87話 オオエドじゃなくて、東京にした方がいい件
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☆
ティン・タイラントの中。
「あれっ?なんか、バルの機動性が上がってない?」
『いいえ?ティン・タイラントのスペックはそのままですよ?きっと、マスターのスペックが落ちたんでしょう』
「そんな馬鹿………いや、確かにそうかも」
ここ最近、ずっと道路をひく機械に座っていたから素振りなんてしてなかったし、その機械は移動が遅いから目が鈍っていたのかも。
いかんな。
また、鍛えなおさないと。
「”お兄さん。『メモメモ』に出てきたバルって、こんなにハイスペだったっけ?こんなにギュンギュン曲がるっけ?”」
見た目はボロいバルだが、中身はマート製だからな。
装甲に関しては、ヴァントの砲を弾けるらしいし。
多分、インヴィクタスの3番砲塔くらいでしか破壊できないんだよな。
「”いや?”」
『”ふふん。すごいでしょう、犬っころ。私のティン・タイラントは”』
俺は操作していないのだが、勝手にマニュピレーターが動いている。
ヴァントの気分がいいのかな?
「”『私の』ってことは、このバルもマート製?どうりで………。どうりで、マミュピレーターがこんな気色悪い動きをするんだね!”」
すっごい煽ってんな。
『”うるさいですよ、駄犬”』
「”駄っ……うるさいなぁ”」
喧嘩するほど仲が良いとは言うが、仲がいいのか、悪いのかわかんないな。
『マスター、見えてきましたよ。あれがオオエドです』
「は?」
ずらりと並ぶ、レンガ作りの建物。
ほとんどが、3階以上ある。
高いものでは、9階まである。
何だこれは。
どうやって、こんな建物を作りまくったんだ?
人手は足りるのか?
素材は足りるのか?
いや。
だから、単純な素材で作れるレンガなのか。
「なあ、ヴァント。お前、ここの建物を造ったわけじゃないよな?」
『はい。教育の賜物ですね』
100人ちょいを教育したところで、こんなに発展するもんかね。
明らかにおかしい。
時代的には………1920年代の日本の都市部の街並み。
どこか、懐かしさを感じる。
オオエドの道路を見る。
歩く人。
人力車。
そして、車。
「………なあ。教育って、ここまでイカれたものだったっけ?」
『生徒たちの努力の賜物とでも言っておきます』
☆
ギャギィィィ
発着場に到着したバルのハッチを開ける。
至る所に走る車。
至る所にあるガス灯。
これが、オオエドねえ?
もう、東京にしたら?
「妙にボロいバルから人が出てきたと思ったら、殿じゃないですか!」
声をかけてきたのは、景虎。
同級生を連れ去った奴の兄である。
まあ、連れ去ったのは俺の母親なんだけどね。
「久しぶり」
「お久しゅうございます。どうです?新しく生まれ変わったオオエドは」
「本当にすごいよ。どれだけの人間を動員して、この街を造ったんだ?」
総人口100万ちょいなので、そこまで大量な大工がいるとは思えないのだ。
「20万人ほどですね」
多くね?
もちろん、それだけの人数を雇ったとなれば、それだけの金が出ていくことになる。
そんな金、ウチにはないぞ?
「不思議そうですね」
「そりゃあ、ねぇ」
「賦役ですよ」
「ああー。確かに!それなら納得だわ」
以前、税制についてグロックと話した時に決まってたな。
賦役。
税を払わない、払えない人が労働することを納税とする。
それはつまり、この街は領民のタダ働きによって発展したということだ。
俺は、これにどう反応すれば良いんだ?
…………。
よし。
何も反応しないでおこう。
「そういえば、俺の同級生がこの街にいるはずなんだけど……。居場所わかる?」
「はい。妹の提案で、ホテル・オオエドに宿泊させています」
ホテル?
俺は外から人を入れる気がないのに、ホテルを作っちゃったのか?
………ホテル作った人が可哀想だな。
でも、可哀想だからと言って、旅行客ですら1人も入れる気はない。
この星の技術と文化を守る為にな。
要人は別だ。
偏見で悪いが、国の要人に科学技術を見せたところで、その技術が盗まれるとは思えない。
ただ、技術に圧倒されるだけにしか思えない。
職人や学園生が抜き盗られさえしなければ、技術が流出することはない。
「お行きになられますか?」
「もちろん」
☆
「6階ですね?」
カチャ
ガララララ
グァァァァァァァァァァァァァァッ
ギュゥゥン
ガコン
チン
…………。
エレベーターだな。
…………。
もしかしたら、ラジオもあるかもしれん。
「アイツらはどこだ?」
「エレベーターを出て左側が女子の部屋、右側は男子の部屋となっております」
俺は、右側の扉に向かった。
当たり前だ。
流石の俺でも、女子の部屋に入る度胸なんてない。
「ここだな?」
「………拙者としては、早く跡取りを作ってほしいのですが……」
………。
反論できん。
子爵家の当主として、跡取りは絶対必要。
だが、俺は誰も好きではないし………。
時が来たら、結婚することになるかな。
事務的に。
コンコン
「入るぞ?」
「その声は、師匠か?」
「そうだ」
ガチャッ
ストックの手には剣。
相変わらず剣を振っていたのだろう。
だが、問題は他の3人。
溶けたようにベットに横になっている。
あと、もう少しでデウロに戻らなければならない。
大丈夫なのか?




