セルディオの考え 2
意外なところでニーナにやり返すチャンスを得た僕は、腹の底からじわじわと喜びがせり上がってくるのを感じていた。
実際にやり返すべき相手はニーナではない。彼女の父親であるココット子爵だ。それは分かっていても、下手に子爵に手を出せばニーナの生活に影響を及ぼしてしまう可能性がある。
だから申し訳ないが、彼女には父親の代わりに少しだけ報復を受けてもらうことにした。
報復といっても、酷いものではない。ただ単に、普段の僕が感じている気持ちを、多少彼女にも味わってもらうだけのことだ。
可愛いニーナ、ごめんよ。けれど僕もやられっぱなしというのは性に合わないんだ。
心の中で彼女にそっと手を合わせ、気づかれないよう息を吐く。
常々僕は考えていた。
いつもは僕ばかりが彼女を狙う羽虫に気をつけ、僕以外の選択肢が彼女の頭に浮かぶことのないよう、気を遣いまくっている。しかし、彼女はどうだ?
ニーナは僕と同じように他の令嬢達にヤキモチを焼き、僕へ近づくことがないよう気を配ったことはあるのか?
答えは恐らく──否、だ。
彼女は僕と恋人になれただけで満足してしまい、他の令嬢達のことなど気にかけてもいない。それは良く言えば、僕自身が彼女に信頼されているということになるから、別に悪いわけではないのだが。
「少しぐらいはヤキモチや嫉妬をしてもらいたいと思うのは、悪いことなのだろうか……?」
思わず声に出して呟くと、ニーナがきょとんとして首を傾げた。
「え? セルディオ様、今なにか仰いました?」
ヤバい──と思い慌てて口を押さえるも、聞こえていなかったことを知り、安堵に胸を撫で下ろす。
聞かれていなくて良かった……。思ったことをつい口に出してしまうだなんて、僕もまだまだだな……。
自らの反省点を頭に浮かべつつ、ニーナに対しては何事かを考えるそぶりでもって、先ほどとは違う言葉を口にのせた。
「ああ……いや、僕への縁談だったら、確か有力貴族からのものが幾つか来ていたような気がするな……ってね」
「えええっ!?」
叫んで顔色を青くするニーナを見て、内心でほくそ笑む。
ああ、気分が良い。恋人に心配されるって、こんなにも気持ちの良いものだったんだな。
それを今まで知らなかっただなんて、人生を損した気分だ。
でも……そうだな。恋人からのヤキモチや嫉妬がこんなにも気分の良いものなら、今後はちょくちょくしてもらおうかな。
何せ今までは、僕だけが一方的にヤキモチや嫉妬をしてきたのだから。少しぐらいニーナにしてもらったところで、罰は当たらないよね。
僕ばかりが嫌な思いをして、ニーナは全く嫌な思いをしないというのは不公平だ。
そんな考えが脳裏をよぎった。




