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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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リシテアの喜び

 ああ、良かった。奥様はご無事だった。


 奥様から直接お手紙をいただいていたから、ご無事であることは分かっていた。それでも、この目で確かめるまではどうしても安心できなかったのだ。


 もし途中で容体が急変していたら。


 もし私が知らないところで苦しんでいたら。


 そんな考えばかりが頭をよぎり続けていたのだ。


 奥様は心臓を患っている。いつ何が起きても不思議ではないお身体なのだから。


 ほんの少しの異変でさえ命取りになりかねないお身体だ。だからこそ、離れている間ずっと不安でたまらなかった。


「さ、どうぞ」


 扉を開けた少年に続き、奥様のいる部屋へと足を踏み入れる。


 そして、自分の目で奥様のご無事な姿を見た途端──。


「奥様……」


 堪えていたものが決壊したかのように、ポロリと涙が零れ落ちた。


 胸を締めつけていた重苦しい不安が、一気にほどけていく。


 本当に、ご無事だった。


 若干顔色が青白くはあるものの、確かにそこにいて、私を見て微笑んでいる。


 その事実だけで胸がいっぱいになり、気づけば私の足は引き寄せられるかのように奥様のもとへ向かっていた。


「奥様ぁぁぁぁぁっ!」


 ベッドの上で身を起こしていた奥様の腰に縋り付くように抱きつき、そのまま声を上げて泣く。


 良かった。本当に良かった。


 もう二度とお会いできないのではないかと、そんな最悪の想像までしてしまっていたから──。


「あらあら。私ったら、こんなに心配をかけてしまっていたのね……。リシテア、ごめんなさいね……」


 そんな私に、奥様が申し訳なさそうに謝ってくれる。


 そんな、謝罪なんていりません。ただ私が勝手に心配して、勝手に不安になっていただけで──。


 そうお伝えしたいのに、次から次へと涙が溢れ、嗚咽が喉を塞いで言葉にならなかった。


「うっ……、ぅぅ……っ、奥様……っ」


 せめて離れたくないとばかりに服を握り締め、私は子供のように泣き続けた。





⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎





「……で? もういい?」


 奥様との感動の再会を済ませた後、不意に後ろからそんな声が聞こえてきたのは、嗚咽がおさまってからのことだった。


「え? 何……が?」


 涙を拭きながら振り向けば、そこには部屋へと案内してくれた少年が、居心地悪そうに立っていて。


「感動の再会に水を差すのも悪いから、一応待ってたんだけどさ。先生がもう一度診察したいって、さっきから待ってるんだ。他の患者さんのこともあるから、できればそろそろ時間をとってもらいたいんだけど……いい?」


 言われた瞬間、パッと奥様の身体から手を離した。


「ご、ごめんなさい! 私ったら奥様にお会いできたのが嬉しすぎて……」


 子供のように泣きじゃくってしまったのも、少年に見られてしまった。なんということだろう。あまりにも恥ずかしすぎる。穴があったら入りたい──どころか、自分で掘って埋まりたい。


 私が真っ赤になって俯いていると、少年は呆れたように肩をすくめた。


「感動の再会だったんだろ? 泣きたいなら泣けばいいと思う。とりあえず俺は先生を呼んでくるから」

「は、はぃ、お願いします……」


 消え入りそうな声で返事をすると、少年は軽く手を振りながら部屋を出ていった。


 ああ、なんて恥ずかしいことをしてしまったんだろう……。


 私はしばらく俯いたまま、熱くなった頬を冷ますこともできずにいたのだった。
















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