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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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捜索──セルディオ

「なんだと?! リシテアがいない?」


 侍従からの報告を受け、僕は愕然と目を見開いた。


 リシテア──ニーナ付きの、いつも妻の傍にいる侍女だ。彼女がニーナの居場所を知らないなど有り得ない。あれに聞けば、必ず何か手掛かりが摑めると思っていたのに。


 その本人がいなければ、何の意味もないじゃないか。


「いつからだ? 誰か見ていないのか?」


 思わず声が荒くなる。


 しかし侍従は恐縮したように肩を縮こまらせると、申し訳なさそうに首を横に振った。


「申し訳ございません。誰も気付いておりませんでした」

「……っ」


 奥歯を強く噛み締める。


 まあ、当然か。


 今の屋敷は、ニーナが一晩中戻らなかったという事実だけで大混乱に陥っている。そのような状況で、侍女が一人消えたところで気に留める者などいるはずもない。


 だが、それでは困る。


 リシテアは今、この屋敷の中で最もニーナの行方に近い人物なのだから。


「ならば、たった今からリシテアの捜索も同時進行で始めろ。ニーナとリシテア、その両方でも、どちらかでも良い。とにかく一刻も早く二人を見つけ出せ!」

「かしこまりました」


 深く頭を下げると、侍従は慌ただしく部屋を後にした。


 静まり返った室内で、僕は苛立たしい気持ちそのままに、指先で机を叩く。


 リシテアは昨晩、確かに屋敷の中にいた。


 夜会から帰宅した際、ニーナを出迎えるため玄関で待機している姿を見ている。だから昨夜のうちに姿を消したわけではない。


 だとしたら──いなくなったのは今朝になってからだ。


 だが、いつ? そして、どこへ?


 リシテアが消えた理由さえ分かれば、ニーナの行方にも繋がるはずなのに。


 そこまで考えた瞬間、不意に胸の奥がざわりと波立った。


 もしも──。


 もしもリシテアが、ニーナの居場所を知っていて。


 その上で、自らの意思で屋敷を出たのだとしたら。


「まさか……」


 乾いた声が漏れる。


「僕から逃げ出した……のか?」


 その考えを口にした途端、胃の辺りが重く沈んだ。


 あり得ない。


 ニーナが僕から逃げるなど。


 そんなこと、あるはずがない──。


「嘘だ……」


 昨夜の夜会で、ニーナが僕に何も告げず庭園へ出て行ったことが脳裏を掠める。


「嘘だ……」


『会場へ戻ってこい』

 侍従を通じてそう伝えたにも拘わらず、彼女は戻ってこなかった。


「嘘だ……」


 夜会が終わった後も。


 招待客が自分達以外全員帰った後も。


 時間の許す限り探し続けたが、彼女の姿はどこにもなかった。


「嘘だ……」


 そして今朝。


 妻は部屋にも、屋敷のどこにもいなかった。


 書き置き一つ残さず、まるで最初から存在しなかったかのように姿を消していた。


「嘘だ……」


 冷たい汗が頬を伝う。


 一つ一つは些細な出来事だ。


 だが、それらを繋ぎ合わせれば見えてくる結論は一つしかない。


「嘘だ、嘘だ、嘘だっ!」


 


  


 


 

 


 


 

 

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