのですか!」


 まるで僕が悪いことをしたとでも言うかのように、リシテアはニーナを庇うように僕の前に立ち塞がり、鋭くこちらを睨みつけてくる。


 こいつ……。


 ニーナを大切に思っているのは分かるが、少々出過ぎではないか? 


 僕は夫で、ニーナは妻だ。夫婦の触れ合いに、なぜ使用人が口を挟む?


 ニーナ付きだからといって、近頃は少し甘やかしすぎたかもしれない。


 不快感に眉を顰め、僕は小さく舌打ちした。


「リシテア、私は大丈夫だから……」


 生意気な侍女の背後で、ニーナが服を直しながら起き上がり、そっと顔を覗かせる。


 青ざめた顔をしていたが、その瞳にはリシテアを案じる色が浮かんでいた。


 どうしてそこで自分の身より侍女を心配するんだ。


 気に入らない。


 それから彼女は、僕に向かって丁寧に頭を下げた。


「セルディオ様、彼女は私を心配してくれただけですので、どうか許して差し上げてください……」

「奥様!? どうして……」


 まさかニーナが謝るとは思っていなかったのだろう。


 リシテアは驚いた顔をしてニーナを振り返った。


 だが──僕がリシテアを許すかどうかは、僕が決めることだ。


 せっかくの数ヶ月ぶりの夫婦の時間を、彼女に台無しにされたのだから。


 僕は腕を組み、二人を見下ろした。


「いいだろう」

 

 ゆっくりと口を開く。


「だが、許してほしいというのなら条件がある」










 



 






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