82話 寝る時名物な件
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「よーし。行くぞ」
「はーい」「わかったわ!」「うい」「おう!」
………。
何人か被ってはいるが、ここまで統一感がないもんかね。
「エルン。何に乗ってその……ナイトメア星系まで行くんだ?」
エリカの疑問はもっともだ。
俺がそう簡単にラムラダ等の超兵器を見せるわけないからな。
「ああ、これで行く」
俺が指を指した先にあったもの。
それは、アルプトラウムにある元レンツの魔導フリゲートの1隻だ。
俺が「一週間後」に集合をかけたのは、この船を待つためだったのだ。
「何これ!この私が、こんなショボい船に乗らなきゃいけないの!」
「なら、ついて来なければいいじゃん」
「何ですって!」
だってそうじゃん。
本当は連れて行きたくなかったのに連れて行くんだから、文句を言わないでくれ。
「殿!お待ちしておりました」
フリゲートから出て来たのは、もちろん元レンツ兵。
そのはずなのだが……。
「何で俺のことを『殿』って呼ぶんだ?」
この呼び方は、ヤワチ人しかしないはずなのだが。
元レンツ兵なので、アイオワの「同志」呼びが感染るならわかる。
なぜ「殿」なんだ?
「それはですね。この前、子爵の呼び方を決める領民投票がありまして、その結果『殿』になったからです」
「それは1人一票?」
「もちろんです」
…………。
それ、あれだろ。
ヤワチ人の人口が約100万で元レンツ兵が5万だから、マンパワーでそうなっただけだろ。
「ふーん。他にどんな呼び方が候補にあがったんだ?」
「そうですね。『若』、『男爵』、『子爵』、『エルンちゃん』、『解放者』、『神』あたりがそこそこ票を稼いでましたね」
「若」はわかる。
俺は若いし、一応ヤワチ人の王族だからな。
「男爵」「子爵」は、まあ、爵位で呼ばれるって考えたら違和感はない。
実際、国王からは時々爵位で呼ばれるからな。
俺の爵位が変わったらどうすんの、っていうツッコミはあるんだけど。
「エルンちゃん」は………お袋の案だろうな。
票が集まった理由はあれだろ。
お袋がオオエドで宣伝でもしたんだろ。
「解放者」に「神」?
それは、強いて言うなら、肩書きじゃないか?
ふざけてる?
街でそう呼ばれる俺の気持ちにもなってみろ。
超恥ずかしいわ。
「エルンちゃん」も大概だが。
これらに投票しなかった領民に感謝である。
☆
「なあ、エルン………。流石に……ベッドが狭すぎやしないか?」
わかるぞニック。
俺も今、思っていたところだ。
コルベットは前衛艦。
小さい船体に航行石だの魔法陣だのをなるべく大量に詰めるのだ。
寝場所が狭いのは当然か。
でも、ここまで狭いもんかね。
感覚的には、前世で海自の退役済みの潜水艦に入る機会があったのだが、そこのベッドに似ている。
悪い夢でも見て飛び起きたら、頭を強打しそうなレベルだ。
「そうかな。俺らからしたら、これぐらい大丈夫なんだけど」
「うんうん」
本当に三男坊ズはたくましいな。
「師匠!これでは、寝る前にベッドで剣を振れないじゃないか!」
「普通は振らないでしょ」
そんな、「寝る前に本を読む」みたいな感覚で言われてもねぇ。
「なあ、エルン」
「ん?どうした、ハンス?」
「お前は、誰が好きなんだ?」
学園の友達が集まって寝る時名物、恋バナ。
修学旅行か?
コイツらにとっては旅行ではあるか。
俺にとっては帰宅だけど。
前世の修学旅行で、同じ部屋だった奴に恋バナをされたことがある。
あの時の空気は最悪だったな。
急にそいつが泣きだすし。
俺はそいつを宥めるのに必死だったな。
そいつの言いたいことを真正面から聞き続けた結果、朝の4時まで起きてたっけ。
で、そいつは次の日に告白しに行って、見事に玉砕してたっけ。
ちなみに、その時に俺の好きな女子を聞かれた。
俺は、「いない」と答えた。
これは、本音である。
間違えないで欲しいのだが、俺はアッチ側ではない。
ただただ、人間というものに興味が無かったのである。
何で、俺の時間を縛られなければいけない?
何で、誰かを愛さなければいけない?
誰かから好意を受けるのは構わない。
俺が好意を持つ必要はないからな。
俺は、生物としては欠陥だった。
遺伝子を残す気がなかったんだから。
それは、この世界でも同じである。
「好きな人なんていないよ」
「私は剣が強い人が好きだ!」
そうか、ストック。
なら、サーシャあたりがいいんじゃないか?
めちゃめちゃ強いぞ?
「僕は……王国の役に立つ人間なら誰でも……」
「真面目かよ」
おっと、声に出てしまった。
「ああ、悪いか?……王族に生まれたからには、自由な恋愛なんて……できるわけないしな」
確かに。
基本、国王にとって、子供たちは王国のための道具だからな。
「おい、ハンス。お前が聞いたんだから、お前も言えよ?」
「俺は…………。うーん。好きになったところで、身分が釣り合わない人ばっかりだから、なるべく考えないようにしてる」
「そうか……」
意志を抑えるのは辛いからな。
考えないようにするのは合理的か。
上から聞こえるカイルの寝息を聞きながら、俺は眠りについた。




