捜索──セルディオ
「なんだと?! リシテアがいない?」
侍従からの報告を受け、僕は愕然と目を見開いた。
リシテア──ニーナ付きの、いつも妻の傍にいる侍女だ。彼女がニーナの居場所を知らないなど有り得ない。あれに聞けば、必ず何か手掛かりが摑めると思っていたのに。
その本人がいなければ、何の意味もないじゃないか。
「いつからだ? 誰か見ていないのか?」
思わず声が荒くなる。
しかし侍従は恐縮したように肩を縮こまらせると、申し訳なさそうに首を横に振った。
「申し訳ございません。誰も気付いておりませんでした」
「……っ」
奥歯を強く噛み締める。
まあ、当然か。
今の屋敷は、ニーナが一晩中戻らなかったという事実だけで大混乱に陥っている。そのような状況で、侍女が一人消えたところで気に留める者などいるはずもない。
だが、それでは困る。
リシテアは今、この屋敷の中で最もニーナの行方に近い人物なのだから。
「ならば、たった今からリシテアの捜索も同時進行で始めろ。ニーナとリシテア、その両方でも、どちらかでも良い。とにかく一刻も早く二人を見つけ出せ!」
「かしこまりました」
深く頭を下げると、侍従は慌ただしく部屋を後にした。
静まり返った室内で、僕は苛立たしい気持ちそのままに、指先で机を叩く。
リシテアは昨晩、確かに屋敷の中にいた。
夜会から帰宅した際、ニーナを出迎えるため玄関で待機している姿を見ている。だから昨夜のうちに姿を消したわけではない。
だとしたら──いなくなったのは今朝になってからだ。
だが、いつ? そして、どこへ?
リシテアが消えた理由さえ分かれば、ニーナの行方にも繋がるはずなのに。
そこまで考えた瞬間、不意に胸の奥がざわりと波立った。
もしも──。
もしもリシテアが、ニーナの居場所を知っていて。
その上で、自らの意思で屋敷を出たのだとしたら。
「まさか……」
乾いた声が漏れる。
「僕から逃げ出した……のか?」
その考えを口にした途端、胃の辺りが重く沈んだ。
あり得ない。
ニーナが僕から逃げるなど。
そんなこと、あるはずがない──。
「嘘だ……」
昨夜の夜会で、ニーナが僕に何も告げず庭園へ出て行ったことが脳裏を掠める。
「嘘だ……」
『会場へ戻ってこい』
侍従を通じてそう伝えたにも拘わらず、彼女は戻ってこなかった。
「嘘だ……」
夜会が終わった後も。
招待客が自分達以外全員帰った後も。
時間の許す限り探し続けたが、彼女の姿はどこにもなかった。
「嘘だ……」
そして今朝。
妻は部屋にも、屋敷のどこにもいなかった。
書き置き一つ残さず、まるで最初から存在しなかったかのように姿を消していた。
「嘘だ……」
冷たい汗が頬を伝う。
一つ一つは些細な出来事だ。
だが、それらを繋ぎ合わせれば見えてくる結論は一つしかない。
「嘘だ、嘘だ、嘘だっ!」




