傍にいる女性
そんな、どうしよう、やっぱりセルディオ様にも縁談は来ていたんだわ。
本人の口から聞いたことにより、急に焦りと不安が生まれ、私はつい彼の服を握りしめてしまう。
そもそも悪いのは、父に縁談の話をされるまでその心配を全くしていなかった私だけれど、セルディオ様はどうして自分に来ている縁談の話をしてくれなかったんだろう? 少なくとも最初の縁談が来た時に私にその話をしてくれていれば、今更こんな風に慌てることもなかったような気がするのに。
その疑問をそのままセルディオ様へとぶつけると、彼はぽん──と私の頭に手を置いて、「君に余計な心配をかけたくなかったんだ」と言った。
「僕に来た縁談の話は、僕自身でどうにかするつもりだったし、君には僕との結婚のことだけを考えていてもらいたかったからね」
と──。
そう言われてしまえば、もうそれ以上彼を責めることはできなくて。
「分かりました……。けれど一つだけ聞かせてください。セルディオ様は、私以外の方と結婚するつもりはありませんよね? 家のための政略結婚をどうしても断りきれず……なんて事はありませんよね?」
不安を隠しきれずに尋ねると、眩しいほどの笑顔が返された。
「当然じゃないか。僕の妻になる人は君以外にいない。僕にとって君以外の存在は、全て取るに足らないものでしかないのだからね」
「セルディオ様……!」
言い終わると同時に抱きしめられ、幸せを噛み締める。
彼を好きになって良かった。こんなにも素敵な人、絶対に他にはいない。
平凡な子爵令嬢の私が、誰もが羨む公爵令息であるセルディオ様と結ばれることができるなんて。
その時の私は、自分が世界一幸せな女性なんだと信じて疑いもしていなかった。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
そして現在──。
学園でのあの言葉は嘘であったかのように、セルディオ様は私以外の女性へと優しい眼差しを向けている。
たった半月──二週間と少しの間すれ違いが続いただけで、彼がこうも簡単に他の女性へと心変わりし、私から離れていくなんて思いもしていなかった。
私だけを愛してくれると言ったのに。私以外の存在は、取るに足らないと言っていたのに、あの言葉は嘘だったのだろうか。
「もう……無理……」
夫とリンカ様を見ているのが辛くなり、私は涙を堪えて背を向ける。
学園生であった頃は、今よりもっと酷い喧嘩をしても、心がすれ違っても、彼が私以外の女性を傍に置くことはなかった。
でも、今は──。
結婚して一年経った今は、こうも簡単に他の女性を傍に置くなんて。
どうしてなんだろう。
私には、彼の心の内が全く分からなかった。




