納得できない
独りぼっちで夜の庭園へと出てきた私は、噴水近くにあったベンチへと腰を下ろした。
噴水が流れる音を聞き、星空をぼんやり眺めていると、先ほど見た光景が頭の中に浮かんでくる。
「セルディオ様……」
いつリンカ様と出会ったの? 彼女を選んだ理由は何? 二人の関係はどういうものなの?
聞きたいことは色々あれど、何一つとして彼に尋ねた事はない。変に尋ねて「リンカ嬢を愛している」なんて言われようものなら、精神が崩壊してしまいそうだから。
ずっとずっと、セルディオ様だけを見つめてきた。彼以外の人を好きになった事なんてなかった。
けれど彼は、そうではなかったというの……?
「私のことを、放っておけないと仰ってくださったのに……」
あれはまだ、私達が学園生であった頃の言葉だったけれど。
あの時はまさかこんな風に、自分が放置される未来がやってくるなんて予想だにしていなかった。
もし知っていたら──自分はあの時、セルディオ様のことを諦めることができただろうか。
将来は放置されるのだからと、彼から離れることができただろうか?
考えて──力なく首を横に振った。
それでも私はきっとセルディオ様のことを諦められなかったに違いない。少しでも傍にいられるのなら、彼の妻として幸せな時が過ごせるのなら──と現状を受け入れていただろう。
「だって私は、今もこんなに……」
胸の上で手を合わせ、ぎゅっと強く握り込む。
彼を想う気持ちだけなら、絶対誰にも負けていない自信があった。
そして、セルディオ様も自分と同じ気持ちなんだと信じて疑わなかったからこそ、彼の気持ちが簡単に離れてしまったことに驚きを隠せなかったのだ。
たった一月、身体を重ねなかっただけなのに。その一月で全てが変わってしまうだなんて。
その期間中、普段と変わった事といえば、彼との子作りをやめたことだけだった。それ以外はベッドだって共にしていたし、食事だって毎回一緒にして、執務だって変わりなくこなしていた。
ただ子作りをしなくなった──身体を重ねなくなった──というだけで、男の人の気持ちはこうも容易く変わってしまうものなのだろうか?
そんなはずがない──と心のどこかで叫ぶ自分がいた。だってセルディオ様は、そんな人ではないはずだから。
確かに夫婦として、愛し合う男女として、情を交わし合う行為が重要でないなどと言うつもりはない。それでも、ただそれだけの理由では納得できないという思いもあった。
セルディオ様の態度が変わった本当の理由さえ分かれば、改善のしようもあるかもしれないのに……。
そうでなければ、自分が信じ続けてきたもの全てが嘘になってしまう。
だから私は、未だ不仲にあった理由が別にあるのだと信じ続けていた──。




