78話 言ってしまえば粛正な件
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俺は、狼型になったアカリに飛び乗り、王宮に向かった。
なんでかって?
国王にリュカのことを言うためだ。
「うーっす」
「何奴!って、エルン男爵かよ。入っていいぞ」
王宮には何度も来ているため、王宮の警備兵とは顔見知りになった。
おかげで、事前に王宮に行くことを伝えなくても、顔パスで門を通れる。
国王に呼び出されることが多い恩恵だな。
王宮内のメイドに俺が国王に面会を求めていることを伝え、面会室に向かう。
15分後、国王がここに走ってきた。
急に王宮に来て面会を求めたのは俺の方なので、走ってこなくても、大人しく待っていたんだがな。
「今日は何用だ?」
国王は、蜂蜜入りのセンブリ茶を飲む。
「ウェッソン公爵家と戦争する可能性が出てきました!」
そして、吹き出した。
椅子やら床やらテーブルやらに、蜂蜜入りのセンブリ茶が飛び散った。
蜂蜜が入っているから、掃除が大変そうだな。
「ゴホッ、ゴホッ。な、え、なぜだ?」
動揺している国王に、病院での事を話した。
そして、リュカが自分の寮の中でしている事も。
「それは、本当か?」
すぐには信じられないだろう。
リュカは、貴族、王族に対しては外面がいいからな。
前世の人間の感覚でいけば、家ではとても素行がいい子供が学校でいじめをしていて、そのことを教師から伝えられた時に、その子供の両親がすぐには信じれないのと同じだな。
「はい、本当ですよ?その時の病院の状況を見たいですか?」
「………いや、いい。その状況をどうやって私に見せるのかは気になるところだが、男爵の事だ、ハッタリではないだろう?」
「ええ」
この世界の人間は、映像を「時空跳躍魔法」とやらと勘違いしているようだから、ほぼ全ての映像を証拠とすることができる。
ヴァントに映像編集をしてもらえるので、やろうと思えば偽の映像を証拠とする事もできる。
流石にやらないが。
「なるほど………。では、男爵が私に求めることは、公爵家との仲介かね?」
「違いますよ?」
「え?」
なんで、全面的に向こうが悪い、絶対に勝てる戦を仲介してもらう必要があるのさ。
「俺が陛下に求めることは、何もしないことです」
「どういうことだ?私が命令を出せば、大多数の貴族を君の味方につけることができるだろうに」
「いや、いいです。『お返し』が面倒なので」
助けてもらったのなら、お礼をしないといけないからな。
「よかろう。王家は要求通り、この件に関して何も干渉しない。だが、王家に対して要求したのだ。王家にメリットはあるのだろうな」
ジャック然り、社交パーティー然り、俺のことは使い回すくせに。
何もしないことに対するメリットを言えと?
ありはするのだが。
「王家の求心力が上がりますね」
「ほう?」
「力を見せたとは言え、ウッドペッカー家は王家の腰巾着と思われているはずなんですよ。そんな俺と戦争をする。つまり、俺に勝てば、間接的に王家に勝ったことになり、王家の権力を下げることが出来る。王家が不干渉なら、王家の支配を気に入らない貴族家はこぞってウェッソン家に味方するでしょう。それを俺が打ち破る。これは、言ってしまえば、粛清ですよ」
ラザフォード王国には、準男爵を含めて200近くの貴族家がある。
それはつまり、権力が分散してしまっているということだ。
その貴族家をいくつか潰せば、分散していた権力は王家自身の権力になる。
王国の体制を守るためには、粛清によって増えすぎた貴族家を減らす事も大切なのだ。
「なるほど……。よし、取引成立だな」
取引、か。
家同士の取引は初めてだから、良い経験になったな。
「あと、ナイトメア星系に船を近づけないようにして下さい。近づく船は、不差別に攻撃するようにしているので」
「わかった…………。今からナイトメア星系に帰るのか?」
「いいえ。普通に生活をしますよ」
「何故だ?戦の準備をしなければいけないのではないか?」
「いやー。それは………」
無人の艦隊に命令を出せるなんて、言えるわけないだろう?
国王は、ラムラダとラ・フィアンスの存在しか知らない。
しかも、俺はデウロにいるので、ナイトメア星系の戦力は元レンツの艦隊だけと思われているのだろう。
「俺の艦隊の練度がすごいので、あまり心配していないんですよ」
間違ったことは言っていない。
俺の艦隊というのが、魔導船かマート製のかの認識の違いである。
「………男爵。君は、何か隠しているね?」
「『何か』とは?」
「例えば、君は『ラムラダ』以外の強力な戦力があるとか」
あるなあ。
100隻以上。
「君は元貴族家の人間だったとか」
ヴィッテルスバッハ家三男なんだよなあ。
「いいえ?私はただの元平民ですよ?」
「………わかった。いつか、本当の事を教えてくれ」
「『いつか』ですね。よし、そろそろ帰らせてもらいます」
ここにいて、俺の過去を詮索されるくらいなら、帰ったほうがいいな。
「ああ、あと一つ」
逃げるように椅子から立とうとしている俺に、国王は声をかける。
「何すか?」
「ソフィアは君に感謝していた。ありがとう」
何だ。
そんなことか。
「どういたしまして」




