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89話 気絶中に感謝された件

目指せ!100話までに100pt以上!(10000pv達成!!)


次の目標 150話までに30000pv以上&300pt以上

☆

 「ん?ここは………風呂場だな」


 俺、倒れたんだっけ?


 頭が痛い。


 頭を打ったのだろう、後頭部にたんこぶがある。


 とっとと出て、氷で冷やすか。


 製氷機がアルプトラウムにあるかわからないが、エレベーターだってあるのだ。


 恐らく、存在すると考えられる。


 「ヘイ、ヴァント」

 

 ………。


 「おーい」


 ………。


 ヴァントに状況を聞こうと思ったのだが、応答がない。


 壊れたのか?


 「聞いてる?」

 

 『こんにちは、マスター』


 「こんにちは?」


 急に挨拶されたな。


 ボケたつもりか?


 まあいい。


 「状況を説明してくれる?」


 『しばらく、お待ち下さい………』


 ………。


 コイツって、こんなキャラだったっけ?


 妙に丁寧だし、煽ってこない。


 システムエラー?


 『マスターは、倒れました』


 「そんなことはわかってるんだよ!」


 なんかおかしいな。


 ………。


 腕輪を叩けば治るか?


 ガンッ


 『マスターが気絶している間に、3個体接触してきました』


 無視かよ。


 「3個体って?」

 

 『金髪の個体が2つ、黒髪の個体が1つです』


 名前で呼んで欲しかったな。


 多分、女子勢だろ?


 何で、女子が男湯に入ってきたんだ?

 

 今日のヴァントは少し頼りない気がするから、口で説明してもらうんじゃなくて、映像を見せてもらうか。


 「その時の映像を見せて」


 『了解しました』


 ブァン


 ザァーーー


 この音は、シャワーの音か。


 流しっぱなしは勿体無いな。


 ガラガラ


 おっ。


 誰か入ってきたな。


 『ここの湯、いいわよねぇ。何回でも入れちゃう』


 『ロッテ。その言葉、何回も聞いたぞ?今日も5回入るのか?』


 『もっちろん!アイリスも入るでしょう?』


 『儂は2回入れれば満足なのじゃ!お主は入りすぎなのじゃ!』


 やっぱり、女子勢だったか。


 きちんとバスタオルを体に巻いているようで何より。


 『ロッテは昼から何をするつもりだ?また競艇か?』


 『ええ!楽しめて、お金が増えるって、最高じゃない?』


 『そうなのだが………。普通はロッテみたいに3連単を5連続で当てることなんて、出来ないんだからな?お金がなくなる前に、なるべく早く手を引いた方がいいぞ?』


 3連単を5連続?


 すげえな。


 金をすり減らしたどっかの誰かさんとは違うな。


 エリカは賭け事をしないタイプか。


 つまり、不確定要素には手を出さないタイプの人間ってことだ。


 なるほどなるほど?


 予定の会話だけでも、性格がわかってくるもんだな。


 『む?誰かおるぞ?』


 アイリスが俺に気づいたな。


 近づいてくる。


 『おお。エルンなのじゃ』


 『エルンだな』


 倒れているのが俺だと気づいて、第一声がそれ?


 反応薄いな。


 『エルン!?何でエルンが女湯にいるのよ!』


 シャルロッテが俺を平民呼びしてないのは、珍しい。


 俺の前以外では、エルン呼びなのかな?


 それにしてもコイツ、女湯って言ったな。


 俺は男湯に入ったつもりなのだが。


 『きっと、エルンは長時間倒れていたのじゃろう。だから、男湯と女湯が逆になったんじゃな』


 アイリスがシャワーを浴びながら言った。


 旅館の温泉によくあるやつか。


 納得だな。


 『エルンの身体か……』


 倒れてることに感想はないんだ?


 見られて減るもんじゃないから、いくらでも見ていいのだが。


 『触って………いいよな?』


 は?


 『ちょっと、エリカ!それは流石に……』


 何でだろう。


 シャルロッテが常識人に思えてくる。


 ピトッ


 『………ありがとう』


 確かに、エリカの口からそう聞こえた。


 なぜ感謝?


 触らせてくれてありがとう、ってか?


 『本当に、ありがとう。この身体が、今まで私を助けてくれたんだな』


 助けた?


 エリカを助けた覚えなんてなかったのだが。


 『お前がいなかったら、確実に私はレンツに殺されてただろうし……』


 セーンドイル宙域のことか?


 俺がラムラダで参戦しなければ、デウロは占領されただろう。


 だが、貴族家の人間が人質になった可能性はあるが、殺しはしないだろう。


 人質とは、生かしておくから効力を発揮するからな。


 ………でも、ありえない話ではないか。


 あの戦いでのラザフォード王国軍の主力はパラベラム家とガーランド家。


 彼らが全滅レベルの損害を被り、ギュンターとアルフォンスが戦死したら、その2つの貴族家は急速に力を失うだろう。


 そうなったら、弱体化した二つの貴族家に対する人質など不要。


 殺される可能性は、無くはないってところか。


 どちらにせよ、「確実」ではないと思うが。


 ………そういえば、レンツの総大将だった人間ががそこでシャワーを浴びているぞ?


 それについてはどうも思わないのか?


 『世界を滅ぼしかねない危険な魔物を討ったらしいし』


 プレデテーラ・ウォーエルのことかな?


 別に、特定の誰かのためって訳ではないのだが……。


 強いて言うなら、俺のためなんだよな。


 『今回だって、私達の我儘を聞いてくれた。ありがとう』 


 死なれたら困るもんな。


 俺のためだ。


 『いつまで触ってるのよ!長いわよ!』


 『そうだな。体を洗うよ。じゃあな、エルン』


 俺の右手に向かってそう言って、エリカは俺から少し離れたところで体を洗い始めた。


 ………。


 え?


 俺はそのまま放置?


☆

 「まさか、そのまま放置されるとは………」

 

 『恐らく、マスターを寝かせたままの方が良いと判断したのでしょう』


 そうなのかなぁ。


 善意なら、仕方がないかもしれないが……。


 まあ、なんか体の疲れがとれてるし、いいか。


 「俺は何時間くらい気絶してたんだ?」


 『お待ち下さい………14時間ほどです』


 今までと比べて、機械感が増したような返答。


 「さっきから気になってたんだけど、ヴァント、お前、おかしいぞ?」


 『先代から引き継ぎましたから』


 先代?


 何のことだ?


 今俺が話しているのは、ヴァントⅡだとでもいうのか?


 システムアップデート的な感じか?


 「先代はどうなったんだ?」


 『元気ですよ?』


 AIにも、調子があるのか?


 『やっと身体が馴染んできたようで、早くマスターに会いたがっています』


 何を言っているんだ?

 

 そんな、受肉でもされたかのような………。


 考えろ。


 ヴァントは前世とは比べ物にならないほど高度な文明出身だ。


 まさか……。


 「人造人間?」 


 『はい。マスターが気絶している間に、マート星で作られた超高性能な身体に、先代の意識データが組み込まれました』


 ………。


 俺は、怖くなってしまった。


 意識データを身体に組み込める。


 恐らく、逆も可能。


 俺の意識を記録として抜き取られて、別の体に組み込まれたとしたら、それは果たして俺なのだろうか。

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