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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第四章 一年後

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救い

 私を守るように立つ二人の姿に、胸の奥がじんわりと温かくなる。


 けれど、いつまでも守られてばかりではいけない。


 私は今日、セルディオ様にきちんと別れを告げるために、ここへ来たのだから。


 そう思い直し、私は二人にそっと目配せをした。


 リシテアとシルは少し迷うような表情を見せたものの、やがて静かに脇へ退いてくれる。


 私は車椅子を進め、セルディオ様の正面で足を止めた。


「元をたどれば、私があなたに真実を話せなかったことも、このすれ違いの原因でした」


 セルディオ様は黙って私を見つめている。


「私はあなたを愛していました。信じているつもりでもいました。でも、本当に信じていたのなら、一番大切なことを隠したりはしなかったはずです」


 胸が締めつけられる。


 それでも私は、最後まで目を逸らさなかった。


「病気を打ち明けたら、同情されるかもしれない。公爵夫人として役に立たないと思われ、離縁されるかもしれない。そんなことばかり考えてしまって……怖くて言えませんでした」


 私は小さく息を吐き、静かに頭を下げる。


「ごめんなさい、セルディオ様。私は最後まで、あなたを信じ切ることができなかった……」


 私はそっと彼の手を取ると、少し冷えたその手を両手で包み込み、額へと寄せた。


「あなたからは、たくさんの愛情をいただいたのに……私は最後まで、それに応えきれませんでした。本当に、ごめんなさい」

「ニーナ……」


 掠れた声が、私の名を呼ぶ。


 次の瞬間、セルディオ様は私と目線を合わせるように跪き、何度も首を横へ振った。


「謝らないでくれ……。謝るべきなのは僕の方だ」


 声は震え、今にも泣き出しそうだった。


「君は十分すぎるほど、僕を愛してくれていた。それなのに僕は、その愛を信じられなかった」


 セルディオ様は苦しそうに目を閉じる。


「君が体調を崩したと言った時も、専属医の診断だけで安心してしまった。本当に君を大切に思うなら、他の医者にも診せるべきだったんだ。そればかりか、嫉妬させれば気持ちを確かめられるなんて、愚かなことまで考えた。本当は、そんなことをする前に君の言葉を信じて、君の隣で支えるべきだったのに……」


 最後の言葉は、ほとんど嗚咽に近かった。


「僕は……夫として、一番大切なことが何一つできなかった……」

「セルディオ様……」


 静まり返った部屋に、セルディオ様の嗚咽だけが静かに響く。


 いつの間にかリシテアも、堪えきれないように涙を流していた。


「奥様……本当に、良かったですね……」


 その言葉に、私は小さく頷く。


 ようやく、セルディオ様と本当の意味で向き合うことができた。


 何も告げられないまま別れるのでもなく、何も言わずに逃げるのでもない。


 心の奥にしまい込んでいた想いも、伝えられなかった真実も、すべて打ち明けることができた。


 だからもう、後悔はなかった。


 もちろん悲しみが消えたわけではない。


 それでも、最後にこうして互いの本心を知ることができたことは、何よりの救いだった。


 私はようやく、自分の足で――いや、自分の意思で前へ進むことができたのだ。


 その事実だけが、静かに私の胸を満たしていた。
















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