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80話 とんでもない事をしたらしい件

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 あの戦闘の後、王宮に呼ばれた。


 面会室に入ると、国王の目の下は黒かった。


 寝れてないんだろうな。


 「エルン男爵。お主、とんでもない事をしてくれたな」


 「何がっすか?正当防衛でしょう?」


 「それはそうなのだが……。まず、ウェッソン公爵家の当主、マイケルが戦死。その他2伯爵家、5子爵家、14男爵家の当主も死亡した」


 相当な数の貴族家がウェッソン家に味方したんだな。


 逆に言えば、それだけの貴族家を粛清できた事になる。


 「よかったですね」


 「どこがだ………。男爵は、大量の戦力も削った。つまり、辺境の対外防衛戦力が減ったという事だぞ?」


 「それはそうっすね。でも、数百隻で数万隻と十数万機を殲滅できる戦力を持った人間がいる国に攻めようなんて思いますかね」


 普通、返り討ちにされるのを恐れて、攻めてこないだろう。


 「うーむ。それはそうなのだが………」


 国王は悩んでいる。


 悩んでいるというより、呆れていると言った方が正しいか?


 「それとな、反乱の兆候が起こっている」


 「反乱、ですか?」


 「ああ。男爵の言った通り、ウッドペッカー男爵家が王家の腰巾着と思われているなら、各貴族家の人間は間接的に王家に当主を殺された事になるだろう?」


 王家が恨まれるのか。


 「でも、戦力は俺が削ったはずですよ?戦力なしに、どうやって反乱を起こすつもりなんすか?」


 「おおっと、武力による反乱ではない。我が王国に対する、非暴力、非服従運動をするつもりなのだ」


 ガンジーみたいだな。


 これなら、武力蜂起してくれた方がありがたい。


 何でかって?


 非暴力の人間を殺すと、民の不信感を募らせてしまうからだ。


 考えてみろ。


 何もしていない人間を殺す国の王に従いたいか?


 じゃあ、この解決策は?


 イギリスは普通に取り締まっていたんだがな。


 ………いや、待て。


 解決策を考える必要はあるのだろうか。


 なぜ、自分で全て解決しようとしてしまうのだろうか。


 なぜ、自分で全て解決出来ると思っているのだろうか。


 「グロック元宰相の倅は何と?」


 「あやつは、使い物にならん。何より、実践経験が足りてなさすぎる。あやつ、反乱を起こしそうな貴族家を廃して、中央から人間を派遣しようとかいうのだぞ?」


 ああ。


 確かに、それはダメだな。


 その行為は一見、中央集権化を目指しており、王権が強まるように思える。


 しかし、中央集権化に貴族家が従うだろうか?


 自分たちの立場を無くす素となる行為を、すべての貴族家が黙って見過ごすだろうか。


 下手すれば武力反乱が起きて、余計に王権が弱まる。


 まあ、宰相になって一年も経っていないからな。


 仕方ないか。


 「そこは、王家の威光でパァッとやっちゃって下さい」


 「お主では解決出来ないのか」


 「正直、お手上げです」


 「そうか……。わかった、暗部を使う」


 暗殺で、非暴力非服従運動の指導者を排除するのか。


 反乱を起こし”そうな”貴族家を排するのは良くないが、すでに運動を”起こした”のなら、排除して大丈夫か。


 また、指導者だけというのも素晴らしい。


 運動に従った人間と従わせた人間を同じ扱いするのは、流石に不公平だからな。


 あとは、運動が起きた所の統治をどうするか………。


 わからないな。


 王家直轄領にでもするか?


 デウロから離れすぎているが。


 まあ、暗部を使うと決めた国王のことだ。


 考えなしというわけではないだろう。


 「事故死に見せかけて下さいね?」


 「もちろん。ああ、そうだ、男爵」


 今度はなんだよ。


 「何すか?」


 「君、今日から子爵ね?これは、証明書だ」


 「は?」


 そんな、「今日の夕飯はカレーね」みたいな感覚で言われても。


 国王はニコニコしている。


 俺が嫌そうな顔をするのをみれて、満足しているのだろう。


 そんな、俺が嫌いかね。


 学園にて。


 「キャーー。エルン子爵よぉ」


 ………。


 予想してなかったな。


 陞爵を伝えられた時は、「権力が上がり、面倒ごとが増える」くらいにしか考えてなかった。


 面倒ごとの中身は考えていなかった。


 「’お兄さん……。前よりも追ってくる人が増えてるよ……’」


 「’やだなぁ。国王に言えば、解決するかな’」


 「’国王をそんな簡単に使っていいの?’」


 「’いいでしょ’」


 「’恐れ多さは感じないの?’」


 『’バカな犬ですね。マスターが恐れ多さを感じるなら、そもそも貴族家の人間との繋がりがどうしてもできてしまう学園になんて入学しないはずです’』


 「’確かに。お兄さん、先輩とかとも普通に友達みたいな感覚で喋ってそうだもん。失礼の塊みたいな?’」


 好き勝手言われてるな。


 でも、実際に前世では先輩の事を「年上な友達」としか考えていなかったんだよな。


 先輩はどう思ってたんだろう。


 「エルン子爵ぅ〜〜。待って下さいまし〜」


 「’しつこいなぁ!もう!’」


 『’当然でしょう。マスターに嫁げば、玉の輿確定ですからね。もしかしたら、妾でもいいと思っているかもしれません’』


 嫌だなあ。


 俺は全速力でアカリを走らせる。


 そして、学園の校舎の影に隠れた。


 もう、誰も追ってきていない。


 何とか撒いた。


 そう、思っていた。


 なぜか、上から人間が降ってきたのだ。


 そして、アカリの背中に着地。


 俺の顔を覗き込んで、どこかに行ってしまった。


 よくわからないノイズは、俺の人生に関わってくるのだろうか。


 出来れば、やめてほしいな。

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