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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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見知らぬ場所

 目が覚めると、そこには見慣れない白い天井があった。


「ここは……?」


 ぼんやりとした頭のまま室内を見回す。しかし、見覚えのある場所ではなかった。


 私は昨日、庭園のベンチで胸が痛くなって……それから?


 思い出せない。自分があの後どうなったのかも、なぜ見覚えのない部屋で目を覚ましたのかも。


 もしかして、あの場所で意識を失い、誰かに運び込まれたのだろうか。


 だとしたら、ここは一体──。


 今度は身体に意識を向ける。胸の痛みは既にない。状態は落ち着いている。


 これなら屋敷に帰れるはず……。


 そのことを確認し、ゆっくりと身体を起こした。その時──。


 部屋の扉が開く音がした。


「おっ、目が覚めたかい?」


 軽い調子の声と共に部屋に入ってきたのは、見知らぬ少年だった。


 人懐っこい笑みを浮かべながら、彼は迷いなくこちらへ近づいてくる。


「目が覚めて良かった~。夜の庭園のベンチで倒れているのを見つけた時は、死んでるのかと思って焦ったよ」 


 どうやら彼が、庭園で倒れた私を助けてくれたらしい。


「そうだったのね、ごめんなさい……」


 迷惑をかけてしまったことを謝ると、少年は気にした様子もなく、手慣れた仕草で私の脈を取り始めた。その様子を見ながら、私は尋ねる。


「それで、あの、ここは……?」


 部屋の中は陽光が差し込んでいて、とても明るい。どうやら私は、一晩ここで眠ってしまったようだ。


 セルディオ様にも、屋敷の者にも何も言わず、無断外泊をしてしまうなんて……。


 こんな事は今まで一度もなかっただけに、屋敷では大騒ぎになっているかもしれない。リシテアを始めとする使用人達も心配しているだろう。


 胸の奥がじわりと落ち着かなくなる。


 どうにかして、私が今いる場所を屋敷の者に知らせないと……。


 そう考えていると、脈を取り終えたらしい少年が、顔を上げて質問に答えてくれた。


「ここはね、いつもお姉ちゃんが通ってる、偏屈爺さんがやってる医院──」 


 その時、少年の声を遮るように、部屋の入り口から怒声が飛んだ。


「こらシル! 偏屈爺さんとは一体誰のことだ!」

「ヤッベ……!」


“シル”と呼ばれた少年は、肩をすくめるとサッと私から距離をとった。そしてベッドの傍らに立ち、姿勢を正して声を張り上げる。


「先生! 患者さんの脈は正常です! 今のところ、これといった問題はありません!」


 先ほどとは打って変わって真面目そうな態度になった少年に、思わず笑いが漏れる。


 すると彼は、少し顔を赤くして「笑わないでくださいよぅ……」と小さな声で抗議してきた。


「だって……ふふっ」


 笑っている私に近づいてきた先生は、いつの間に手にしていたのか、両手でトレイを持っていた。それをサイドテーブルに置くと、優しい声で話しかけてくる。


「そのような笑顔が出るぐらいなら、ひとまずは大丈夫そうですね。ですが……無理は禁物です。今日はここでゆっくりしていってください」

「ですが──」


 屋敷のみんなが心配しているため、私は帰らないと──と言おうとしたのだけれど。


「医師の言うことは素直に聞くものです。大人しく従ってください」


 と言われてしまえば、それ以上何も言えなかった。












 

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