告白
「ありがとうございます。それが聞けただけでも十分です……。私は、ただ冷遇されていたわけではなかったのですね。セルディオ様にも、きちんと事情がおありだった。なのに私は何も知らず、ただ冷たくされているのだと思い込んでいました。……もう少し私が、自分の気持ちを素直に伝えられていたら良かったですね」
「ニーナ……すまなかった。本当に、すまなかった」
セルディオ様は何度も謝り、そのたびに深く頭を下げる。
その声も、その態度も、心の底から悔い、私に許しを請うていることが痛いほど伝わってきた。
きっとセルディオ様は、私がいなくなってから何度も後悔したのだろう。
謝りたくて私を探し続け、それでも見つけることができず、眠れぬ夜を幾度も過ごした。
そうして心身ともに疲れ果てた結果が、今のやつれた姿なのかもしれない。
そう思うと、申し訳ないのは私も同じだった。
病気のことを打ち明けることができず、理由も告げないまま一方的にセルディオ様との閨を拒み続けた。
突然拒まれたセルディオ様は、どれほど戸惑い、苦しんだのだろう。
「体調が悪い」という言葉だけでは、納得しきれなかったに違いない。
だからこそ、私の本心を確かめようと、嫉妬させるためにリンカ様を傍へ置き、わざと私を冷遇した。
そうすれば、私が感情を見せてくれるかもしれない。
そんな不器用な願いを、彼は抱いていたのかもしれない。
ならばやはり──今こそ、彼に私の病気を打ち明けるべきなのだと思えた。
「私は……セルディオ様のことが、とても好きでした。心から愛していました。でも、だからこそ言えなかったことがあるのです」
私は意を決して、その話を切り出した。
ずっと伝えようと思っていた。
それなのに、どうしても言えなかった。
このことを話せば、セルディオ様の態度が変わってしまうかもしれない。
私への愛情が、同情へと変わってしまうかもしれない。
そう思うたびに怖くなって、最後まで打ち明けることができなかった。
でも、今なら分かる。
あの頃の私は、セルディオ様を心の底から信じ切れてはいなかったのだと。
本当に信じていたのなら、どんな結果になろうとも、自分のすべてを打ち明けることができたはずだから。
先生やリシテア、そしてシルと共に過ごす中で、私はようやく、本当の信頼とは何なのかを知った気がした。
私はただ、セルディオ様に身を委ねていた。
彼の隣にいることが心地良くて、彼に頼って生きることが当たり前になっていただけだった。
それは信頼ではなく、甘えだったのかもしれない。
もちろん、セルディオ様を愛していた気持ちに偽りはない。
あの想いは、今でも本物だったと胸を張って言える。
けれど、愛していることと、相手を心から信じることは同じではなかった。
私は、その違いを知らないまま、彼の隣に立っていたのだ。
「今日はもう、何も隠しません」
私は静かに息を吸い込んだ。
胸の奥が少しだけ痛む。
それでも、もう怖くはなかった。
「セルディオ様には、すべてを知っていただきたいのです」
セルディオ様は何も言わず、私の言葉を待っている。
その表情には焦りも苛立ちもなく、ただ真剣な眼差しだけがあった。
私はそんな彼を見つめ返し、小さく微笑む。
「私が閨を拒み続けていたのは、あなたを嫌いになったからではありません」
「……っ」
「むしろ、その逆でした」
セルディオ様の肩が、ぴくりと震えた。
「私は……心臓病を患っています。そして、もう長くは生きられないだろうと診断されました」
「なっ……」
一言だけ漏らしたまま、セルディオ様は言葉を失う。
その顔からみるみる血の気が引いていく。
そんな彼に、私は安心させるように、そっと微笑みかけた。
「ずっと……言えなくて、ごめんなさい」




