セルディオの考え
「──というわけで、セルディオ様のご両親さえ私達の結婚を認めてくれれば、我が家としては何の問題もなさそうなの。今保留にしてる男爵家との縁談も、その時点でお父様がお断りしてくれるらしいから、心配はいらないそうよ」
嬉しそうに笑顔で話すニーナを見つめながら、僕は「そうか。それは良かった」と微笑みを返す。
それを見た彼女は褒められた犬のように瞳を輝かせるが、正直僕の内心は、グツグツとマグマのようなものが煮えたぎっていた。
ニーナに男爵家との縁談だって? 彼女には僕という相思相愛の恋人がいるのに? ココット子爵は一体何を考えているんだ?
公爵令息と子爵令嬢の恋愛など、学園に通う間だけの遊びなのだと思われたのだろうか。学園では恋愛ごっこを楽しんで、卒業したら互いに然るべき相手と婚姻を結ぶのだと──。
だから事前にニーナを他の男と婚約させようとした? 冗談じゃない。僕以外の男に彼女を渡してなどやるものか。
「ニーナは絶対誰にも渡さないから、男爵家との縁談なんて断ってしまえばいいよ」
微笑みながら、付け足した。
内心では、「早く断れ」と圧をかけまくっていたのだが。
少し──いや、かなり鈍い彼女は僕のそんな圧に気づかず、「誰にも渡さないなんて……」と頬を染めて喜んでいる。
うん、そこで喜ぶのは結構なんだけれどね、僕の苛立ちはおさまらないんだ。
かといって、どうしたらこの苛立ちを解消できるものか──と考えていると、突然ニーナが僕の服の袖をぐいと引っ張った。
「え……なんだい?」
驚いて彼女を見れば、先ほどまでの嬉しそうな表情からは一転して、物憂げな表情をしている。
あまりにも唐突な変わりように、どうしたのかと問えば、ニーナは泣きそうな顔で口を開いた。
「あの……セルディオ様は、私以外の令嬢との婚約話って……出ているんですか?」
その瞬間、間髪容れずに「まさか、そんなことあるわけないだろう?」と言いそうになった。が、すんでのところでそれを堪えた僕は、じっとニーナの顔を見つめる。
「……ニーナ、どうして急にそんなことを?」
問い返せば、彼女は不安そうな表情で「だって、私に縁談が来たってことは、多分セルディオ様にも同じように縁談が来ているのだろうなって思ったから……」と答えてくれた。
ふうん、そういうことか。
子爵家の自分に縁談が来るぐらいだから、公爵家の嫡男である僕には、更に多くの縁談が来ているに違いないと考えて不安になったと。可愛いな。僕はニーナ以外の女性を妻に迎えるつもりなんて全くないから、そんな心配はいらないのに。
だけど……そうだな。これは少しだけやり返すチャンスなんじゃないか?




