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もしも私が死んだなら、あなたは後悔してくれますか?  作者: 迦陵れん
第三章 半年後

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リンカの勘違い

 痛い。怖い。逃げたい──。


 どうして自分がこんな目に遭わなければならないのか、アタシにはさっぱり分からなかった。


 だってそうでしょう?


 アタシは、ほんの少し嘘をついただけ。


 セルディオに愛情の裏返しで冷たくされながらも、いつまでも屋敷に居座り続ける奥様が邪魔で仕方なかった。


 だから、少し背中を押してあげようと思っただけだ。


 子供ができたなんて嘘だって、本当に夫婦がお互いを信じ合っていたなら、すぐに見抜ける程度のものだったはず。


 それなのに奥様は、その言葉を信じて屋敷を出ていってしまった。


 だからって、その責任を全部アタシに押しつけるのは違うと思う。


 確かに、最後の最後で奥様の背中を押したのはアタシなのかもしれない。


 だけど、その一歩で崩れてしまうほど追い詰めたのは、間違いなくセルディオ自身だ。


 自分がしてきたことから目を逸らしたい気持ちは分かる。


 だけど、全部アタシのせいにして、自分だけ被害者みたいな顔をするなんて、おかしいでしょう?


 責めるなら、まずは自分が奥様に何をしてきたのかを思い出すべきだ。


 だからアタシは、違うと言いたかったのに──。


 セルディオは、アタシの話など最初から聞くつもりはなかった。


 奥様を失った被害者であるかのように振る舞い、ただひたすらアタシを責め立てる。


 まるで誰かを悪者にしなければ、自分の過ちと向き合えなくなるかのように。


 こんなの、愛情なんかじゃない。


 ただの癇癪だ。


 大切なおもちゃを失った子供が、自分の非を認められず、八つ当たりしているだけ。


 自分が悪いくせに、それを受け入れられなくて、責任を他人へ押しつけている。


 これが未来の公爵様のすることなんだろうか──。


「とにかく、今すぐニーナのところへ行け。子供のことは嘘だったと正直に話せ。そして、あいつを連れ戻してこい」


 今度は、そんな無茶な命令まで口にした。


 けれどアタシは、ゆっくりと首を横に振る。


「無理よ……。奥様がどこにいるのかも分からないのに、そんなこと──きゃあっ!」


 言い終えるより早く、胸ぐらを乱暴に掴み上げられた。


「口答えは許していない。お前は黙って、僕の言うことだけ聞いていればいい」


 冷え切った声だった。


 そこには、ほんの少しの優しさも、情もない。


 なんなの……これ。


 セルディオが、こんなにも横暴な人だったなんて。


 そして次の瞬間、用済みになった荷物でも放り捨てるように、アタシの身体は床へ投げ出された。


 痛みよりも先に、胸の奥で何かが音を立てて崩れていく。


 こんなの……愛情なんかじゃない。


 一度は「もしかしたら愛されているのかもしれない」と期待したこともあった。


 だけど、それは全部、アタシの勘違いだった。


 奥様への執着と、自分への扱い。


 その違いを見比べれば、答えなんて嫌でも分かる。


 セルディオにとってアタシは、最初から最後まで──都合よく利用するためだけの駒でしかなかった。









 

 


 

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