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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第二章 現在

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セルディオの不満

 ニーナがいない──。


 リンカとのダンスを終え、会場を見回せば、妻の姿はどこにもなかった。


 ......なぜだ。


 先ほど、会場へ戻れと伝えたはずだった。なのにどうして戻っていない? 


「奥様だったら、どっかその辺に紛れてるのかもよ?」


 無邪気な顔でリンカが言うが、僕にはそうは思えない。


 なぜなら、僕がニーナを見逃すなど絶対にあり得ないのだから。ニーナであれば、この会場内のどこにいようが、一発で見つけられる自信がある。


 なのに、いないということは──。


 胸の奥で、じわりと苛立ちが膨らむ。


 こんな事は、今まで一度もなかった。彼女はいつも従順で、僕がそうしろと言えばそうするし、待てと言えば待つ。少なくとも、自分の判断で僕の意思を無視するようなことはなかった。


 だというのに、どうして今回だけ──。


 リンカと()()()()ダンスを踊るというだけでは足りない。その姿をニーナの目の前で見せつけ、嫉妬に顔を歪ませる様子を眺めてやろうと思っていた。僕を愛しているのなら、きっと面白い反応を見せるはずだと。


 だが、これでは効果が半減だ。何も面白くはない。


「……おい、妻はどうした?」


 会場内に戻っていた従者へ問いかける。すると彼は、わずかに肩を震わせながらこう答えた。


「奥様でしたら、すぐに自分も戻るからと仰って、私を先に──」

「何だと!?」


 その瞬間、頭に血が上った。


 妻を連れて戻れと言ったのに、置いてきただと?


 なぜ勝手にそんなことを……。


 しかも、ニーナもニーナだ。


 従者を先に帰し、自分は残るなど。誰がそんな勝手を許した。僕の言葉に従うのは当然のことなのに。


 胸の内で、怒りが一気に膨れ上がる。


 その時の僕は、もはや周囲の視線など気にしていられなかった。


「何をやっている! 早く妻を連れ戻せっ!」

「は、はいいぃぃぃっ!」


 僕の怒鳴り声に怯えた従者が、慌てて会場を飛び出していく。


 その背中を睨みつけながら、僕は苛立ちを噛み殺した。


 あの男は……戻ったら降格だな。従僕からやり直させる必要がある。主人の命令ひとつ満足に遂行できない従者など不要だ。


 そもそも、ニーナをあの場に残した時点で失格だった。僕の従者であるならば、僕が普段どれほどニーナを大事にしているかを知っていてしかるべきなのに。


 あんな肌寒い庭園にニーナを一人置き去りにするなんて。万が一風邪でも引いたらどうする。どこぞの男に言い寄られでもしたら。


 少し考えれば分かることだろうに。


「……ったく、本当に分かってない……」


 ぶつぶつと不満を漏らしながら、僕は果実水を一気に煽った。

  










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